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神様になった  作者: 小原河童
冒険者編
8/494

若葉の朝露亭と神の間(ま)

本文に出てくる単位です。

リュウ=立米と理解ください。

明日の予定を考えている時に、リンツはルリが裸足なのを思い出した。

まっ、あの不思議な少女はその辺は上手くやるだろうと思う反面、自分の娘と年が近いので心配になった。

瑠璃が目指す宿、若葉の朝露亭は中央広場、あのリル神が建っている場所から、さらに奥まった高級商店街が立ち並ぶ一角にあった。

時刻は夕方に近く、特にギルド本部があるダウンタウン周辺は、冒険者や仕事を終えた町人、それを相手に酒と食べ物提供する屋台が並び、大勢の行き交う人々の瑠璃を見る視線が痛いこと痛いこと。


若葉の朝露亭は高位貴族が定宿にする豪華な宿、と言うのが初めて宿に入った瑠璃の感想であった。

受付の紳士の有能さに気後れする瑠璃は、かつての自身の受付嬢として働いていた経験から知っていた。

ここでもロビー近くのラウンジで寛ぐ貴族たちが、瑠璃を見る視線が痛い。

「部屋は空いているでしょうか」と、瑠璃が受付の紳士に聞くと、紳士は瑠璃を品定めするように、上から下まで見てうんざりしたように言う。

「当若葉の朝露亭は、一見のお客様はお断りさせていただいております」と。

その言葉の意味することは、少々の小金持ちはお断り、それに、お前のような怪しい風体の者を泊めると、宿の格が落ちるから、と言われているように感じられるのだ。

「リンツ衛兵隊長の紹介で来ました、これが紹介状です」と受付の紳士に渡した。

「これでも泊まることはできませんか」

「リンツ隊長の紹介って、それを早く言ってくださいませ、お客様。

えぇ、えぇ、それでしたら何の問題もありませんし、むしろ私共は大歓迎ですから」

受付の紳士の態度が、不審人物から宿泊客への対応に変わり、いい笑顔でニコニコとし、瑠璃に聞いてくるのだ。

「それでお客様、当若葉の朝露亭の滞在期間は如何ほどでしょうか」

「そうですね、たちまちは1カ月でお願いできますか」

「1か月ですか、それはありがとうございます」

「1か月となると、今は部屋の種類が少なく、ご不便をおかけしますが」と、3つのタイプから選ぶよう、部屋の間取りを瑠璃に見せた。

「私一人だから広い部屋は要らないから、こちらの1部屋だけのタイプでお願いします」

「あの、お客様、こちらの部屋ですが、大変言いにくいのですが、日当たりがあまり良くないのです」

「気にしませんから、ベッドで眠れる事と美味しい食事が出来れば私はそれだけで満足ですよ」と、笑顔で安心させるように言うと、何故か受付の紳士に感謝された。

「では、恐れ入れますが宿泊料は前払いですので、1カ月で350000イェンになります。」

「朝の食事と簡単な飲み物は宿代に含まれますが、それ以外の時間の飲食は、その都度請求させて頂きます」

朝食の時間は朝一の鐘から二つ目の鐘まで、だそうだ。

「シャワー用のお湯と水は基本無料ですが、それ以上の使用については有料でして、大体シャワーの場合は無料で間に合うと思います」と説明してくれた。

無料の使用量が終わると一旦お湯や水が止まるらしい。

瑠璃は1カ月の宿泊料350000イェンを払うと、案内係のごつい体型の男を呼んだ。

そして、「数ある宿の中で当、若葉の朝露亭を選んでいただき誠にありがとうございます。

このレスター、お客様に誠心誠意尽くすことをお誓い申し上げます」と、受付の紳士と案内係が瑠璃に一礼する。

案内された日当たりが良くないという二階端の角部屋だが、白色で統一されたなかに、机と椅子とソファーの木目が生かされたデザインでシンプルな感じが瑠璃は趣味が良と感じ、この部屋を選んだことは運が良いと思った。

この棒のような鍵は問題と、瑠璃本人以外には部屋の出入りが出来ないよう鍵穴とも改造しておいた。

適度に夕日が当たるこの部屋に、異世界に来た瑠璃は実感していた、ところを神様たちによって神界に呼び戻された。

何事かと思う瑠璃なのだ。


実は急に瑠璃を神界に呼んだため、間に合わなかった装備がようやく完成したのだとか。

装備はパールホワイトのフード付きローブで、ローブは膝上25センチくらいの長に、フード部分からダブルのファスナーで開閉が調節できるような、小学生のころ使っていた雨合羽を連想するデザインが古さを感じさせる物だ。

それでも、瑠璃は裸同然と言われるスクール水着を隠すことができ、これだけで大満足だ。

このローブは各種アンテナ効果があり、フードの裏側がディスプレイとなり各種のナビゲーションの役割をし、縮尺自由のルーノンの世界地図の表示に加え、人心の表示が出来る優れものだと、馴染みの神様が自慢げに説明を続けている。

