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神様になった  作者: 小原河童
冒険者編
18/497

鬼酒場1

今朝は霧もなく、わずかに日の出が早くなったのを感じる事ができた。

今朝は朝食に時間を掛けず、少し遠回りをして衛兵本部に行った。

ジェストラード川により近い道を選んだが、ここも通りは植栽がなされ、こちらの特徴は、樹木よりも草花が多いと感じた。

ダウンタウンが近くなると、中央広場の女神像の頭の部分が、木立の間から見え隠れし、この道を瑠璃は好きになった。

なんと言っても、女神像の近くや直ぐ下を通らなくて済む、それだけで、瑠璃が好きになるには十分だ。

しかし、衛兵本部裏へ出るこの道は、表に回るには大回りをしなければならず、思ったよりも時間がかかるのが難点だ。


リンツ隊長の執務室内に、八班班長エステ・トルテと九班班長アルト・ラッツェンベルガーが瑠璃を迎えてくれた。

遅れて執務室に入ってきたのは、リンツ隊長だった。

「皆遅くなった、おはよう」と挨拶するリンツ隊長だ。

「また今日からルリが来てくれるので、事件の進展が期待されるが、日々の業務も大事だ、わかるな」

「ルリは2班班長の下で引き続き事件の解決を目指してほしい」

「それで我々2班以外の者はどのように」と、聞くアルトに対し、リンツはルリに意見を求めた。

「そうですね、ウッドマンが着ていた人皮の下着です。

その製作者の捜索を考えています」

「思うに、衛兵本部に有るナルディ市に店を構える武器屋と防具屋の全店のリストからの捜索です」

「聞き込みは範囲を広げ、特にやめた者の名前と住所もです」

「今思いつくのは以上でしょうか」と瑠璃が言う。

「気持ち悪い、あの肝臓のほうは」とエステが聞いてきた。

「一度に取り掛かるより、今は肌着の製作者にしましょう」と瑠璃が答える。

「そうか、両方は難しいか。

では、今日からまた手分けし肌着の件を片付けるとしよう」とリンツが方針を決めるのだ。


リンツが命じ武器屋と防具屋の全リストの山を職員が運んできた。

職員が運んできた書類の山をリンツ隊長が目見当で三つに分けて、

1つは、1班から4班だ、他より人数が少なくてすまん。

2班については、今までと同じだ。

次は、5班から8班、最後は、9班から12班だ、と班分けをした。

「良いか、決して速さを競うものではない、丁寧さだ。

今日1日で済ます必要はないからな」とリンツ隊長が訓示した。

武器屋防具屋と最も関わりがないと思えるスラム街に2班は、瑠璃の提案で行くことになった。

スラム街に行ってみたかった、瑠璃の個人的な興味で2班は振り回されてしまう。

班長のラーダをはじめ班員は5人でスラム街に入るには、戦闘の覚悟が要るし、スラム街の住民が団結すると、5人では手に負えなくなるので、本当のところは行きたくないが、本音のようだ。

仕方なく出かけたスラム街だが、スラムの住民は意外なほど幼女バラバラ殺人事件についての聞き込みだというと、協力的でラーダをはじめほかの者も拍子抜けした。

もっとも、住民の中には、まともに話が聞けない精神が異常な者も少なからずいたのだが、聞き込みを進めると、スラム街から多くも幼女の行方不明者がいる事を知った。

総数は聞いた中で不明者は24人に上り、実態はもっと多いのかもしれない。

被害者を最後に見たところが、スラムと住宅街の境とスラムと商業地区の境で、次がスラムの中が続き、スラム中心部はなかった。

ルーデジア王国に住民台帳といったものがなく、人口は大雑把な把握でしかなく、特に重要な職業やスキル保持者以外は、領主の出先機関である代官所に届け出がないのでわからないのだ。

届け出をしないのは、人数にかかる人頭税の節税が主な理由で、有用な職業やスキルを持たない者は、世に言う外れスキルに高収入に繋がる職はないからだ。

有用な職業とスキル保持者は、領主の館か代官所に登録すると、領主から仕事が貰えその報酬は税を払っても十分につり合うのだ。

ちょうど昼の鐘が鳴り、瑠璃たちは近場にある17分署へ向かった。

昼飯にする予定の17分署で美味い食堂を聞き、カーク食堂を教えてもらった。

そこのお勧めメニューは、とにかくお勧めとだけ言えば良いのだと。

で、カーク食堂で全員がお勧めを注文し、中年の小太りなおばさんが、大声で厨房に向けてお勧め5つよぉ、と言い放った。

2班の皆は何が出てくるのか、ワクワクしながら待っていると、そのおばさんが持ってきた料理は、根菜が入ったクリームシチューと何かの魚のミンチがふりかけのように掛かった野菜サラダとフランスパンと同様なパンだった。

