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神様になった  作者: 小原河童
冒険者編
62/502

衛兵2班の日常業務

夏になると夜明けが速くなるのは日本と同じで、瑠璃は神になる前から夜が明ける時のわずかな時間が一番好きで、それが高じて毎朝早起きだった。

少しするとルイネが朝のあいさつに来た。

「ルリ様、昨夜の事は本当に申し訳ありません。

ルリ様を疑うなど私はどうかしていたのです」とルイネが言う。

「私はルイネの本音が聞けて本当に嬉しかったですよ」と言い瑠璃はルイネを抱きしめた。

ルイネを抱きしめていると、瑠璃にはルイネの不安が伝わってくるのがよく分かる。

「ルイネさん、エレンがリンツ隊長の娘だからとしても私は一切遠慮はしませんから。

悪い時は叱りますよ。

場合によっては神の使徒から追放することもありますから、エレンが特別と言うわけではないのですよ。

と抱きしめたままルイネに話すと、幾らかルイネも安心した様子だ。

ルイネさんには今日で最後になりますが、ゴズと一緒にウエストランドで御札の配布をお願いしますね。

その後は、ゴズの補佐をしてください。

いい時間になったので朝食に行きましょう。

今朝もリーズの笑顔が見られ今日一日良い事がありそうに瑠璃は感じる。

ピンデールが何時もの席に案内してくれ、ルイネが椅子を引くと今朝も多くない食事客の間から歓声が上がる。

それをルイネが恥ずかしがりながら、笑顔を向けると食事客が満足する、何時ものルイネのショーが終わる。

このところ定番になっている、角切り肉と根菜がたっぷり入ったシチューとパスタ似の麺が入った野菜サラダとコンソメスープに固焼パンを瑠璃が頼むとルイネも同じものが良いと言うので、2人分頼み楽しく朝食を食べた。

