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アンゴルモアの皇女と創る平和  作者: 須田原道則


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エピローグ

 本日の夕食はいつかの約束の品マンボー茄子。もとい麻婆茄子を作っているのだ。


 アンリは今日の新聞の大きな一面を読んで、料理が出来上がるのをソファーの上で待っている。


 新聞の一面は確か、女優のスキャンダルだったと思う。僕達が置いて行った死体は綺麗跡形なく消えていたようだった。一応新聞の小さな見出しに教会での不審火と書かれていた気がする。思った通り、改竄されていた。


 この新聞、僕が態々朝早く、復興都市の外で売られているのを高値で買ってきたのだ。なのでアンリより先に読んで内容は知りえている。


 その記事がなくてもアンリは本を読む事が好きだから、偶に持って帰って来る新聞ほしさに、尻尾を振りながらご主人様のおかえりを待つ犬のかのように擦り寄って来る。それがまた愛玩動物のようで可愛いのである。


 僕達はいつもと変わらず平和に暮らしている。


 そう平和だ。


 復興都市では事件の事など忘れて、平和に毎日が過ぎ去っている。


 それは偽りの平和。


 だけどそれが保てているならばそれでいいと妥協できるのじゃないか?


「咲、まだかー?」


 アンリがソファーで顔の半分を隠してつまらなそうな目をして、台所に居る僕を小動物のように見て来ている。今すぐ作る手を止めて、髪の毛をわしゃわしゃと撫でてやりたい気分になるが、もうちょっとで完成なので抑えておこう。


「もうちょっとだから」


 僕はそんな平和は嫌だね。


 世間が平和と認めても、僕の心が平和じゃない。


 人の心が平和じゃなきゃ、世界が平和なんて到底言えない。


「ん? 誰か来たぞ?」


 アンリがそう言った瞬間に、家の扉が二、三回ノックされる。滅多に僕達の家、と言うか住んでいる場所には誰も来ないはずなのにな。


 火を止めて、玄関の扉の前まで行って開ける。ついでにこの家は電気、ガス、水道と言ったものは全て通っている。不正ではなくちゃんと支払っている。不正なのはこの家を用意した南霧さんであろうな。


 開けると、そこには芽衣ちゃんが大きな荷物を背中に背負って立っていた。


「こんにちは!」


 芽衣ちゃんは元気よく挨拶する。


「こんにちは、今日は一体どうしたの? そんな大きな荷物を持って」


 元気な挨拶に返してから、疑問に思ったことを尋ねると、芽衣ちゃんはきょとんとしてから、奥にいるアンリを見つめる。その後になるほどなと納得した顔をした。


 状況が読めないのだが。


「多分南霧さんからお聞きになってないと思うんですけど、私、今日からここにお世話になることになりましてですね。引っ越してきました! よろしくお願いします!」


 芽衣ちゃんは笑顔で頭を下げる。


 確かにだ、南霧さんは私に任せろと言っていたな。だけどこんな男と少女が暮らす中に同い年の女子を一緒に住ませると誰が思うのだろうか。誰も思わない。


 返事に戸惑い、アンリを見ると、しししと笑っていた。あいつは知っていたんだ今日ここに同居人が増えるってことが。


 いっつも僕はしてやられる側だな。ちくしょう。


 アンリを一瞥して芽衣ちゃんの方を向く。芽衣ちゃん頭を下げ終えて、こちらに笑顔をくれていた。


「よろしくね」


 僕は右手を差し出す。


「はい!」


 芽衣ちゃんも右手を出して僕と握手する。


 あの時掴めなかった手を僕は再び掴んだ。もう絶対に約束は破らないし、守ってみせる。心の中で御影さんに強く誓った。


「それじゃあ、今日はマンボー茄子パーチーだー!」


 アンリが楽しそうに手を上げる。


 結局、こうして誰かと一緒にいる時間があればいいんだ。


 そうして平穏な時間を共有すれば、人々は平和になれるはずさ。その為にも僕は侵略者を追い続ける。真の平和を訪れさせてみせる。それが御影さんとの約束だもの。


「あ、私手伝いますよ!」


 芽衣ちゃんが髪を結びあげて、上着を脱いで机に置いてから、大きな荷物の中からエプロンを出した。


「そう? じゃあ手伝ってもらうよ、ありがとう」

「いえいえ、これからは腕を揮いますよ」


 芽衣ちゃんの屈託のない笑顔は見ていて心が穏やかになった。


 机の上には一つのペンダントが上着の上へ大事そうに置いてあった。

 

 そのペンダントの中では家族の笑顔が平和の象徴のように輝いていた。


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