カモノハシプロジェクトの実行
役員会が、リストラを実行するとは。その責任者に、ぼくか選ばれてしまった。困った。しかし、辞令を受けた以上、実行するしかない。
プロジェクトのメンバーは、みんな20代だった。社長の支持らしい。若い方が、しがらみが少ないから、リストラの実行役としては、適当と考えたのだろう。
それから、1ヶ月、ばくは、カモノハシプロジェクトを実行した。ほとんどの業務は、AIで代行できた。すると全社員の八割か、リストラの対象となった。無能な佐藤もリストラの対象だった。
佐藤が、会社から去る日、ぼくにいった。
「相原、この借りは、必ず返すぞ」
それから1ヶ月が立った。
ぼくが、会社から自宅へ帰ると、ドアに貼り紙が
してあった。死ね、殺す、バカ、鬼畜とか、とにかく汚い言葉が、並んでいた。たぶん、会社をリストラされた人間が貼ったのだろう。ぼくは、乱暴に貼り紙を全部はがした。
自宅の中へ入ると、誰かが侵入した跡があった。ドアの鍵をどうにかして開けたらしい。ぼくは、なんだか恐くなってきた。カモノハシプロジェクトチームのリーダーなんて、引き受けなきゃよかった。
それから、似たようなことが何回もあって、ぼくは、なんだか鬱状態になってきた。そこで、精神病院を受診することにした。
待合室で、診察室の方を見ていると、なんだか、自分の人生が、終わってしまうのではないかという、妄想が生まれた。名前を呼ばれて、診察室に入ると、小柄な精神科医が、椅子にちょこんと座っていた。
精神科医が、どうしましたか、というので、ぼくは、最近のことを全て話した。すると、精神科医が、言った。
「逃げるために入院しませんか?」