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神様になった  作者: 小原河童
冒険者編
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ナルディ市


瑠璃の体感時間は凡そ0時を過ぎたころ、と夕日が当たった反対側の大きな窓から外を見ると、紫がかった月光に照らされた中庭が見えた。

夜空はというと、紫色の月、満月が浮かんでいた。

睡眠をとる必要のない瑠璃だが、ベッドに寝転ぶと気持ちが良く、一日の疲れがとれる様に感じるが、実際は疲れることがない体なのだ。

異世界へ来ての第一日目、疲れ知らずと言っても精神的に疲れを感じてしまう。

疲れた時は甘いものが食べたくなる。

深夜のスイーツは普段は厳禁なのだが、この体は太らないから時間を気にせず食べられる。

これは非常にうれしい事と、瑠璃は思う。

そして、煙の発生具合も確認する必要があるから、と取り出したのは瑠璃の好きなモンブランだ。

そして、紅茶セットも用意した。

部屋の明かりを消し、紫色の月明かりでケーキとお茶を楽しめるのだが、今は実験が先で楽しみは無しで勿体なく感じるのである。

普段は美味しく頂けるモンブランと紅茶の組み合わせなのだが、何分頭から出る煙に意識が行き、美味しく食べるというよりも、実験と言った感じになった。

結果は、頭から煙が出た。

程度はギルドで出た、より若干少ないくらいで、明日の事を考えると少し憂鬱になった。


朝がきた。

元居た世界と季節はあまり変わらないようで、ルーノンは初夏の初めのころの気候と感じられる。

宿の名前のとおり、朝一番の鐘が鳴った今は若葉の朝露のごとく、さわやかな朝だ。

瑠璃は依然として頭から出る煙の問題があるので、人の少ない特に貴族が居ないタイミングで、受付で食事を伝えると右横にあるレストランに案内され、中庭が見える席の希望を伝えた。

嬉しいことに中はリルの貸し切り状態だった。

受付はレスターから若い20代前半と思える女性に変わっていた。

名前は、リーズと刺繍が執事服を模した制服に施してあった。

銀髪が外にハネた耳掛けボブと言ったところか、エルフの様な尖った耳が少しかわいい娘に案内された。

さすが、若葉の朝露亭の受付嬢と言ったところか。

胸のボリュームは少し頼りないが、パンツ姿の尻から続く脚線美はなかなかのものだ。

きっと、男が放っておかないだろう事は、容易に想像できる。

このリーズさんは瑠璃の格好に興味は無いようで、自然に相手をしてくれるのが、瑠璃にはうれしい。

深めの大皿に入ったシチューがメインで、中は季節の野菜が数種類とゴロゴロと大きめにカットされた肉の、フォンドボーの様な色と薄塩味でスパイスが程よく効いたものだ。

欲を言うと、お代わりがしたいほど旨いだが、処理容量をオーバーすると頭から出る煙の問題があり、ナンを連想する厚い堅焼楕円形のパンと葉物の野菜サラダとお茶が出た。

中庭にある3本のアカシアの様な木は分かるが、台座だけ見える物は何の彫像かを確かめたく中庭に出ると、思ったとおりのリル神が建っていた。

彫像を確認すると瑠璃は衛兵本部へと向かった。

宿を出るとき被ったフードが直ぐにずり落ちて、歩いていると視界を遮り何度か屋台にぶつかったが、屋台の店主が文句を言うより、ぶつかってきた瑠璃の身を案じてくれた。

小学5年生当時の瑠璃はというと、後ろ髪が背の中ほどまで伸びたほかはオカッパの様なヘアスタイルの瑠璃は、まるでエジプトのピラミッド内部の壁画に描かれている女性の様だったと、今にして思うのだ。

ヘアスタイルの影響か、それともフード内のディスプレイの影響か、フードが大きすぎて視界が極端に悪くなる。

何か良い物はないかとアイテムボックスを探すと、魔王のカチューシャというのがあるのを思い出し、装備してみた。

思ったとおり、あの巻き角はフードを程よく持ち上げてくれて、視界の確保にちょうど良かった。

ただ心配なのは、鏡越しや木の俣越しに、極たまにパールホワイトのローブが透けて、スクール水着を着た魔王に見える事だ。

ついでに、カチューシャの横にある犬も呼び出してみた。

出てきた犬は、瑠璃がイメージする犬とは大きく違い、象を少し大きくした大きさで真っ黒の長い毛並みが見事な黒い炎にも感じられるオーラを放ち、瞳が赤く輝く不気味な犬が出てきた。

瑠璃が驚くと犬は直ぐに人型に変わり「1週間に6日いける瑠璃様お呼びでしょうか」と言った。

そいつは、神界で瑠璃をからかったあの青年だった。

青年が言葉を言い終わると同時くらいに、瑠璃はアイテムボックスに犬を戻した。

「出さなきゃよかった」とは瑠璃の独り言だが呼び出して驚くよりも前もって知るのは良いことと、良い方へ考えることにした。

このナルディ市という町の人は優しいと感じるし、フード裏のモニターも緑色の点が多い事に、瑠璃は、自然と今日はいい日になると予感した。

それにしても、ナルディ市の街中は緑が非常に多い町である。

馬車道も広く、植栽によって馬車道と歩道は区切られているので、歩行者に優しい街づくりがされている。

その分、木の二俣に気を付けなければならない。

本部へ行く途中で、瑠璃を追い越した馬車の紋章が気になったが、昨日衛兵服の紋章と同じ、灰色地に細い赤色の二重丸の中に、黒いフクロウを中心に左に盾、右に剣の図は、ナルディア侯爵家の紋章と認識した。

瑠璃が気にした視線に、一瞬だったが邪悪な意思を感じたからだ。

柔らかな朝日を浴び、しっとりと潤った感がする大気の中、瑠璃は街の様子をみながらリル神が建っている中央広場だけは足早に通り抜ける。

リル神と瑠璃のギャプが大きすぎて、自然に瑠璃の足が速くなるのである。

ダウンタウンの冒険者ギルドが近くなると、朝から酒を売る屋台も数多く店を出し、冒険者の多くが掲示板の仕事を求めて、ギルドへ吸い込まれていく。

評価よろしくお願いします。

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