人の悪意は赤色、好奇心は黄色、無関心白色、好意は緑色で識別可能なのだそうだ。

組み合わせは、TPOに応じて職業や身分の表示といった具合に、自由に替える事が出来ると。

このパールホワイトのローブは、鏡や木の枝や木の俣越しに見られると、極たまに透けてスクール水着だけの瑠璃になる、何とも微妙なローブなのだ。

防水・防汚と破壊不能は言うまでもないし、瑠璃以外の者には装着不可だそうだ。


前に体を触りまくったセクハラの(名の知れた)神様が、瑠璃に横になれと言ってストレッチャーの様な物を指さした。

またセクハラがはじまると、緊張のなか仰向けになると神様が触ってきたのは、今回は頭だった。

それで安心していると頭が終わり水着の隙間から直に、真っ平らな両の胸をたっぷりと時間を掛けて揉まれた。

変に喘ぎ声出るのは恥ずかしいので、瑠璃は意識を分散し神のテクニックというやつから頑張って、頑張って耐えた。

時間が経ち我慢の限界が近くなった時に、神様のお触りという名の改造が終わり説明のはじまった。

神のテクニックから解放されたと思うと、なんかホッとし嬉しそうな表情になり瑠璃はため息を大きく一つ吐いた。

名の知れた神様の指示に従いアイテムボックスと念じると、所持金のほか武器に装備、消費、倉庫といった一覧が頭の中に浮かんできた。

装備欄を開いてみると、魔王のカチューシャと犬の他は大量の御札が収まっていた。

御札は自動で補充されると、名の知れた神様が話す。

御札は瑠璃へ対する民からの投書の様なもので、神として願いを叶えてやれ、という事の様だ。

武器の欄はというと、勇者専用という虹色をしたクレイモアタイプの大剣、それが大量にあった。

勇者を探し貸し出すのもいいし、自分で使うも良しの優れ物、と言った。

これも、自動で補給される。

消費の欄は各種ポーションに薬草と他気持ちが悪くなる物が、製薬の素材として、これも多種大量にあった。

これも自動で補充される。

他は、元居た世界、特に日本で食べることが出来る各種スイーツ、これも多種大量に保管してあった。

スイーツに関しては新作スイーツが自動で供給できるし、補充も自動だと、名の知れた神様が気を利かせたサービスだそうで、先ほどのお触りお礼として受け取った。

最後の倉庫は無限の空間と時間停止、き物以外は何でも収納可能なのだそうだ。

なまものに対しては腐敗の心配は無用、料理は出来立ての場合はそのままの状態で永久保存が出来るとか。

アイテムボックスの容量は、倉庫に限らずどれも無限と知らされた。

最後にルーノンではモンスター以外は、成人年齢に達すると職業とスキルが一つ与えられる。

それとアイテムボックスが一つ与えられる。

その容量は小さく凡そ200リュウ、容量は王族だろうが貴族、勇者も奴隷も皆同じという。

付け加えるなら、倉庫機能はないそうだ。

なので、食糧の保管機能は大幅に制限を受けるし、仕切りが無い。

具体的に言うと、熱い物は時間とともに冷めるし、冷たい物は時間とともに温くなるし、外気温と同じで鮮度に関しては日持ちもしないと。

仕切りが無いので、混ざると非常に厄介な時も出てくる。

「どうじゃ、これで説明は終わったと思うが瑠璃の方から何か聞きたいことはないか」

と、聞かれるので、頭から出る煙について聞いてみた。

「おぉ、そうかそうか、ついに出たか」

「ふむ、あの煙の正体は、ふむそうだな」

「瑠璃の元居た世界で例えるなら、車の新車が最適じゃろうて」

と、言う神様の言葉に、車ですかと瑠璃は自分の新車当時を思い出した。

「車に乗り終わりエンジンを切ると、車体の下からチリチリと音がするし匂いがしたと思う」

それから、パソコンの処理が多くなるとCPUを冷やすファンが回る、あれと同じことだと言われた。

要するに、新車時マフラー周りの塗装と防錆用のオイルが焼ける匂いが煙、そして、煙が勢いよく出るのがCPU保護にファンが回るのだと。

煙の抑制はローブのフードがある程度効果があるそうだが、どこまで信用できるか、煙の事を思うと先が不安だ。

「ちなみに神様、メモリーを多く消費する行為は何でしょう」

瑠璃の質問に言いにくそうに答える神様が言うには、食べ物の異空間処理で使う、分解と再結合用のリソースが一番大きいと。

瑠璃は神様が初めに言った食べ過ぎに注意を思い出し、チョットだけがっかりした。

「じゃ、そう言う事で」

この言葉で、瑠璃は自分の部屋で意識を取り戻した。


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