襲撃と予兆
瑠璃はネットワークでゴズに連絡を取り、ジュークをやっつけに行くと知らせ、こちらの準備が出来ると知らせると、ゴズに告げる。
レストランでは、何時もの席に今夜はガフが案内してくれた。
何時もの様に、瑠璃が使う席だけが空いていて、それはガフをはじめ食事客が何を期待しているのかが、瑠璃には良く分りルイネに席を引いてもらうという、ルイネのショーに期待しているのだ。
ルイネのショーが終わると食事客皆が満足し、それを観たエレンが苦笑するが、エレンが来るまでこれが食事前の儀式の様なものだったと瑠璃から聞かされ、エレンは諦めた。
とてもルイネさんのように自然に私には出来ないと思うし、ますますエレンはルイネを尊敬する事にした。
瑠璃はコース料理ではないが、スペシャルメニューの中からジンガロがデザートに付くステーキセットを選んだ。
「エレンさん、ここのデザートのジンガロに興味があると思いまして選んだのですが、どの様なジンガロが出てくるか楽しみですね」と、瑠璃がほほ笑む。
食事が終わり興味があったデザートのジンガロの皿をガフが運んできたが、これを見たエレンが言う。
「森のオアシス亭のものより、こちらの方がきれいに盛り付けられていますね。
茶色のジンガロに添えてあるハーブの緑の葉がそう感じさせるのでしょうか」と。
ジンガロを食べ終わりエレンは、ここのが母の作る味によく似ていますが、それでも母のよりもこちらがはるかに美味しいし、これまでジンガロがあまり好きでなかったのが、今は大好きになり本当に不思議だと話すのだ。
「それは仕方ありませんよ。
人は成長と共に味覚も変化が出てきますから、好きな物がまた一つ増えたと思いましょう」と、瑠璃が言うがそのとおりだとエレンもルイネも思う。
瑠璃は今夜も美味しかったとガフに告げ、自室に戻りアースンに様子を聞いてみた。
アースンは準備は出来ていると言い、ゴズにアースンの執務室で落ち合おうと連絡し、瑠璃達はアースンの執務室へ転移した。
アースンを前にして瑠璃が宣言する。
「アースンにこれ以上の身内の処刑はさせたくないのと、ジュークとタニスンは神である私に逆らったので、その罪は万死に値すると言い、アースンは関わらないようにしてほしい。
しかし、デクシーとセレスの報告書で知る貴族は、アースンが思う様にやって欲しい」と、宣言した。
「私にその様な配慮は無用ですが、このアースン、ルリ様の配慮に感謝します。
本来は私が自らの手で解決しなければならない案件に、ルリ様の御手を煩わせることのふがいなさを恥じ入ります」
アースン、それは良いのですよ。
アースンは私の大切な使徒ですから、その使徒に手を出す事がすなわち私に逆らったという事ですから、どれ程の大罪か思い知るでしょう。
ゴズが来ますね、と瑠璃が話すとゴズが転移して現れた。
「JD、私たちは行ってきますが、その間邸の警護をよろしく頼みますよ」
「お任せください領主様」
そうでした、セレスさんを今回は同行させますから、諜報本部へ寄って行きましょう。
「諜報本部?それは良いですね。
今度から、諜報本部もしくは本部と呼ぶようにしましょう。
何時までも、あそことかあれでは締まりませんから、ルリ様の諜報本部に私は賛成です」
その本部に行ってみると、セレスは衛兵の服装の下に簡単な鎧を装着しているのが、瑠璃には良く分った。
これが、セレスが率いた6班の出動装備と瑠璃は思った。
そして、その場にいるセレスの部下は、気安くセレス部長に会いに来る少女と一緒にいるのが、領主様と知って驚ろきその場で跪くのだ。
それを観たアースンが、皆さんよろしいのですよ、仕事をしてくださいと、アースンがセレスの部下に声を掛ける。
「セレスさん大丈夫ですよ。
そうでしたね、服装について言いませんでしたが、普通のこれまでと同様の私服で充分ですよ。
セレスさんの身はゴズに任せるつもりですから、ゴズが守ってくれますから安心してください。
ゴズはとっても強いですから安心してください」
ゴズが金色の瞳でセレスを見つめ、私にお任せくださいと、宣言する。
