幕間①
これは、霄と氷空が転送してきた後の、着替えをしている氷空の話。
脱衣所——
「(どうしよう。男の人を家に呼んだのって初めてだから、作法とか分からない……!)」
氷空は混乱していた。
「(勢いあまってまずは着替えなんて言っちゃったけど、本当に良かったのかな。実は着替えるときは夜に二人で………その…………あんなことや、そんなことをするためにする作法……だったりして………。いやいや、まさかそんなこと……。だってただ着替えるだけなんだから。うん、きっと私の考えすぎね。そうとしか思えない。………………でも、もし霄くんがそんなことを思ってたら……………………。)」
氷空はとあることを妄想した。
「~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!!」
無理もない。
誰が見ても美しいと思う氷空の容姿。
端正な顔立ち。華奢だが出ているところは出ている身体。銀の長い髪が、彼女の美しさに拍車をかけている。
彼女に見惚れたまま壁にぶつかった人が何人いるだろうか。
そんな氷空は自身の能力のこともあり、人とまともに話したことがあまりない。
つまり、自身の魅力に気付いていないのだ。
あふれんばかりの美貌の暴力を他人にぶつけておいて、それを自覚していない。
まさに純粋そのもの。
これを汚そうという者がいるだろうか。いやいない。
主に少女漫画で手に入れた知識で妄想できるものと言えばせいぜいキスかその程度だろう。
現に氷空は今、下着姿で唇を押さえている。
なんと可愛らしいのだろう。
幸い、霄は紛れもない紳士だ。(変な意味ではなく)
氷空に手を出す者がいれば容赦はしないだろう。
「(霄くんがそんなことをするはずないよね。うん。大丈夫。)」
氷空は汗で濡れていた下着を脱ぎ、タオルで身体を軽く拭いた後、ピンクの新しい下着を着けてネグリジェに着替えた。
「おーい、氷空。脱いだ制服はどうしたらいいんだ?」
どうやら霄が脱いだ服を持ってきたようだ。
「(あ、霄くんだ。……どうかなこのネグリジェ。気に入ってもらえるかな。)あ、それ洗濯するから中に入って洗濯機に入れて。」
氷空は霄にこのネグリジェを見てほしいようだ。
女子力全開のこの衣装、霄の感想一つで合否が決まる。
「うん。入っていいよ。」
さあ、いざ決戦の時。
氷空よ、可憐に挑め。