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神様になった  作者: 小原河童
冒険者編
5/422

白カード

長かったプロローグが終わり、まだ物語の触りの部分で投稿を毎日続けています。


灰色をした立派な城壁を瑠璃が見ていると、周りの住民から騒ぎが起こった。

ことの発端は、「ねぇ、みてみてお母さん、あのおねぇちゃんはすごい格好をしているよ、まるで裸じゃん」と小さい男の子が瑠璃を指さしている。

「ダメでしょう、かわいそうな人なんだから、見てはいけません」と母親は、子供を叱りつけている。

「なんじゃ、あの変なのに頼られても困るしのぉ」

母親のかわいそうな人を見る反応した、列に並んでいる商人をはじめほとんどが、瑠璃のスクール水着姿を見て何やらひそひそ話している声が聞こえて来た。

これが次第に大きな騒ぎになり、槍を手にした鎧姿の衛兵5人が何事かと駆けつけてきた。

「おいお前、なんて格好をしているんだ。

まるで裸と同じではないか。」

と、衛兵が瑠璃を衛兵の詰め所に連行する。

この時、瑠璃はあと2~3時間は列に並び衆目に晒されることを思うと、面倒でも詰所へ連行される方が遥かにましと思った。

間近で見る城壁は高さは30階建てのビルを超えていると思え、城壁に使われている石も一つ一つが大きく、それだけ警固な城壁にこの都市の重要性が感じられる。

詰所のすぐ後ろに建つ本部へ瑠璃は連行された。

その部屋は四方が石の壁で遮られ、申し訳程度に開いた明り取りの窓には、鉄格子がはめ込んであり、取り調べというよりも拷問部屋と言った方がふさわしい様に感じられる殺風景な室内だ。