自室に戻ると既にゴズが転移して、部屋で待機していた。

「今日で指名依頼が終わりますから、御札の配布も今日までとします。

今日もルイネさんはゴズと共に隠れ家でゴズの補佐をお願いします。

ゴズに負担を掛けますが、無理に執事を探す事はしません」と、瑠璃が言う。

「これしきの事、私は負担だとか思ったことはありません。

瑠璃様、前に話したように、もっと私を頼ってください」とゴズが言うのだ。

「では、いい人材が見つかるまでゴズ、執事をよろしく頼みます」。

それでは行きましょう。

何時もの様にダウンタウンで別れ、瑠璃は衛兵本部へ行く。

リンツ隊長の執務室の入ると、珍しくリンツ隊長が一人でいた。

「ルリよ、指名依頼はきょうが最終日になるが、今日一日よろしく頼むぞ」と笑顔で言ってくるのだ。

その後、エステとエリソンの班長が執務室に入っていた。

「えぇ、ルリちゃんは今日が最後なのね。

隊長、ギルドに掛け合ってルリちゃんをスカウトしましょうよ」とエステが言い出す。

エリソンがそれを受けて、ウッディーも同じことを言っていたが、隊長ルリの事を真剣にギルドと交渉してみては如何でしょう」と言うのだ。

「まぁ、一応考えてみよう」と、リンツが言うのだが、その言葉に無理と言うのが透けて見える。

朝礼が終わり瑠璃は初めて、普通の2班の仕事をする事になった。

仕事とは、町の巡回、いわゆる警邏と言うやつで、ラーダ班長をはじめポーラーにネリナとトーマスで本部を出た。

「特に行く当てが決まっていないのなら、私は鬼酒場に行きたいのですが」と瑠璃が言うのを不思議に思うが、皆瑠璃に同行する。

瑠璃はコロンの事が心配になり、ロンに聞いてみたいと思った。

一行がダウンタウンを過ぎると、待っていたように事件が起きた。

その事件はひったくりで、犯人の少年が商会主の持つ袋をすれ違いざまにひったくって駆け出した。

「ひったくりだ、誰か捕まえてくれ!!」の声に素早く反応したのはポーラーだった。

「私が捕まえるから、任せて」と言うと素早いダッシュで、あっと言う間に少年を捕まえて戻ってくる。

そして「私だったやる時はやる女よ」とポーラーが自画自賛する。

ネリナ曰く、衛兵のなかでも走りでポーラーに勝てる者はいない、との事だ。

「と、言う事で、ポーラーは18分署で少年の調書作成な」とラーダが言うと、ポーラーはしょんぼりした。

「18分署まで同行し、そこで別れ、俺たちが鬼酒場から18分署に戻るまでの時間を有効に使いポーラーは調書を仕上げとけよ」とラーダの指示だ。

次に鬼酒場界隈の如何わしい雰囲気が漂いはじめた頃、瑠璃が重要手配人物を見つけた。

「あそこのおかしな形の帽子をかぶった冒険者風の男、あの人は手配中の強盗犯じゃないですか」に反応したのは、ネリナだ。

衛兵の接近を知り男が背を向けたところ、ネリナは不意に男の帽子を取り、手配中の犯人と確認すると不思議な体術を使い、男を投げ飛ばすと同時に組み伏せ捕まえた。

流れるような一連のネリナの動作に、瑠璃もだがトーマスはいつ見ても鮮やかだと感心した。

「さすがネリナだな」と言うのはトーマスだ。

「トーマスさんその手配犯を抑えていてください。

直ぐそこの21分署から応援を呼んできますから」と言い駆けだしたネリナは暫くすると、21分署から応援を連れて戻って来た。

ラーダが「じゃ、ネリナは手配犯をよろしく頼むぞ。

鬼酒場から帰るまでに片付けとけよ」と言い瑠璃達3人で鬼酒場へ行くことになった。

時間的にまだ開店前の準備中といった状態の鬼酒場に来た瑠璃達は、用心棒がたむろする部屋に入ると、一昨日の男がロンを呼びに行くからと言い、他の男が応接室に案内してくれた。

