コンクール
一晩かけて、カモノハシの草案を書いた。ディスクに草案を保存して、カバンに入れた。その日は、満足して、ベッドに入り、朝までぐっすり眠った。
ぼくは、2週間かけて、カモノハシ報告を完成した。そして、それを上司に渡した。
「締め切りに間に合ったな。」と上司。「役員会に、提出しておくから」
「ありがとうございます」とぼく。
「企画書が採用されたら、賞金が出るらしいから」
それから、1ヶ月後、企画書コンクールの発表があった。カモノハシ報告は、みごと採用された。ぼくは、役員会に呼ばれた。社長がうれしそうにいった。
「君の企画書を読ませてもらったよ。なかなか、ユニークな内容じゃないか。ぜひ、会社の経営に生かしていきたい」
「よろしくお願いします」とぼく。
専務がいった。
「企画書を検討して、実行するにあたって、事業の責任者には、君になってもらうから」
「え? いいんですか?」
「ああ」
出世のチャンスかもしれないと、ぼくは思った。案外、係長になれるかもしれない。25歳で係長になれるなら、御の字だ。
役員会を出てから、ぼくは、うれしくて、思わずスキップをした。スキップなんて、小学生以来、したことがなかった。
それから1ヶ月後、辞令が発表された。
カモノハシプロジェクトの責任者には、専務がいったとおりに、ぼくが選ばれた。プロジェクトのメンバーは、若手社員ばかり、10人が選ばれた。ぼくは、また、役員会に呼ばれて、カモノハシプロジェクトの、計画書を渡された。ぼくは、それを読んで驚愕した。なんと、そこには、リストラ計画が書いてあったのだ。社長がいった。
「君の企画書に書いてあったとおり、今後は、AIをフルに活用して、不必要な社員には、辞職してもらうことにした。我が社が絶滅しては困るからな」
ぼくは、正直なところ、困惑した。リストラ計画の責任者に自分がなるとは、まったく考えて。いなかったからだ。