ルイネ3
ルーノンの世界では容積の単位がリュウと表現します。
瑠璃が居た元の世界の容積の単位、1立方メートルと同等です。
ですから、文中の表現で200リュウとは。凡そドラム缶1個の容量と同じになります。
本文をお楽しみ下さい。
「職業とスキルも発生しているようです」とルイネが嬉しそうに聞かせてくれた。
「ルイネさん成人おめでとう。
私はとても嬉しいです。
と、言う事は夜はお祝いですよ」と瑠璃が喜んだ。
「あの、ルリ様は私の成人よりも職業やスキルがどんなものかが、気にならないのですか」とルイネが不思議気に聞く。
「私はルイネさんの職業やスキルよりも、今まで無事に生きてこられた事の方が、何よりも嬉しいのですよ。
この世界でほぼ一人15年間生き抜くことが、どれ程難しいかを私以上にルイネさんがご存じでしょう。
それに私は、職業やスキルは成人後に生きていくためには大切なものと、思っています。
職業やスキルに当たり外れがあるとは思いませんから、要はその職業やスキルの使いようですよ。
ですから先ずは、15年間無事に生きてこられたことを素直に喜びましょう。
ねぇルイネさん」と瑠璃がルイネに話した。
「ルリ様は私の職業やスキルよりは、15年間生きてこられたことを喜んでくださる」と思うとルイネは、ルリを母の様な存在に感じる。
「ゴズ、今ルイネさんが成人したそうですよ」とルイネの成人をゴズに知らせると、ゴズもルイネの成人を喜んでくれた。
何か成人を祝うプレゼントを考えなくてはいけませんね。
と、考え瑠璃はアイテムボックスの中を探すが、ルイネが喜びそうなものが何も無かった。
困った時の神頼みという事で、ルイネとゴズを連れて神界の瑠璃の部屋に転移した。
「ゴズはアイテムボックスに戻らないでくださいね。
さぁ、今日はお客様を連れてきましたよ」の声に神様がやってきた。
「其方がルイネか、わしが拵えた服が良く似合っているのぉ。
どうじゃ、服に何処か不満はないか」と神様が聞くが、ルイネは緊張してまともに答えられないように瑠璃は感じた。
「神様、ルイネがたった今成人しました。
それで、何か良いプレゼントがないかと思ったのですが、思いつかなくて連れてきました。
それから、私のアイテムである黒妖犬に名付しました。
名前はゴズと言います」
ゴズが神様に向かって一礼をする。
「おぉ、そうかそうか。
先ずはルイネ、めでたいのぉ。
ルイネに何か授けてやろう、何か望みがあるか」と神様に問われルイネは少し考えた。
そして「神様、私ごときが神様から直に言葉をかけてもらえる、それだけで私は十分です」とルイネが嬉しそうに言う。
「なんと欲のない事を言う、そんな其方をわし等は嫌いではないぞ。
瑠璃は本当に良い者を使徒にしたな」と神様が言う。
「じゃがわし等も神じゃ。
ルイネに力をやろうと思うが、ルイネよ。
其方、力を貰ってくれるか」
「神様私は強くなれるのでしょうか」とルイネが喜々として問うた。
「勿論じゃ、成人した今ならルーノンで威張りくさっとる、偽勇者以上の力がな。
ただ、瑠璃からも聞いているじゃろうが、其方に戦闘力はないから、強さという点では、瑠璃のアイテムのゴズには到底及ばないのじゃ。
ただ、力を欲するならルイネは人を辞めねばならなんが、さてどうする」とルイネに神様が告げた。
「それはか、神様」と言いかけた瑠璃は、これはルイネが決める事と思い、その後は言わなかった。
だが、今まで15年間、特にメイドとして仕えた時の苦しみと苦労を知ると、簡単に人を辞めてほしくないと瑠璃は思う。
だがルイネは一瞬も迷わず、ルリ様に使える身として望みは力、力が欲しいですと宣言した。
「ルイネさん、私はルイネさんに人を辞める事を望んではいませんよ。
考え直してください」と瑠璃は言うがルイネは自分の考えを変えない。