ほぼ待つことなくロンが瑠璃の前にやって来た。

「誰かと思うとルリ様か」と瑠璃に言い、ロンが怒り始める。

「おい、貴様何度言ったら分かる。

こちらの御方は重要なお客様だと、言っているだろうが。

ここじゃなくて、もう一つの方へ案内するんだ」とロンが用心棒に怒鳴るのだ。

「ロンさん、今日来たのは、先日あなた宛てに雇ってほしい人を紹介しましたの。

その人がちゃんとロンさんの下で働いているか、それが知りたくて来たのですよ」と、瑠璃が問うた。

「あのルリ様、あの男の素性は知りませんが、大変有能な貴重な働き手です。

ですが、うちじゃそれに合うだけの給金が出せないのですが」とロンが申し訳なさそうに話した。

「何も心配は要りませんよ、あなたが払えるだけで文句は言わないと思いますからね。

しかし、安い給金でこき使ってはいけません。

継続して払える最高金額の給金を払ってやりなさい。

それと、領令に違反するような仕事は絶対にさせないでくださいよ。

それは、ロンさんあなたも同様ですけど」

「おぉ、それは十分わかってるって。

俺はまともな商売をし、今は法に触れる事はしちゃいねぇ」とロンが焦って言う。

「だと良いのですが、変な噂を聞くと分かってますよね」と瑠璃が言うと、ロンは冷や汗を浮かべるのだ。

「おいルリ、お前は本当に凄いな」とラーダが感心し、トーマスはロンの噂を良く知っているので、あのロンがと思うと、今のロンが別人に見えるのだ。

「じゃ、また来ますから」と言い瑠璃達は鬼酒場を出て、21分署へ戻った。

途中でまた手配書に載っている男女の詐欺師を瑠璃が見つけた。

今度は、ラーダとトーマスが捕まえ21分署へ連行し、ネリナと21分署勤務の女性に調書を取らせる。

「一体今日はどうなっているんだ。

さすがルリは違う、本当に凄いやつだよ」と、トーマスが感心するのだ。

「ウッドマンの奴も凄かったが、ルリはその遥か上だろう」と、何故か自慢げにラーダ班長が言う。

「ラーダ班長、ルリちゃん自慢はポーラーの仕事ですから」と、ネリナが調書の作成中に話に加わった。

「そう言えばポーラーの奴は、まじめにやっているのか、心配になってきたな。

大丈夫でしょう、今日の18分署の担当はポーラーよりも頭が切れる奴がいますから、と話すトーマスに、ラーダがポーラーだから、誰でもそれ以上だよ、と言う。

「まぁ、酷い。

ポーラーさんが怒りますよ」と瑠璃が言うのだが、それには誰からも相手にされなかった。

ポーラーはそれ程ひどいと、いう事らしいのは誘拐事件の調書の件で瑠璃もよく知っているのだが。

一仕事終えて4人で18分署へ戻ってみると、ポーラーはまだ少年を相手に調書の作成中だった。

見かねたラーダ班長が、「おい、誰か代わってやれ。

俺たちはまだ警邏の途中だからな」と言う。

「仕方ないですね、ポーラーさん何か美味しい物食べさせてくださいね」とポーラーと同年代と感じられるソバカスが魅力的な女がポーラーに変わって調書に取り掛かった。

「じゃ、ニッキー菓子店のラズベリーケーキでお願いしますよ」とポーラーに注文を付けたと思うと調書が仕上がっていた。

「昼までにルリちゃんが重要手配犯の2組を見つけてくれて、今日はこれで終わりにしても良いくらいだね」とネリナが言うのだが、「それ本当なの、やっぱりルリちゃんは凄いでしょう」とポーラーはルリの凄さを広める仕事に乗り出す。