「待っててね、まだこれで全部じゃないから」と言い、コンソメ風のスープが出てきた。

どれもが、量が多く十分に食べ応えがあり、その上美味い。

今日の瑠璃は頭から出る煙を気にすることなく、美味しく料理を堪能することが出来、本当に嬉しく感じられた。

瑠璃は食後何気に、左後ろの席に座る冒険者風の男に、ウッドマンについて聞いてみた。

小娘のその怪しげな格好をしかめ面で睨んだが、同席の衛兵に気が付き、瑠璃に凄むのを止め答えた。

「ウッドマンって俺が知っているのは、確か衛兵をしていると言っていたな」と話しだした。

瑠璃と男の会話の中にウッドマンという言葉に、衛兵の隊員たちが聞き、声のする方へ向くのである。

「な、何だよ、オメェら。

俺は悪いことはやってねぇぞ」と。

「いいから、その先を話してください」と瑠璃にせかされて、その男はつい先日見た事を話しだした。

「あいつ、誰だったか、みりゃ分かるんだが」と暗に小金を要求する男に、瑠璃はここの食事代を持つと交渉するのだ。

瑠璃はそれ以上の金を出す気はなかった。

ラーダが、「おい、貴様いい加減にしておけよ。

お前が叩けばホコリだらけなのは、この俺がよーく知っているんだからな。

いいから、知っていることを言えよ」と言う。

そのやり取りを見ていた、ポーラーとネリナはため息をつき苦笑した。

なるほど、ラーダに情報屋がいない、そのワケを瑠璃はたった今知った。

「分かったよ、旦那は本当にあれだな。

言ったように、冒険者風の男と鬼酒場で飲みながら話していたのを見ただけなんだよ。

何でも、材料の調達がどうとか。

その冒険者風の男は、後5日待って材料が揃わないと出来ないが、約束どおり前金は返さないぞ、みたいな話だったと思う」と言ったのだ。

「その男の特徴は、特に顔に切り傷があるとか」と瑠璃が聞くが、薄暗くて分からなかったらしい。

「良い話をありがとうよ」とラーダが言い、その男の食事代を払ってやった。

「その、班長。

鬼酒場って何処にあるのでしょうか。

その鬼酒場で話を聞いてみませんか」と提案する瑠璃だが、ラーダがルリは連れていけないと、あっさり断られた。

ポーラーとネリナは直ぐに事情を察し、「私達はルリちゃんと付近を聞き込みに行きますからね。

それでいいですよね」と、ラーダの了解を求めた。

ネリナ曰く、鬼酒場というのは、普通の居酒屋とは違うから、「ルリちゃんは行っちゃダメ」なのだと。

しつこく聞く瑠璃にネリナが教えてくれた事は、粗悪な安酒と不味い料理のセットが、非常に高額なのだと。

酒場の中では、複数の女たちが舞台で着ていた服を一枚ずつ脱ぎ裸になって踊るのが売りで、夜は時間限定で、本気になった男の相手もさせられる事もあると教えてくれた。

それも、鬼酒場の売りの一部なのだと。

男の相手は主にそれ専門の奴隷が務めるのだが、極たまに奴隷落ち寸前の女や誘拐された少女などが出ることがあり、それが客の受けが一番良いのだと。

「なんか、ネリナさんは詳しいですね」と、瑠璃がいうのだが、2班で仕事をしていると、嫌でも知るのだと教えてくれたのだ。

「誘拐されて酷い目に遭う、なんか納得いきませんね。

普通は高額な身代金の要求と思いますが、相場に関係なく誘拐した者からすれば高額の金を要求できるし」と言う瑠璃に、ポーラーもネリナもそれは何、みたいな顔をして見つめ合っていた。

それで、瑠璃は、「誘拐し金の要求する、誘拐した相手を無事に返してほしいのなら、金を持ってこい、金と引き換えに返してやる」、と言うものですよ。

二人は揃って、「なんでそんな面倒なことをするのよ」と、突っ込まれた。

「それより誘拐した後は、奴隷商やこの鬼酒場のような如何わしいところへ売ったほうが、安くても面倒がなく安全よ」と二人は言うのだ。

攫われた者を本気で見つけたいのであれば、専門の腕利き冒険者を雇うほうが、見つけやすいとも話してくれた。

このナルディ市の公称で凡30万人の人口に比べ、犯罪捜査を専門にやるのは2班の150人だけなので、ある意味、誘拐した者の勝ちのような傾向があるのだ、と瑠璃は思った。