狭い室内に似合わない大きな机と、椅子が4客あるだけだ。

「さて、お前さんに聞きたいのだが、なぜリル神の様な格好をしているのだ、不敬と思わないのか」とひげ面の角ばった顔の衛兵がドスの効いた声で聞いた。

その目は笑っていたので、どうやら本気で言っているようではない。

けど怖い、と瑠璃に感じさせるには十分だった。

リル神って、そうか、ここルーノンで私は瑠璃ではなくリルになっているのか。

非常に安直な、ただルリをひっくり返しただけのリルという名、神様適当過ぎると思うのだった。

取り調べはひげ面の衛兵と若い十代後半と思える衛兵が担当する。

ひげ面の衛兵に対し「ラーダ班長、そんなに脅すと怖くて何も答えられなくなりますよ。

で、その恰好はまぁ良いとして、何用でこのナルディア領の都ナルディ市に来られたのかな」

事務的に聞いてきたのが、ドールトと名乗る若者だ。

「ラーダ班長、ウッドマンがお茶を入れてきました」と、告げ3人目の衛兵が入ってきた。

「おっ、そうか、俺はラーダだ。

そして、こいつ等が部下のウッドマンにドールトだ。

で、お前さんの名前をまず聞かなくてはな。

名前だ、なんと言うんだ」

と、ラーダに問われ瑠璃は困った。

「そうか、リルが神の名なのだから、本当の名前でいいかも」と思い「私の名は瑠璃です」と小さい声で言った。

「ルリさんね。

で、そのリル神のような恰好って紛らわしい」と、3人は大笑いをし、かわいそうな人を見るような目で、机越しに座る瑠璃を観るのだった。

「ルリさんは、この町へ入るには通行税を払わなければ入れないのだが、金はあるのか」と、ラーダが聞いてきた。

お金は確かお金持ちになれるという神様が、ルーノンへ来る時に幾らか持たせてくれたはず。

が、実際は財布や金を入れた袋の類をルリは持っておらず、手ぶらの状態でルーノンへ来たのだ。

お金。。。とルリが念じると、所持金額がなんとなく頭に浮かんできた。

その額がとんでもない額で、瑠璃が住んでいた世界、日本の国家予算に匹敵する100兆イェンと。

「冒険者は基本無料、一般市民は5イェンで、商人は途中の街や村に寄らず直接ナルディ市へ来た場合は50イェンだ。

途中の街へ寄った場合は200イェンがいるんだが、さてと、お前さんはどっちだ」とラーダが聞いてきた。

「何処かの町や村を経由した場合は、あなたの白カードに記録が残るから誤魔化すことはできない。

冒険者の場合も同様に冒険者ランクを証明するカードの持っているはずだから」とドールトが瑠璃に促す。

神様たちは瑠璃に何の心配もせず、この世界ルーノンをどうこうするよりは、ルーノンで楽しく過ごしてくれれば、それだけで良い、と言ってくれたが、最初から躓いた感じだ。

それも、これもこのスクール水着が原因と神様が善意かいたずら心かで、用意してくれたスクール水着に不満を感じるのである。

この世界にも住民票や運転免許といった身分を示すものがあるようだが、瑠璃は何も持っていない。

非常に困った現状で瑠璃が心配したのが、元の世界に置いてきた馬のエンブレムが付く車の事だ。

馬のエンブレムと言っても、瑠璃が所有する車の馬は野生の馬の方で、勇ましく前足を上げている方のではない。

そして、この状況はあの釣りコンテンツで観た、ホームページのアメリカ入国時の記述によく似た状況と瑠璃は感じる。

その困った状態でキョロキョロ視線を泳がせていると、3階のとある一室で樽の様な腹をした大男が、困り顔で酒の入った陶製のコップを呷ると頭を抱えているのが見えた。

何を悩んでいるのかと思い、頭の中をのぞくと、瑠璃の頭の中に領主から幼女切り裂き事件の解決期限を切って迫られているのが分かった。

その期限にまであと6日、解決できない場合は衛兵隊長をクビになるらしい、ではなく決定事項だった。

犯人に結び付く有力な手がかりは、現時点で一切なく捜査は手詰りな状況だとか。

なので、残り6日では犯人逮捕は無理と瑠璃は判断した。

これは取引に使えると判断した瑠璃は、試しにと神威を発動し衛兵隊長に初めてのお告げを告げてみた。


誰もが成れる地位ではない領都ナルディ市衛兵隊長職、6日後には確実にクビが言い渡される隊長は、スラムの奴らに冤罪をとも思うくらいに相当に焦っていた。

そこに酒の酔いが回ったのか、頭の中に神のお告げとやら怪しいのが聞こえてきた。

「リンツよ、犯人探しに焦っているとはいえ、無実の者を冤罪に陥れてはいけませんよ。

幼女バラバラ惨殺事件の犯人を教える代わりに、今から取調室に行き、そこにいる娘の身分を保証してやれ。

どうじゃ、さすればリンツよ、そなたも職を追われることはあるまい」

「ただ、時間を何時まで掛けても良いわけではないので、行動は早めに頼むぞ」

リンツ隊長は子沢山なうえ、愛する妻と子供を思うと、万策尽きた今は縋れるものなら何でもと思う、一方で、このままでは6日後にクビは確実、胡散臭いが取引に賭けたのだ。

「分った、本当に犯人を教えてくれるのだろうな」

「犯人はそこにいる娘が教える故、なるべく急いでほしい」

瑠璃のはじめて使う神威、途中から神様の威厳が言葉から感じられなくなったが、まぁそれは良い事にした。

と、ここまでの所要時間はわずか1秒位かそこら、さすが私のスーパーコンピューターと思ったが、瑠璃は周りを見て驚いた。

なんと瑠璃の頭から煙がモクモクと出ていたからだ。

フライパンに油をひいて炒め物をする程度ではなく、バ〇〇ンを焚くといった感じの煙が、あっと言う間に部屋の中に充満し、その煙は現在進行形で続いている。

班長のラーダとその部下は、瑠璃から突然出る煙に驚いたが、その煙が大人の男からするといい匂いに感じられ、媚薬効果とも違うが何とも言えないいい匂いに我を忘れていた。

瑠璃は自分の体臭を今まで嗅がれたことがないのに、知らない男達に嗅がれて、その男達が何とも言えない表情をしているのをみて全身が恥ずかしさで、例えると、水に浸かると一瞬でお湯に沸騰するくらい真っ赤になり、無意識に手の平を扉の向け叫んだ。

「私の匂いを嗅がないでください!」と。

何処から発生したのか突然の強風、扉が強風で煽られ、爆発でも起きたかのように、見事に吹っ飛び粉々になった。

匂いを嗅がれないための瞬間的な換気と頭から出ていた煙も消えた時、一瞬のこと瑠璃は狂気の視線を感じた。

不思議な事に、あれだけの煙が出ていた頭は、アニメでよくある様な髪の毛がチリチリなったと触ってみると、サラサラの黒髪ストレートヘアのままだった。

前髪は眉のすぐ上で切り揃え、後ろの髪は肩甲骨の下で切り揃えられた、エジプトのピラミッドの壁画に描かれているような小学校5年生当時のままの髪型なのだ。

これは、ちょっと嬉しいと瑠璃は思った。


評価よろしくお願いします。

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