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神様になった  作者: 小原河童
冒険者編
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捜査1


瑠璃は若葉の朝露亭に戻る道すがら、なぜウッドマンの居場所が特定できないのか、を考えていた。

考えれば、考えるだけ不思議なのだ。

瑠璃には、一度認識した人物に関しては、マニス大陸くらいの広さならば、ピンポイントで位置が特定できるのだが「何故でしょうね」とつぶやいた。

若葉の朝露亭に戻ると、いい笑顔で応対してくれたのは、朝からのリーズだった。

今日一日はリーズが担当のようだ。

リーズに今夜は仕事で帰れない事と、明日も最悪帰れないかもと伝え、夕食を食べにとレストランに入ると、一斉に宿泊客の注目を浴びた。

咄嗟に不味いと思い、給仕係のガフに部屋で食べると伝え、カウンターで料金1750イェンを払って部屋へ急いだ。

夕食のメニューは人気のオーク肉がメインのステーキとシチューセットに堅焼パンにポテトサラダ、全部食べると頭から煙が出るのは間違いないと思う。

まだ食べている途中で頭から煙が出るから、この状態がいつまで続くのか、と思う悲しくなる。

結局夕食は煙が出たところで止めて、煙が収まるまで待って、瑠璃は衛兵本部へ行った。


本部で瑠璃が見たのは、既に同行メンバーの各班班長達が揃ってリンツ隊長のもとで、こまごまとした打ち合わせの最中であった。

出遅れてしまったが、決められた時間には十分余裕があったので良とする。

ナッシュ山の麓で野営をするならここだ、と地図のジェストラード川の支流の一点を指すのは、アルト班長だ。

夜は特にモンスターと魔族の力が増すという事での、このメンバーになった訳だ。

「皆はよく分かっているだろうが、ルリを守ってやってほしい」と出る前にリンツ隊長の言葉に、了解した意思を態度で表した。

夜通し移動の強行軍になるが、道中は十分に気を付ける様に、とリーダーとなるアルト班長が注意した。

本来移動に馬を使うのだが、今回は瑠璃が同行するため馬車になった。

5番門を抜けジェストラード川に沿った道を馬車で進み、街道から外れると馬車道の乗り心地が途端に悪くなり、森の中の移動ではスピードも徒歩よりは早い位まで落ちた。

門を出て日が落ちきる頃までは、興味本位で瑠璃に話しかけてくる各班長も次第に話が無くなり、各班の日頃の行動と班員の事に話が移り瑠璃は安心した。

その間に瑠璃はフードのナビをフルに発揮させると、赤い点が数多く確認できた。

この表示、全てがモンスターなのは間違いないが、ここにいる班長だけでは力不足、万が一にとる行動を色々シュミレーションすることで時間が潰れる。

回復のエキスパート、アン班長が同行してくれるのは安心できる、と考えるのは瑠璃と他の班長も同じようだ。

班長同士の話が途切れた時に、ヘテル班長が何かを察したのか色々教えてくれた。

続いて他の班長もそれなりにだ。

夜は昼間ほどではないが明るく、月は欠けることなく常に満月なのだと。

既に聞いているだろうが、夜のモンスターは昼間の凡そ2倍は強くなるし、それは我等魔族も同じだと。

「だから、今回は魔族である私が同行したのだ」と。

「それに、対モンスター討伐専門のアルトも」と、言ったのはアン班長だった。

「まぁ、怪我した時は私に任せて」と言うアン班長はスタイルが抜群の美人で、紫色の月光に輝くウェーブが緩くかかった銀髪は魅力的だ。

他には六班班長のセレス、彼女も魔族という事だが、普通に人にしか見えないのだ。

こちらも、ミスコンに出れる、いや出て余裕で優勝できるほどの美人さんだ。

魔族の判別方法の一例としては、魔族は爪が黒いのだとセレスが教えてくれたのだが、ヘテル班長の爪は黒くない。

「もしかすると、所属する国の気候による違いかもしれませんね」とセレスは恥ずかしそうに話した。

その話に「ここで言う事ではないが、仕える国の違いではなく、私はこう見えても公爵家の者だ」とヘテルが宣言した。

「ヘテルさんが公爵と言うのははじめ知りました」と驚くセレスに対し「で、なんでその公爵様が人族の領主様の配下になってんだっ」と聞いたのはユルト班長だ。

「それは、秘密です」と恥ずかし気に小声で答えるところが、良い歳をしたオジサンなのにチョットかわいいと瑠璃は感じた。

そして、魔王様の血縁に繋がる者の爪は黒くならないが、代わりに角が生えてくる、とヘテルが教えてくれ、前頭に小指の第一関節くらいの2つの突起を前髪を後ろへ撫でつけて見せてくれた。

「おぉ、凄いよこれは。

チョット触っても良い」と言ったセレスはヘテルの了解もないまま触って角を確認する。

続いて、他の班長も皆もちろん瑠璃も触った。

瑠璃のよく知っている牛の角よりも柔らかく、人肌の温かさと指の感触に近かった。

魔族は階級に厳しいのか、セレスは「公爵様の角を触った」とうれし気にニコニコしている。

ちなみにセレスの家は子爵なのだそうだ。

非常に幸運な事にモンスターの襲撃に合う事もなく、アルト隊長が示した地点についた。

ここで、少し休憩をとる事に決まり、馬車の中の窮屈な空間で座ったまま仮眠をとった。

瑠璃は紫色の月光に、カラオケの照明を思い出し、出来ればもう一度元の世界に戻ってみたいと、このルーノンへ来て2日目で懐かしく思った。

アランを探そうと、モニターの表示設定を人だけに限定して探してみたが、人の表示に設定した赤色の表示が無いのだ。

モンスターに襲われたのだろうか、それともディプレイの初期不良が出たかも、と瑠璃は思った。

捜索範囲を3キロから5キロ10キロと広範囲に広げた事で、やっと人を見つけることが出来た。

だが、その方角と距離を班長達に伝える手段に苦労する。

いっその事、神のお告げを使おうかと思うが、他の手段を考えるのが心底面倒と瑠璃は思う。

なんと言っても、リンツ隊長がクビになるまでの猶予が、あと4日しかないから急ぐのだが、神様になった瑠璃にも思うように事が運ばないのだ。

何事か異常を察したのか、アルト班長は目を覚まし、他の班長もそれにつられて目を覚ました。

微かについている車輪の跡が続く方向を指し、瑠璃はその直感とでも言うように、「アランさんは今私たちがいる草地から、この先の草地から森に変わるあたりに居ると思います」、と宣言した。

一同は、森に入られると探すのが厄介になるので、瑠璃の言う森林の境目まで今から行き、この地点に戻るように探すと言う案に異論は出ず凡そ5キロほど先を目指すことにする。


途中何度か馬車の移動が難しいところに出くわし、その度に遠回りし、明け方近くに野宿のものと思われる、明かりを見つける事ができた。

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