瑠璃が元いた世界の日本でも、この鬼酒場のような店はあり、警察力が充実していた日本と比べても、人間の本質はあまり変わらないと思った。

「あっ、ドールトが出てきたよ、随分と早いね。」と、言うポーラーが言うのだ。

「ねぇ、ドールトさん。

中の様子はどうでした、少しは楽しめましたか」と、からかい口調でポーラーが続けた。

「何を言っているのですか、これも捜査の一環ですから」と澄ました顔で答えている。

続けてラーダも出てきた。

結果、鬼酒場は空振りだった。

この界隈は鬼酒場に似たような酒場が多くあり、店の聞き込みはラーダとドールトに任せ、瑠璃たち女性は周囲の聞き込みと手分けをして、ウッドマンと接触した者探しが続く。

夕刻一の鐘がなり、今日の捜査は時間切れになった。


本部へ戻るとリンツ隊長の執務室で、今日の報告会が行われた。

各班の報告は、リストに載っている半分を消化したが、今のところウッドマンと繋がりがある者の情報はなかった。

その中で有力とまで言えないが、2班がもたらした鬼酒場だけといったもので一日が終わった。

本部を出た瑠璃は、鬼酒場に対する興味が抑えきれずにいた。

若葉の朝露亭にこのまま帰るか、それとも、このまま鬼酒場に行くか。

迷ったが、鬼酒場に対する興味に勝てず、鬼酒場に直行することにした。

昼間に来た時と違い、鬼酒場の扉の両横に厳つい大男の門番が、通り過ぎる男たちに睨みを効かせていた。

瑠璃は強力な認識阻害の結界を掛け、鬼酒場の扉に近づくが門番の大男に無視され、簡単に中にはいることが出来た。

薄暗い酒場の中は中央に凡そ5ベイの四角型のステージが設置してあり、そのステージを取り囲むようにテーブルが配置されていた。

当たり前だが、ステージ直前のテーブルが高額なのだと瑠璃は感じた。

店員も客も瑠璃に気が付く者は誰もいないが、客や店員が瑠璃にぶつかると、人とぶつかったという認識は残るのか、振り返る者がいた。

店内はちょうど夜一番目の出し物が終わり、男たちの汗臭い体臭と体液の匂いが程よく充満していた。

次のステージに向けてのつなぎの時間である今は、客たちの間を酒と料理を売り歩く女店員に手を出そうとする男たちを監視する男の用心棒が忙しく動き回っている状態だ。

瑠璃は主にステージから離れたテーブルの客を注視したが、ウッドマンと関わりがありそうな男はいなかった。

次は入り口と反対側に当たるテーブルも一応見てみたが、こちらも同様で、瑠璃の直感にヒットする者はいなかった。

次はフード裏のモニターが頼りなのだが、モニターに意外な反応が出た。

注意して聞き耳をたてると、次の出し物の段取りを話し合っているのだ。

それは、天井からロープで全裸の女を吊り下げ、縄で縛ったその女を鞭打つ催しのようだ。

その後のお楽しみも、吊るされる女に課されている、と聞こえる。

モニターの表示を切り替え同時に神眼で見ると、その女に奴隷紋は見られなかった。

と、言うことは、恐らく誘拐された女か、もしくは職を求めてナルディ市に来て騙された者と推察できる。

無数の並列思考が可能なスーパーコンピューターを内蔵した頭脳といっても、瑠璃の体は一つなので、このままウッドマンの繋がりを追うか、それとも女の救出を優先するか、と思案しているうちに、「ぎゃー」と言う甲高い悲鳴はとても演技とは思えず、縄で体を縛られた少女が天井からゆっくりと降ろされはじめた。

ディスプレイに映った女は少女だったのだ。

薄暗い照明に照らし出されるその姿は、男たちは興奮の的だろうが、女だった瑠璃からは、悲惨で哀れにしか感じられなかった。

成人前の少女に不釣り合いな、豊満な胸をより強調するかのように、胸を上下からしぼるように縛られた縄が肌に食い込み、股には1本の細縄が強く食い込んでいた。

ステージの上に着地した少女に、何処からか出てきた黒い頭巾を被った大男がムチを振るい始めるピッシ、ピッシと鞭が鳴ると、少女の「やめてー、許してー」の絶叫が、男たちの興奮が更に加速する。

