コールスバーク市代官マリンドル・エンドルフ子爵2
挫折から立ち直ったレスの尋問です。
セレスの新しい技も出てきます。
瑠璃は移動に転移を常用しているので天気を気にしていないが、最近は曇りの日が多くなり、確実に季節の変わりが感じられるようになってきた。
秋から始まるルーデジア王国が主催する社交界の日取りが正式に発表されていないが、恐らく例年通りの日程と思うと、ジューク関連の方を急ぎ解決する必要があると瑠璃は思う。
それで瑠璃は転移が出来るので、距離の遠近を考慮する必要が無いから、今日はシュルツ伯爵が代官を務める北のバルミング市とナルディ市を挟み西に位置するジョージアン子爵が代官を務めるジョージアン市の館に行ってみようと考えた。
朝食の前にアースンに予定を話すと、午後から行こうと話がまとまり、瑠璃達は午前中はセレスに会いに行く事にした。
朝食後に瑠璃達はセレスの諜報本部を訪ねると、これからエンドルフ本人に話を聞くと話してくれた。
「セレス部長、エンドルフはマグローとダニード同様に各種耐性を備えていると思いますから、困った時は頼ってくださいね」
「はい、ルリ様ありがとうございます。
これまで6班を纏めてきた身、昨夜はルリ様から頂いた祝福についていろいろ考えまして、今まで私はどうも自分の力の使い方を勘違いしていたように思います。
それで、エンドフルには私の実験台になってもらおうかと考え、今はワクワクが止まりません」と、いい笑顔でセレスが答えてくれた。
取調室の入るとエンドルフが既に連れて来られていた。
憮然とした表情のエンドルフにセレスが言う。
おはようございます。
昨夜はよく眠れましたか。
今日は私が話を聞こうと思いますから、素直に答えてくださいね。
「貴様はわしが代官マリンドル・エンドルフ子爵と知ってのもの言い、無礼であろうが、あぁ」
ハイハイ、それはすでに過去の話、私は領主様からあなたは代官職のクビと爵位の廃爵と聞いています。
あなたがまだ貴族と言い張るなら、私はあなたと違い今でもレ・ガート子爵家の次女なのだが。
あなたに色々聞きたい事があるから、素直に答えないと痛い目に遭いますよ。
「ほぉ、偉そうな事を言うが聞いた事のない家名を持ち出し、それでわしが畏れるとでも思うのか。
この世間知らずの小娘が」と、セレスを小馬鹿にした。
まぁ、良いでしょう。
あまり家の事は持ち出したくないが、私のレ・ガート家はイストール魔王国の宰相を代々務める家系、子爵家が代々宰相を務めるという事がお前のような田舎者に分るか。
お前の様などこの馬の骨か知らない田舎貴族とは同じ子爵でも格が違うのですよ。
もう良いと、セレスが言いセレスの体を昨日見た薄紫の陽炎の様な物が全身を包んだ。
セレスが手をエンドルフに向けると、薄紫の陽炎がエンドルフの頭にまとわりつき、するとエンドルフが苦しみだした。
これを見た瑠璃もルイネも驚いた。
エレンは、セレスがする事を注意して観ている。
「わっ、分かった、もう止めてくれ。
何でも話すから、お願いだ。
頼むからもう止めてくれ、お願いだから」
これ以上やるとルリ様の御手を煩わせる事になるから止めるが、素直に聞いたことに答えないと次は、簡単には止めないからな。
セレスがエンドルフにやった事に瑠璃は、さすがセレス目の付け所が良いと思った。
あの薄紫色の陽炎が、エンドルフの頭中に作用し、中から脳を温め熱くすると、いうものだ。
セレスはこれまで魔力で自身の体力強化と考えていたようだが、自分流の魔力の使い方に気が付いたように思う。
それでは初めに、あの地下室の檻ですが、ダニードに見せようとした実験について話してくれますか。
「あの実験は大失敗でした。
被験者は依存症が強すぎて皆廃人になりましたから、やはり薬よりも常習性により効果的な麻薬が最適と現時点で結論付けています。
それで、ダニードに相談したところ、ダニードがソビリンの種を大量に持って来てくれまして、領民を使い内緒で山を開墾させ今はソビリンを栽培中なのです。
ソビリンの花から採れる麻薬パープルモッグ、あれを薄めてコールスバーグ市民に用いたところ、市民は一切私に逆らわなくなりまして、今は量産中です」と、エンドルフは、自分の研究結果を喜々としてセレスに話して聞かせてる。
「セレスさん、チョットこっちへ」と、瑠璃がセレスを呼び、「胸が豊かになる薬について聞いてください」と、セレスに言う。
言われたセレスは無意識に瑠璃の胸を見て、不思議そうな顔をするが、「分りました。
しかし、何か漠然としていますが、夢のような薬をエンドルフは持っているのでしょうか」と、セレスが瑠璃の真っ平らな胸を再び見て不思議がる。
セレスはエンドルフの方を振り返り、あなたは胸が大きくなる薬を開発したと、噂を聞いた事があるが、それは本当なのか。
「胸が大きくなる、胸が大きくなる、あぁアレですか」と、エンドルフがいい笑顔でセレスの豊かな胸に視線を向けた。
エンドルフから良い笑顔を向けられ、セレスは苦笑するが、胸が大きくなる薬が本当にある事にセレスは興味を持った。
有るのか、有るなら是非詳しく話してもらおうか。
「その、初めに言っておきますが、胸が大きくなる薬はないですね。
その昔、まだジェイコブ殿が領主として健在だった頃に、タニスン様から頼まれて、超遅効性のヒ素を70包作りました。
その後タニスン様から追加注文を受け120包お買い上げくださいました。
用途も知っている範囲ならお答えできますが、如何いたしましょうか」
そうか、ではその用途とやらも話してもらおうか。
しかし、超遅効性のヒ素で本当に胸が大きくなるのかと、更にセレスが聞く迫力が凄い。
「超遅効性のヒ素で胸が大きくなるとか、そんな分けあるはずがないじゃないですか。
ヒ素は人を簡単に殺せるほどの猛毒薬ですよ。
あれはタニスン様の相談で、その様に話しただけです。
タニスン様にヒ素をお売りして暫くすると、ジェイコブ殿の長女と次女が相次いで体調を崩しましたから、私が調合したヒ素の効果と私は今も思っています。
タニスン様がヒ素を長女と次女に飲ませる良い案がないかと、仰るので私は、胸が大きくなるというのはどうでしょうねと、言いました。
結局死因は判明せず、流行り病という事になりましたが、あのタニスン様は本当に恐ろしい方です。
まぁ、私はヒ素による毒殺が何時わが身に嫌疑が降りかかるか、そっちの方が心配でしたが、流行り病で片付き安心しました」
他にタニスンに売った薬はないのか。
「他はありません。
欲しいと言われたことは再々ありますが、私の薬が人殺しに使われるのは、私としても困りますから、何かと理由を付けて断っています」
それは本当だろうな。
「はい、ただ、一度だけ不思議な事がありましたね」
それは何だ、何が不思議なのだ。
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