瑠璃の言葉を聞き安心するセレスなのだが、部下がそんなセレスに、おぉーと声を掛ける。
ゴズは凡その女性を魅了する力を最近は手に入れたようで、男でも何か感じるところがあるようだ。
セレスはこの前の班の解体宣言の時、班員の刺すような視線に困惑したが、あれが演技と分かっていても、やはり一抹の不安があった。
それが今の部下から掛けられる言葉にセレスは本当に安心でき、この仕事に万進できると感じられた。
セレスさん、あの執事も連れていきましょう。
一応取引をしたのですからね。
その結果が、執事の思うとおりとは限りませんし、私は逆と思いますから。
セレスは部下に執事をここへ連れて来るよう指示を出し、領主様とリンツ隊長に出す報告書も急ぐよう指示を出すと、セレスに笑顔で答える部下にセレスは満足する。
そんな部下の一人が、今夜中には報告書は仕上げますから、部長は忙しいでしょうがチェックをお願いしますと、要求する頼りになる部下だ。
猿ぐつわに両手を後ろ手に手枷を嵌められた執事を連れ、瑠璃は転移しジュークの邸の前に来た。
今までは直に執務室に転移するが、今回は少し違い、今は邸の前で何をするかというと、瑠璃はジューク邸を強力な結界で覆った。
それは、誰一人逃さないもので、この結界内は転移石を使う転移陣も無効にするものだと、アースンとセレスに説明した。
「誰も逃がさないよう準備をしましたから、これからジュークの居る執務室へ行きましょう。
ゴズはセレスを守ってくださいね。
人手が要るようなら私が対応しますから、それから、エレンは私が許可を出すまで突撃は絶対に控えてくださいね。
よろしいですね」とエレンに念をした。
ルイネには私に逆らう冒険者と私兵に慈悲を掛ける必要はありませんから、徹底してやってください。
ジュークは幾ら痛めつけても構いませんが、今は殺さないでくださいね。
彼奴には、別な意味で地獄を見せてやろうと思っていますから。
アースンも同様に、ジュークは殺さないようにね。
そうそう、ゴズはゾンビの使役は許可しますから、ここは人数が多いようですから、それでは行きましょうか。
と、言う言葉と共に転移した所は、ジュークの執務室だった。
「遅くなったがどうじゃ。
今日まで震える毎日だが、それも今夜限りじゃ。
これは、其方への土産じゃ。
こ奴は儂らに協力し、良く喋ってくれたからな。
執事との約束じゃ、ジュークよ、受け取れ」と言うとゴズがジュークの前に投げた。
そして、瑠璃達を囲む私兵と冒険者を見て「ジュークよ、儂等を相手にするには、ちと私兵と冒険者が少ないと思うが、量より質とでも思ったか。
其方が思う以上にこの者たちは強いぞ」
「貴様、誰が神だとふざけるな。
丁度良い、まさに飛んで火に入る何とやらだ、そこの小賢しい小娘を始末せよ。
あ奴が領主だ、アルテン、お前の力を領主に刻んでやれ」
「領主アースン・ナルディアの名をもって皆に告げます」
と、言うアースンの宣言を前に、私兵と冒険者は一瞬怯んだ。
「ジューク・ナルディアよ、お前は今夜この時をもって冒険者ギルド総裁をクビにする。
よって取り巻きの冒険者は、この先ジュークに味方する者は、ギルド最高責任者に背くものとして私は許しはしないから、よく考えて行動するよう申し付ける」
「貴様の寝言はそこまでだ。
誰が最高責任者だと、このわし総裁が最高責任者と決まっておろうが。
冒険者はおかしな甘言に惑わされるな」とジュークが喚く。
「ジュークよ、あなた知らないふりですか、それとも本当に知らないなら教えましょう。
ギルド総裁の任命権及びギルド全権がナルディア領主にある事を。
その証拠にお前はジェイコブおじい様からギルド総裁に任命されたのであろう、この痴れ者め。
所詮ギルド総裁如きはナルディア領主の手下、私の下で大人しくしていれば、これまでの不正に目を瞑っていたかもしれませんがね。
私は領主に就いて初めにした事は、ギルドから入る税収の少なさに不思議に思い調べさせましたが、どのみちお前はサンランドの名を騙った罪で許すつもりはない」と、アースンが毅然と宣言した。
「ジュークよ、お前の頭の中にも儂の声が届いたはずじゃ。