「そうか、分かった。
しかしルイネよ、これから先は引き返すことは出来んぞ。
それでも良いのか」と覚悟を聞く。
ルイネは考えを変えないばかりか、「これまでルリ様ゴズさんに守られてばかりの自分が嫌だった。
私はルリ様のお荷物ではなく役に立ちたいと前から思っていた」と話す姿に神様は強い決意を見た。
「よかろう、では始めようか」
神様のその言葉で、ルイネの全身が虹色の光に包まれ意識を失う。
ルイネを包む虹色の光は消える気配を感じない。
その間を利用し神様は、ゴズを見て「うん、うん」と満足げだった。
「ゴズよ、お前にも何かやろう。
と、言って神様はゴズにアイテムボックスを与えた。
これで、さらに瑠璃の役に立つことを期待するぞ。
「勿体ない、この先も主のため役に立って見せます」と言うゴズに対し、瑠璃は初めのころの「1週間に5回」とかの言い回しは、何だったのか、不思議に思った。
瑠璃の体感時間で凡そ28時間くらい過ぎたころに、ルイネの体を纏っていた虹色の光が消えた、と言うよりもルイネの中に全て入ったというのが正しいように感じるが、とにかくその光が消えるとルイネの意識が戻った。
神様達がそんなルイネに驚いた。
これまで何度か人を神の使徒に作り替えたことがあるが、誰一人として意識が無い中で、長時間倒れることなく立ち続けた者がいなかったと、瑠璃に神様が話してくれた。
ルイネの意思の強さに、「どれ、ふむふむ」とルイネを鑑定しているようで、瑠璃も神様に倣ってルイネを鑑定してみた。
瑠璃の鑑定によるとルイネは、神様が言うルーノンの偽勇者よりも遥かに強いというのが分かった。
「どうじゃ、瑠璃にも分かるじゃろう。
ゴズほどではないがルイネも相当に強くなった。
もしかするとルイネはわしの最高傑作かもしれんな。
これまで何度か作った使徒の中で、間違いなく最強の使徒がルイネじゃよ」と神様は満足げに話した。
「ルイネよ、どうじゃ。
これで、本当の神の使徒になった感想は。
ルイネ、そなたは瑠璃同様に、これ以上の体の成長はない。
その代わりに、寿命は普通に生きて4000年は生きられるじゃろうて。
瑠璃はわしらと同じ神じゃから寿命はないが、この先も瑠璃を助けてやってくれ」と神様がルイネに話した。
「そうじゃ、ルイネに持たせる武器が要るのぉ。
ルイネは今何をもっておるのじゃ」と問われ、ルリ様から頂いたと言って、メイド服のフォルダーから長身のナイフを取り出した。
「そうか、瑠璃も良い武器を持たせたな。
では、そうじゃのぉ」と言い神様はルイネの頭に手をかざし、ナイフの奥儀と言えるものをルイネの頭に入れた。
神様曰く、ナイフの扱う上での極意じゃと。
「でルイネ、強くなった実感が感じられるかのぉ」
「はい、体が非常に軽くなった感じがします」と言いルイネは自分の持つ白カードを出してみると、職業とスキルの表示欄におかしな文字が並んでいた。
白カードを見た神様は「神の使徒にそんなものは何の役にも立たんよ」と言う。
「神様、私はその白カードが無くて、ルーノンでの初日に大変な目に遭ったんですよ」と瑠璃が抗議した。
「その結果ルイネに会えたのだから、それで良いのじゃ」と言った。
次に「そんなに大切な物なのか」と瑠璃に聞いてきた。
「今は自分でオリジナルを参考に作りました」と言う瑠璃に良い情報を貰ったと笑う神様なのだ。
其処へ瑠璃曰く、神のテクニックを持つ名の知れた神様がやって来て、ルイネの改造が本格的に始まろうとしていた。
「ルイネさん我慢してくださいね、神様の指使いは本当に最高ですから」という瑠璃に、ルイネは何の事が分からない、と言った表情が、この先どの様に変わるかと思うと少し楽しみな瑠璃だ。
「失礼だな瑠璃は。
僕は指使いが他の神よりも器用なだけだよ」と、いい笑顔を瑠璃に向ける。
