表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ進行中】“呪われた公爵令嬢”と呼ばれた私が自分の生きる道を見つけました!  作者: 鳴宮野々花@書籍4作品発売中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/64

最終話. 守っていく(※sideアヴァン)

「…………ふん」


 レナトが俺のもとへ持ってきたその手紙を一通り読み終えると、俺は鼻で笑ってそれを破り捨てた。

 リアは知らない。あの女からこうして何度も何度もしつこくおねだりの手紙が来ていることを。届いたらリアには知らせず、俺のもとへ直接持ってくるようにと、侍従たちに言ってある。

 面白いほど次々と報いを受けているようじゃないか。神は見ているのだろう。リアを苦しめ続けてきた女、これくらいは当然だ。もっともっと苦しめばいい。

 俺はいまだに、あの女がリアの顔に傷をつけたことも執念深く恨んでいた。最後までリアには絶対に手紙のことは言わないつもりだ。


「……?」


 ふと気がつくと、俺にこれを持ってきたレナトの姿がない。


「……チッ。また勝手に行きやがったな、あいつめ」



  ◇ ◇ ◇




「わお! 妃殿下は本当に器用ですね~。すごいなー。さすがは元お針子さん」

「ふふ。褒めてもらえて嬉しいわ。ありがとう」


(……やはりな)


 王妃教育の合間の休憩時間に私室に戻っていたリアのところへ、またレナトが勝手に押しかけていた。いつの間にやらすっかりリアに懐いている。本当に犬なんじゃないのかこいつは。


「リアの邪魔をするな、レナト。勝手に俺のそばを離れて何をしている」

「あれ? 殿下。いや、殿下が()()()()()をお読みでしたので、ちょっと席を外した方がいいのかな~と。妃殿下のご様子を見がてら」

「ふふ」


 純白のドレスを丁寧に縫いながら、リアが俺たちのやり取りを見て微笑む。その姿はさながら女神のようだ。


「……美しいな、リア」


 ドレスもだが、お前も。


「ありがとうございます。もうすぐ出来上がりますわ」

「こんなにも可憐で美しいドレスがお似合いなんて……妃殿下の妹君もきっと素晴らしく麗しいお方だったんでしょうねぇ」

「ふふ。ええ。私など比べものにもならないほど、とても可憐で可愛くて……天使のようでしたのよ。誰もがあの子に魅了されていたわ」

「……お前こそ、」

「ええ~妃殿下だってとてもお美しいですよ。もっとご自分に自信を持ってください! この国の民は皆妃殿下にメロメロですよ」


 ……何故お前が先に褒める。


「ま、まぁ……。……ありがとう」


 頬を染めるな、リア。そんな顔をするのは俺の前だけでいい。


「……仕上がったらどうするつもりなのだ、そのドレスは」


 せっかくリアが楽しそうに過ごしているところに水を差したくはない。大人気ない苛立ちをぐっと我慢し、俺はそう尋ねた。


「……できれば、これはこのまま私の手元に置いておきたいのです。妹のために作ったドレスですので、誰かに着てもらうつもりはありません。ただこれを見ながら、時折あの子のことを思い出したいのです。……お許しいただけますか?」


 上目遣いで俺にそう伺いを立てるリアが可愛くて、ついだらしない顔になってしまう。


「当然だ。お前がそうしたいのなら、好きにするといい。妹君のドレスのために、専用の衣装ケースを作らせよう。いつでもお前が眺めて楽しめるように、ガラス製のものを。部屋に飾っておくといい」

「……っ! ありがとうございます、殿下」


 リアが瞳を潤ませ、俺を見上げながら頬を染める。その顔を見るだけで、俺の心は満たされる。

 じゃあサイズを計らなきゃですねー、などと言いながらレナトはリアの侍女たちと相談を始めた。なぜお前が出しゃばる。侍女たちだけでよかろう。

 リアは大切そうにドレスをふわりと抱える。

 真っ白で軽やかな上質の生地。それらを幾重にも重ねた裾は、美しく波打っている。シルクのドレープも、銀糸で縫われた細やかな刺繍も、オーガンジー素材の花の飾りも全て、リアがたった一人で何ヶ月もかけて作ってきたものだ。どれほど妹君のことを愛しているのかが伝わってくる。


「フランシス……、これはあなただけのドレスよ。見てくれているかしら……」

「……きっと喜んでいる」

「……ええ」


 リアの妹君を一度も見たことがない俺でも、このドレスを着てはしゃいでいるその姿が目に浮かぶような気がした。


『すごく素敵! 嬉しいわ、お姉さま。ありがとう!』


 俺はリアの隣に腰かけ、その柔らかな頬にそっと口づけた。


「お前の大切な妹君が安心して見ていられるように、人生をかけて守っていく。俺を信じてついてきてくれ、リア」

「……はい、殿下。どこまでもあなたのおそばに。それが私の選んだ、生きる道ですので」


 その美しい笑顔に見とれながら、俺は最愛の妻とともに歩んでいくこれからの人生に、思いを馳せたのだった────。






      ーーーーー end ーーーーー









 最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございました。


 面白かったよ!と思っていただけましたら、ぜひブックマークしていただいたり、下の☆☆☆☆☆を押していただけますと、この上ない創作の励みになります。

 よろしくお願いいたします(*^^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