ステージ周囲のテーブルから、銀貨がステージに投げ込まれ「尻を打て、もっと乳を攻めろ」と男たちのヤンヤの歓声が巻き上がってくる。

瑠璃の優先順位は決まった。

今は鞭打たれている少女の救出が優先される。

この救出手段は、神威による時間停止だ。

瑠璃を中心に、停止範囲は50メートルもあればこの場合十分と瑠璃は判断する。

周囲の時間を完全に止めた状態にし、天井からロープで吊るされている少女の下に行き、手っ取り早く肌に食い込む縄を瑠璃は素手で切った。

素手と言っても、普通の人間に出来る技ではなく、食い込んだ肌に傷をつけることなく切る、神のなせる技だ。

「歩くことが出来ますか」と少女に聞くと歩けると言うので、認識阻害の結界内に少女も入れ、普通に歩いて出口の方へ歩き出す。

そして、出口の扉を締めようとする時、ステージの方が騒がしくなるのが分った。

時間停止の範囲外に出たと判断した瑠璃は、歩いて衛兵本部を目指した。。

少女は全裸のままで、歩く度に振動で豊かな胸がプルンプルンと揺れている。

今は認識阻害の結界内なので、裸でも通行人からは認識出来ないが本部に戻ると、一旦は結界を解かないといけない。

今は夜なので衣類を買うにも店も閉まっている。

また困り事が発生した。

衛兵本部前で瑠璃は結界を解き、改めて少女だけに結界を掛け直した。

「ここで少しの間待っていてください。

服を用意してきますから」と告げ、瑠璃は衛兵本部へと入っていった。

少女は何がなんだかわからないまま、おかしなフードを被った少女の言うとおりに、入り口近くで隠れて待つことにした。

とにかくあの地獄のような酒場から助け出されて、自分は本当に運が良かったと少女は感じるのだった。

酒場で男たちの慰み者になり、次に待つのは性奴隷に決まっていると感じるからだ。

裸の体を見ると、先程の縄の痕とムチで打たれた胸と太ももに新しく3つの太いミミズ腫れが出来、緊張が溶けるとともに、ムチで打たれた痛みが蘇ってきた。


一方、鬼酒場では。

鬼酒場の店主ロンは、ウッドマンの言う上玉を信じ30000イェンの大金をはたいて買った少女は、昨日の出し物でも好評で、今夜は別料金で客3人に少女を自由にさせる、と言う約束が既に成立している。

あの少女は上玉な上、酒場一晩の稼ぎをその身一つで稼ぎ出してくれるまさに金の成る木、本当にいい買い物だったと。

それが、突然目の前から居なくなるという、不思議なことがたった今起きたのだ。

「一体何が起きたんだ」と叫び、用心棒等に当たり散らすのがロンに今出来る精一杯といったところだ。

ロンは用心棒の男たちを怒鳴りつけるだけで、ロンもだが用心棒たちも、何が起きたのかがまるっきり分からない。

ただ、少女を縛り上げていた縄は切られていた。

ちぎられたのではなく、刃物を使った感じはなかったが、角が丸くそれでいて、鋭い刃物で切ったような不思議な切り口だった。

ムチを振るっていた黒頭巾の男は、一瞬何が起こったか分からなかったが、気がつくと少女はいなくなっていたのだと。

少女の気配は感じたが、目で捉えることは出来なかったのだと。

表の用心棒の二人も、店の中が騒がしくなる、ちょうどその時誰かが扉から出て行った、と感じたが、それだけで、誰かは分からなかったと話した。

この不可解な現象に鬼酒場は大騒ぎになった。


瑠璃はリンツ隊長の執務室を目指すが、その途中で5班班長のアンに出会った。

男より女のアン班長に出会ったことは幸いと、アン班長に鬼酒場から全裸の少女を救出して、今本部前で少女を待たせている事を伝へ、少女に着せる服を貸してほしいと、瑠璃が言った。

話を聞いてアン班長の対応は早かった。

まず5班兵舎へ行き、私物の中から簡単に着ることが出来る薄ピンク色のワンピースを瑠璃に渡し、アン班長はリンツ隊長に少女の保護と仮の寝床の用意を報告に行くと言ってくれた。