それに、この間も伝えてやったぞ、お前を許しはしないとな。
まぁ良い、応援は来ないようなので始めようか」と瑠璃の言葉にルイネとアースンが前に出る。
瑠璃はエレンの手を握って離さない、ただし今だけだが。
ルイネはアルテンを始末してください、の瑠璃の指示でルイネがアルテンと向き合うが、勝負にならない勝負はは一瞬で終わり倒れたのはアルテンの方だ。
アルテンの片腕は見事に捥げ、急所をルイネのナイフで抉られアルテンは一瞬で死んだ。
それを見た瑠璃がエレンの手を離すと、エレンが冒険者の中に突撃していき、その強さに誰もが驚く事になる。
巧みにクナイを投げ、器用に神様が拵えた短刀と瑠璃が作ったものと2つ持ち、状況が許すと短刀を口にくわえクナイを投げてと、エレンの前ではジューク自慢の信頼するSランク冒険者等も私兵も敵ではなかった。
転移を多用するルイネとは違い移動速度は遅いが、エレンが近づき通り過ぎると冒険者は皆絶命し倒れていく。
ルイネはというと、小さな転移を繰り返し転移先でアイテムボックスの中のナイフを解放し飛ばす技を繰り返していた。
ルイネが1回転すると体中からナイフが周囲へ飛び出す、これを見た瑠璃達も冒険者らも驚愕する。
ルイネから飛び出るナイフは、前と違い今は50本は軽く超えている。
これに恐れた冒険者や私兵はルイネを恐れ逃げるが、逃げた先でエレンにやられている。
これの繰り返しなになった。
その隙を突きアースンに襲い掛かる私兵と冒険者をアースンは、一太刀で切り伏せていた。
瑠璃もゴズもセレスもエレンの強さに驚いていた。
ルイネのやっている事がセレスには何が起こったのか理解できなかったが、エレンの強さは一般人のセレスにも良く分ったから、神の使徒についてその意味がセレスにはよく理解できた。
「貴様らは何者だ、化け物め。
こっちへ来るな」とジュークが頼りにしたのもがいなくなった空間に向かって怒鳴っている。
「どうした、早く次を寄こさないとお前の番が来るぞ。
ルイネさんとゴズは手分けして、邸の部屋と庭に潜む者の始末してください。。
セレスは私が見ていますからと、言いセレスの全身に強力な防御結界を張った。
アースンとエレンは死体の始末をお願いします」と、瑠璃が指示を出すとルイネとゴズが執務室から転移して行った。
アースンとエレンの強さに私は本当の嬉しいですと、瑠璃がほほ笑んでいると、ジュークが喚き散らす。
「誰が喋って良いと許可を出した。
あぁ、黙っとれぇやぁ」と、瑠璃が激怒した。
普段は手をかざして意識を奪うところを、手をかざして意識を奪う、することは同じなのだが、ジュークは瑠璃の激怒で口から泡を吹きもがき苦しみ気絶した。
突然瑠璃から金色をした陽炎の様なものが立ち昇り、その場に残ったアースンにエレンとセレスは冷や汗が背を流れるのが良く分るのと同時に、周りの温度が一気に下がったようで、鳥肌が出ていた。
特にエレンとアースンの場合は、物理無効を持っているのだが不思議だ。
瑠璃が執事の方へ向き直り、「どうした。
取引でお前の要望でジュークに会わせてやったが、セレスや儂らに感謝してくれてもいいのだがな。
一緒に捕まえたエバンスは、この先情報屋として使い道はあるが、領主をはじめとして、仕える主を簡単に裏切る様な輩に用はないから、ジュークと一緒にお前には死んでもらうと、瑠璃が言う。
「ルリ様、ナルディア領の公金を横領した罪で私は公開処刑にしたいのですが、許してもらえませんか」と、アースンが聞いてくる。
「そうですね、ではこの男はアースンに任せましょう」
と、瑠璃が言うと執事を瑠璃が気絶させた。
セレスさんは初めての経験と思いますが如何ですか。
と、セレスの感想を聞こうとするが、セレスは黙ったままで小刻みに震えていた。
私はルリ様から発せられている金色をした陽炎の様なものが観え、今のセレスに影響していると思います、とアースンが言う。
あぁそういう事ですか、とセレスに手をかざすとセレスがまともになった様に感じた。
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