いつの間にか出てきたストレッチャーの様な寝台をさして「ルイネはここに横になってくれるかい。
と、その前に、武器はは外してと」と、ルイネのスカートの中に手を入れる神様に緊張して体を固くするルイネを少し気の毒に感じる瑠璃だ。
そして、エプロンとジャンパースカートのファスナーを下げ、黒色のリボンタイを外し、下に着ている薄赤いブラウスのボタンを上から外していく。
ルイネに一瞬コットン邸の惨めな記憶が蘇るが、ここにヨーゼフはいないと思い幾らか安心する事が出来た。
「ルイネ、心配なら私の手を握っていると良いですよ」と瑠璃が手をルイネに触らせる。
「ありがとうございます、ではそうさせていただきます」とルイネは瑠璃の小さな手を触り安心できた。
「じゃぁ、始めるよ」と頭のてっぺん辺りを触り始める神様は独り言を「ふむふむ、ここがぁ、そうか、ふむ、ここも良い感じだ。
それなら此処は?これは凄い」と呟きながら、ルイネの頭を起用に手のひらと指を使い、触り撫でまわしている。
「よし、これでいい」と言い名の知れた神様が一人納得している。ついに始まるのだ、お触りという改造が。
ルイネが着るブラウスの隙間から手を入れ、神様がルイネの慎ましい両胸を直に揉みはじめた。
幾らか時間がたったころ、ルイネから「アァン、アン」と小さな喘ぎ声が漏れはじめ、可愛い顔の顔色が紅潮し息遣いが時にハァ、ハァ、と激しくなる。
「ルイネさん大丈夫、安心してくださいね」と瑠璃は励ますが、ルイネには聞こえていないようだ。
「よし、これで完成だ」の声に、長かったがやっと終わったと感じるルイネなのだ。
「ルイネさん大丈夫ですか」の瑠璃の問いにルイネは恥ずかしくて、まともに瑠璃の顔が見れない。
そして、ルイネは神のテクニックの凄さを知る事になった。
勿論知ったのはそれだけではなく、優れたアイテムボックスの存在の方だ。
「では説明するよ。
ルイネ、アイテムボックスと念じてみてよ」と言われるままにルイネは念じてみると、武器・装備・消費・倉庫・金庫と頭に浮かびでた。
神様の指示で、武器と念じるとナイフが100万丁有るのが分かった。
その他各種武器も100万個持っていた。
装備の欄は空だった。
消費の欄には、各種ポーションをそれぞれ100万所有しているし同様に各種のポーション作りに必要な材料も100万持っていた。
「ナイフと各種ポーションは、減った物は随時補充されるから、買い足す必要は一切ないからね」
倉庫は空だった。
同様に金庫も空だった。
なおも神様の説明は続き、人が成人して入手するアイテムボックスは、王でも奴隷でも1個と決まっている。
その容量も凡そ200リュウと容積も決まっている。
この200リュウを多いとみるか、少ないとみるかは人それぞれだが、中に仕切りはなく、混ざると色々と面倒が起きる。
例えば、食材に狩りの獲物の血が混ざるとか。
それに、アイテムボックスは時間停止が無いため、生ものを入れると時間とともに劣化し、熱い物は冷たくなるし、逆に冷たい物は時間と共に温くなる、と言った具合にだ。
それが、この倉庫は決して入れた物が混ざり合うことはないし、防汚と防臭効果があるからね。
それに、時間停止が働き、何時まで経っても中の物は劣化しない、つまり腐敗はしない。
それに、熱い物は何時までも熱いまま、冷たい物は何時まで経っても冷たいままなのだ。
例えば、熱い料理は何時まで経っても倉庫に仕舞う直前の状態で熱いし、冷たい物は何時までも冷たいのだと。
注意して欲しいのは、熱い物が冷たくするや、冷たい物が熱くするといった事は出来ないからね。
それと、生きた物は入れる事は出来ないと。
これは、人が持つアイテムボックスも同じと、神様が説明してくれる。
注意してほしいのはアイテムボックスの容量だが、容量は6000億リュウと上限が決まっている。
