プロローグ1
上空から落ちるのか、それとも地下から湧き出たのか、突然目の前が眩しくなり目を閉じた。
閉じた目を開けると、どこか知らない城壁都市が前方に見えていた。
結構高い丘の上に城があり麓には木々が生い茂る中に素敵な町が広がる、イメージとしてはイタリアの地方都市によくみられる風景と何処かよく似ている。
ここは何処かと言うか、この世界は私が任された世界であり、そう私はこの知らない世界の神になったのだから。
長くなったが、ことの発端はこんな感じだったと思う。
一体誰に対して説明をするのか分からないが、私の事を知って欲しくてはじめに話してみた。
私、橘瑠璃は地方の短大を卒業して、大手旅行会社に親のコネで就職できた。
私の希望は何処にでもある普通の会社だったが、入社試験は受ける会社受ける会社で悉く断られ、何処にも就職できない私は親の指令で故郷の山陰の山奥に帰ってきた。
私の母、貴子もバブル崩壊の影響下の就職氷河期世代で、許嫁であった父の下に嫁に来たと聞いたことがあった。
親の指令と言うのは、就職が決まらなければ「お前は嫁に行ってもらう、嫁ぎ先は既に決まっている」と言う、就職と引き換えの条件がそれであった。
本当のところは帰りたくなかったが、世の中は全てとは思はないが大部分が金次第、その金が親から断たれると仕方がなかったのもあるが、こうも私を社会が受け入れてくれないなら、いっそ結婚も有りかという諦めもあった。
私の家はとんでもない山奥にあり、公共交通の手段はバスだけ。
そのバスは朝昼夕の3便だけで、高校2年生の時に夏休みを利用して行われる瑠璃の通う高校伝統行事の家庭訪問で、担任の先生が平家の落人が先祖と勘違いしていた。
その勘違いは全くの間違いではなく、平家よりも前の足利幕府の後期に私の家は大名で、歴史の教科書にはあまり出てこないが山陰地方を一時は広く治めていたのだ。
その先祖が何の気まぐれかある時、山陽地方の豪族に戦を仕掛け数にものをいわせ、四倍という圧倒的有利な状況でその豪族の嫡男を見逃してやったとか。
結果、勝てる戦を途中で止め領地をそのままに引き返したことが原因で、その冬に壮絶なお家騒動が勃発し、以来国主であった本家橘家は山奥へ追いやられ出られないままに現在に至っている。
お家騒動時に何故か晴友率いる精鋭百騎、皆が一騎当千の強者揃いだったが、何故か一騎当千の強者が揃って不調で、戦に勝ったのは弟の晴親のほうであった。
橘家の家督一切を奪い、その後はと言うと、兄晴友が見逃したその山陽地方の豪族に2年後の夏に攻め入り、その結果は大敗を喫して逃げ帰り、弟の晴親一族は城で討ち死にした者や島に追い詰められ最後は根絶やしにされた。
私の方の橘家はその豪族に見逃され、その辺の事情は分からないが税も兵役もその後明治時代に至るまで免除されている、と我が家に残る古文書に記されている。
私の上に4歳離れた兄がいて、今はとある県議の秘書をやっているが、数年後には国政にと既に決まっている。
祖父母は既に亡、父と母は家で悠々自適な毎日を過ごしている。
仕事をしないでなぜ食っていくだけの金があるのか、高校を卒業するまで不思議に思っていたが、私の家橘家は結構県や国に影響力があるようだ。
間違い、元橘家の家臣だった家ほうと言うのが正しい、と思う。
他にも先祖の気まぐれで、先の中途半端な戦の帰りに捨てられ朽ち果てる寸前の小さな社を豪華に改築して、村人に祭事を頼んだのが縁で、その後は今の様に交通は発達しているわけではないが、全国から参詣を集める有名な神社になったそうだ。
特に明治以降は有力政治家やその業界を代表する会社社長などは、神社参詣の後何故か我が家まで来るのだ。
何時の頃からか今は父に会って帰るのが恒例になっているように感じた。
おかげで数戸しかない地区の人からは、立派な道が出来て感謝されているのは私も知っている。
それとは別に、携帯とかスマホは今もサービス圏外のままだ。
私としてはスマホのサービス圏外の方を解決して欲しいと父に頼んだが、父はあんなものは生活するうえで無くても困らない、と以前帰省した時話し取りあってくれなかった。
初めての投稿で緊張しております。
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