ポーラーの変わり身の早さに18分署の衛兵達は呆れるが、それが何となく楽しそうに瑠璃は感じる。

昼になるので18分署の交代要員を残し、18分署の衛兵がお勧めの食堂へ全員で行く事になった。

瑠璃は何が食べられるのか、楽しみなのだ。

と、言うのは、もう以前ウッドマン捜査中と違い、少々量が多くても頭から煙が出る事がなくなったからだ。

衛兵の新しい仲間と楽しく食事が出来る、これは瑠璃が理想とする物の一つなのだから。

18分署が勧めるのが欅食堂と言う、何処にでもありそうな店名の食堂なのだが、昼時にまだ時間が少しあるが既に客で混んでいた。

18分署が常連で得意客なのだろうか、店側が個室を用意してくれていた。

おじさんが注文を取りに来たが、皆日替わりを頼むので瑠璃も日替わりの定食にするが、出てきた量が多すぎた。

「これが1人前ですか」と瑠璃が聞くと、おじさんはもう少しだけ量を増やすことも出来るよ、といい笑顔で言ってくれる。

「いえ、少し量が多いので残すかもしれませんが、気を悪くるしないでくださいね」と瑠璃が言う。

一人の18分署の衛兵が、「ここのは美味しいから大丈夫さ。

気が付くと完食しているっと事がよくあるぞ」と言ってくれるのだが、瑠璃の場合は、頭から出るかもしれない煙の方が心配になるのだ。

はじめに食べたシチューは確かに美味しい。

若葉の朝露亭のレストランと比べても、甲乙付けがたいくらいにだ。

茹でた野菜のサラダは、瑠璃は久しぶりの感覚で日本の生活が懐かしく思い出されるほど、久しぶりに味合うものだった。

ここでも、黄色いレンコンが出てきたが、茹でるとサラダに使えると瑠璃は知った。

欅食堂は固焼パンも美味しいと言う瑠璃に、ポーラーが「これ自家製なのよ

毎朝店のオーナーが臼で粉ひきからはじめて、一人で作っているのよ」と教えてくれた。

そして瑠璃は思った。

気が付くと完食している事に驚くと同時に、頭の煙を心配するが、心配の必要はなかった、これが瑠璃は一番うれしい。

昼からは特に重要な手配犯や事件に出くわす事もなく、イーストランド内の商業区で、喧嘩の仲裁を2件行いぶらぶら歩いて一日が終わった。

喧嘩の仲裁と言っても、ラーダ班長とトーマスが凄んで、喧嘩が自然と終わる。

その後時間まで市中の警邏をし、リンツ隊長の執務室の戻る途中で、アンジーに会ったので、来月また来るのでそれまでお別れだと言うと、アンジーに抱き着かれた。

リンツ隊長の執務室で冒険者ギルドへの提出書類をもらい、エレンの事をよろしく頼むとリンツ隊長が言ってきた。

それと、明日の自由都市連合に行く時は、エレンも連れて行って欲しいともだ。

瑠璃はエレンを連れて行くことを了解し、リンツ隊長に指名依頼の完了の礼を言いギルドに報告に行く。

今回もまた冒険者ギルドでセリーナの対応に、他の職員の対応が面白いのだ。

転移し隠れ家の庭に着くと、ルイネが勢いよく飛び出してくるのだが、恐らくはゴズが知らせたのだろうと瑠璃は推察し、ゴズとルイネから御札の配布の話を聞くと、御札の人気が凄く直ぐに無くなるという事だった。

それで、来月も御札を配布するのなら量を増やしてほしい、とゴズが言ってきた。

瑠璃は明日の朝、自由都市連合の様子を見に行くから、ゴズは忙しいだろうが同行して欲しいと言う。

そして、瑠璃はルイネを連れ貴族街の何時もの所へ転移し、若葉の朝露亭に戻ってきた。

瑠璃は部屋で神威を使い自分とルイネの埃を落とし、夕食にとレストランへ行く。

レストランはルイネ目当ての客も多く、程よい混み具合の中でルイネのショーが始まった。

今夜は冒険者ギルドの依頼が終わったので少し豪華に、白身魚のグリルとステーキの2種類がメインのコース料理を注文した。

ルイネは何時もの様によく食べてくれるので、それだけで瑠璃は嬉しい。

「ルイネさん、今日の御札の配布は順調でしたか」と聞いてみると、ゴズさん同様に、私たちの周りに多くの少年少女とおばさんにおじさんが集まり、御札は直ぐに無くなりました。

その後、ゴズさんと二人で貴族街の隠れ家まで歩いて帰ってきたのですが、自由都市連合が所有する邸が隠れ家から近かったので驚いたと話してくれた。

それで、隠れ家の使用人に自由都市連合の邸について聞いてみたら、魔王様からあの一帯は常識が通じないおかしな連中が居るから、少々遠回りをしてもいいから絶対に近づくなと言われていた、という事です。

瑠璃が笑顔でルイネの話を聞いているので、ルイネがどう反応していいのか分からず、困ってしまい下を向く。

「あのぅ、ルリ様」と言うルイネに瑠璃は、今日もルイネの新しい一面が見られ私は嬉しいのよ、と言うのだが、ルイネはまた困るのだ。

ルイネを下がらせ瑠璃は神界の神様たちがいる神の間に転移した。

「おや、瑠璃どうした。

みんなぁ、瑠璃が来たぞ」と言うなじみの神様の言葉に、大勢の神様がやって来るのだ。

瑠璃はなじみの神様にテーブルと椅子8客作って欲しいと言うと、何じゃそんな事か。

ついでに、日除けも付けてやろう、言い木地が濃い茶色の立派なテーブルと椅子8客に日除けの大型のパラソルが出てきたのだ。

「これらは、破壊不可と防水に防汚効果が付いているぞ。

日除けの方は気分的なものだが、良い出来に仕上がった」と、馴染みの神様は御満悦なのだ。

しかし瑠璃よ、これでは雨風は防げんから、瑠璃自身で結界を張るのじゃゾ」と馴染みの神様が教えてくれる辺りが、爺と孫の関係とルリは思った。

神様に礼を言い瑠璃は自室の転移し、自由都市国家連合の水攻めについていろいろ考えていた。

そして夜が明けた。

評価よろしくお願いします。

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