「まぁ、普通に使う分には困らない容量と思うよ」と神様が説明してくれた。
これで、ルイネの成人のプレゼントは終わったよ、と神様が言う。
ルイネは恥ずかしい思いをしたが、神様にお礼を言い感謝した。
そして、「この身は、ルリ様に捧げる覚悟だ」と宣言した。
神様ありがとうございます。
また来ます、と言い瑠璃は転移し自室に戻った。
2日ぶりの夕食の時間に既に出遅れたので、今日はお気に入りになった森のオアシス亭に行くことにした。
「申し訳ないのですが、ゴズは我慢してくださいね」と言う瑠璃にゴズは私に、瑠璃様の気遣いは無用ですから、楽しんできてください、と言い送り出してくれた。
森のオアシス亭で瑠璃とルイネは料理を堪能し、頭から煙が出るまで食べ、ルイネの成人を祝った。
その後自室の戻りルイネに瑠璃が言う。
ルイネさんに求める事は、荒事ではなくこれまでどおり生活だと。
そして、私からの成人のプレゼントとしては味気ないが、お金だと。
「ルイネさんの金庫は空の筈ですから、これで金庫の格好が少しはつくでしょう」と言い、ルイネの金庫に使徒が持てる限度一杯の5000億イェンを入れた。
「ルイネさん、金庫の金額を確認してみてください。
上手く入っていると良いのですが」と。
確認したルイネは青くなりブルブルと震えだした。
「ルリ様このお金、5000億イェン私には」と続けるルイネを手で制して瑠璃が言うのだ。
「成人すると渡したいと思っていたお金ですからね。
それに、この先ルイネさんにはいろいろ手伝ってもらう事が沢山出てきますから、絶対に必要になりますよ。
ですから、このお金で私の役に立ってくださいね」とルイネに言う。
それから「ルイネさんにお渡ししたナイフですが、今のルイネさんはこの世界の偽勇者と違い、私が認める真の勇者以上の力がありますが、ナイフがルイネさんにさらなる力を貸すでしょう。
ルイネさんのアイテムボックスにあるナイフは、良い物ですが基本消耗品ですから、投げるか誰かに与える状況が生まれると思いますから、その時に使ってください。
戦闘にはこちらを。
切れ味は抜群にして、多数の特殊能力付与にしているので手入れ不要の決して錆びない優れものですからね。」
「その、神様もルリ様もですが、偽勇者ってどういう事なのですか」の問いに、「簡単なことですよ。
職業とスキルに勇者は存在しませんし、私が認定し武器を与えた者だけが勇者ですからね」と瑠璃が言う事に納得するルイネは、改めてルリが神様と認識する。
「私が決める事がこの世界のルールだと、この前ディガール魔王の前で言ったのですよ。
ですから、この世界で初めての勇者は使徒になる前のルイネさんだった訳ですよ」と瑠璃がほほ笑みながら言う。
「そうそう、ルイネさんの倉庫には立派な仕切りがありますから、決して混ざる事はありません。
暴漢を殺めた時は安心して倉庫へ入れてくださいね。
そうしないと、私たち衛兵の出番になりますからね。
ルイネさんは以前私がやっていたのを見ていたので出来ると思いますが、軽く練習してみましょうか」と言う瑠璃にビックルするルイネだ。
「何も人を殺すのではないので安心してください。
では」と瑠璃はルイネの前に、ルイネが好きと言った、モンブランとどら焼きに焼き芋を出してみせた。
「ルイネさん、これ等を倉庫に仕舞ってみてください」
言われるままに、ルイネは倉庫へ入れて、出してみた。
これで安心しました。
ただ、人の場合は最後に私が処理しますから、私に預けてくださいね。
ルイネさんの容量は私と違い制限が付いていますからね。
では、これでルイネさんは下がってください、今夜はおしまいです。
私は御札から聞こえるお願いを少し叶えますから。
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