「後で私が少女を連れてリンツ隊長に詳しく話をしに行きますから」と伝え、瑠璃は本部の前で待たせている少女のもとへ急いで戻った。

少女は瑠璃の近づく気配で、立ち上がり瑠璃を見た。

この少女は自分よりも遥かに年下なのに、一人で鬼酒場から私を助け出してくれたのだと理解は出来たが、実際その姿があまりの稚すぎて信じられないのだ。

「その体の方は大丈夫ですか、怪我はないですか」と瑠璃が少女を気遣う。

「借り物ですがこれを着てください。

このあと、衛兵隊長に会いに行きますから、一緒に来てください。

隊長と女性と私で話を聞きますから、鬼酒場について詳しく話してください」と、瑠璃はこれからの事を話して聞かせた。

アン班長の服は、少女には丈が長すぎるのだが、胸のあたりは丁度良かった。

隊長執務室に入ると、アン班長がいるのは分かっていたが、他にダーラ班長も一緒だった。

リンツ隊長は瑠璃を見ると叱りつけた。

「お前は無茶をしおって」に続いてラーダも同様に「お前はなんて無茶をしやがる。

我々大人でもあそこから人を拐ってくるのは難しいというのに」と。

「無茶はこの一度だけにしろよ」とリンツとラーダの言葉が重なったのだ。

これを見ていたアン班長は微笑んでいた。

「まぁまぁ、お二人共その辺にしてください。

あちらの方を脅かしても意味がありませんから」とアン班長が二人を窘めてくれた。

「本当にそうですよ、大体ラーダ班長が私を鬼酒場に連れて行ってくれなかったからじゃないですか」と瑠璃が不満を口にする。

そして、瑠璃が少女に向かって、「あなたのお名前を教えて」と聞いた。

彼女は、アンジーと言いナルディ市に職を求めてヨールズ村から妹のリンの二人で来と語りだした。

「ヨールズ村というと、確か馬車で4日はかかる距離と聞いていますが」と言うアン班長に対し、途中で出会った男でロンスという奴の馬車に乗せてもらいナルディ市に来たと。

ロンスはゲス野郎で、私に言うことを聞かなければ妹のリンを殺すと脅し、ナルディに着く3日間は昼夜の別なく私を犯し続けたのだと。

そして、ナルディ市の門に来るとウッドマンという人の仲立ちで、私達は鬼酒場に売られたと泣きながら語ったのだ。

一緒に売られたはずの妹は、まだ幼く鬼酒場で見ることは、一度もなかったと。

私を鬼酒場の店主ロンは大金でウッドマンから買ってやったんだから、言うことを聞かないなら奴隷商に売り飛ばし、ウッドマンに払った金の回収に当てると、脅されロンのおもちゃにされました。

12日前に私をウッドマンに売ったロンスという奴が来ていまして、ヤツがウッドマンと何かを話していて、ウッドマンがロンスに金を出していたのを見ました。

「ウッドマンと繋がりのある奴がはっきりしてきましたね」と瑠璃が言う。

「リンツ隊長、今夜は兵舎にアンジーさんを泊まらせたのですが。

私の班に空きがありますから、構いませんか」とアン班長が聞いた。

「私の時は、泊まれって言ってくれましたよね」と、瑠璃がアン班長の援護をする。

それまで黙っていたラーダが、「一つ確認したい」とアンジーに聞いた。

「そのロンスと言う男の特徴についてだが、何か知らないか」

「冒険者風の格好をしていました」と言うアンジーに、ラーダは期待を裏切られてといった感じが態度に出ていた。

「そう言えば、あいつは赤色のシャツを着ていました」とアンジーがラーダを察して続けた。

「アン班長のところで構わんよ、アンよ、体に傷があれば直してやれ」とリンツ隊長がアンジーの宿を了解したのだ。

「じゃ、アンジーさん行きましょうか。

詳しくは明日話を聞きますから、今夜は何か食べて疲れを癒やして」と言い、アンジーを連れアン班長は執務室を後にしたのだ。

「ルリよ、さすがだなお前は」とリンツ隊長が話を続ける。

「アンジーと名乗った少女の事お前はどのように思うか、意見を聞かせてくれないか」

「そうだ、明日の捜査にも関係することだからな」と、ラーダも意見を求めるのだ。

「推察ですが、私はウッドマンが下着の制作費用に、アンジー姉妹を鬼酒場に売った金で用立てたのだと」

「そして、商談に鬼酒場を使ったと考えますから、見張っていると、また鬼酒場に顔を出すのではないかとも」と推理した。

今夜は遅いので今日は解散になった。

アンジーと名乗った、瑠璃が鬼酒場から連れ出した少女の身の上を考えると、その夜は食欲もなく、スイーツも食べたくなかった。

ただの世間知らずと思えない身の上、最悪妹は既に生きていないのでは、と瑠璃は考えた。

アンジーの身の上の話から、本当にウッドマンはとんでもないクズと思い、今まで本性を隠し衛兵が務まったと事が不思議だ。

そして、色々考えていると、紫の月光が薄くなり、夜明けが近いことを知る。

アンジーを見てウッドマンの住居に置いてあった幼女の肝臓、その持ち主は間違いなくアンジーの妹リンの物だと、瑠璃は推理した。

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