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アンゴルモアの皇女と創る平和  作者: 須田原道則


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005

「おーい? 咲? 大丈夫か? 熱に当てられたか?」


 遠くで声が聞こえていた。野太い声だ、さっきまで思い出していたアンリの声とは違い、おっさんの声だ。


「あ、いえ大丈夫ですよ」


 ハッと気がついて不安げにしている御影さんに自分の安否を告げる。だけど正直頭が少し痛い。


「そうか、それならいいんだが、ほら、ゲート開けたぞ」

「ありがとうございます御影さん。僕は御影さんの勘を信じますよ」

「そうか、ありがとな」

「いえいえ、では」


 礼を言ってから、会釈をして僕とアンリはゲートの方へ歩き出す。だけどアンリは僕の手を離して御影さんの元へ小走りで寄って行った。


「ん? どうした? お別れの挨拶かい?」


 御影さんの気さくな質問にアンリは何も答えず、握っている右手を前に差し出す。


 何をするのか立ち止まって見ていたのだけど、アンリの小さな掌から一つの花形のブローチが差し出されていた。


 あいつまた僕の作ったものを勝手に持ち出したな。


 商品を勝手に持ち出し、このご時世に無償であげるなどお人好しにも程がある。


 叱ってやろうと、歩み出した時、御影さんの顔が眼に釘付けになった。御影さんの表情は今にも泣きそうだった。


「これ、あげる」


 アンリはその顔が予想通りの顔なのか、それともただ単に興味が無いだけなのか無邪気に発言した。


「お前、一体これをどこで」


 御影さんは変わらぬ表情でアンリに訊ねる。


「あげる」


 それでもなお、アンリは手を差し出して同じ言葉を発するだけである。


「御影さん、それ知ってるんですか?」


 状況が飲めない僕は開いたゲートから離れて、再び御影さんの元に寄った。


「知ってるも何も、これは俺の娘のだ。それをどうしてお前さんが」


 アンリからブローチを受け取り、涙を噛みしめた声で御影さんは言った。そのブローチはてっきり僕が作ったものだと思っていたけど、アンリがどこからか拾ってきたものだった。


 しかもそれは御影さんの娘さんのものだった。一体アンリはどういう経緯で拾ってきたのだろうか。


「約束した、これ渡すって」

「約束? 芽衣とか? いつだ! いつ会ったんだ!」


 御影さんは目の色を変えて、大きな手でアンリの肩を掴みユラユラと揺らす。


「ちょっと御影さん落ち着いて、アンリがムチ打ちになっちゃいますって」


 僕は静止させるために白手袋のまま、御影さんの二の腕を掴み、アンリを揺らすのを止める。御影さんは予想外の僕の力に驚いたのか、それとも自分がしていることに罪悪感を持ったのか、我に返った。


「す、すまねえ」

「それ、娘さんの物なんですよね?」

「あぁそうだ、これは娘がお揃いでくれたプレゼントだ。お前には話したよな、娘がどうなったかは」

「はい」


 御影さんは楽しかった頃を思い出しているのだろう、それを辛い過去と言うのは余りにも酷だろう。僕にとっては過去とは辛いものだけど、御影さんにとっては楽しかった過去なのだ。


「でもアンリいつそんな約束したんだ?」

「アースクラッシュの日」


 それもそうだろう、なんて言ったってアンリはアースクラッシュの日にこの地球に来たのだし、御影さんの妻子はアースクラッシュの日に亡くなっているのだから。


 だとすれば、もしかしてあの子が御影さんの子なのか。


 僕の一年前の記憶が再び蘇ろうとしている、だけど急激な痛みに額を抑え、膝から崩れ落ちる。さっきの頭の痛みとは全然違う。頭が割れそうだ、脳に大きな針を入れられたような痛みがゆっくりと内部へと伝わって行く。


「おい! 大丈夫か! 咲!」


 今日何度目の御影さんの心配性が見れるのだろうか、僕は気楽なことを思いながら、痛みを抑えた声で御影さんに答える。


「だい、じょうぶ」

「どう見ても大丈夫じゃねぇだろ! 待ってろ、今救護呼ぶからな!」


 御影さんは急いで検問所の中にある電話を手に取って、ゲートの中にいる救護班と連絡をしていた。


 ふと額を抑えながらアンリを見ると、彼女はゲートの方を向いていた。


 何かあるのかと痛みに耐えて振り向いてみた。


 だけど何もなく、ただゲートから東京へ続く道が見えて、その奥から白い服を着た人達が担架を持って走って来ていた。


 あの人達が救護班だろう、お早い到着だことで。


 視界は徐々に暗くなって行き、最後には柔らかいものに当たって記憶は途切れてしまった。

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