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アンゴルモアの皇女と創る平和  作者: 須田原道則


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001

 当時を騒がせた流星群、アースクラッシュから早一年、地球はまた平和と言う言葉を取り戻しつつある。


 アースクラッシュの被害は各地では小規模から大規模のものがあるらしく。政府情報機関や発電施設やらが倒壊する場所や、インフラ設備が破壊され、食料困難に陥っている国も数少なくはない。そんな中選ばれた無能な富裕層は、生き残った街を囲い、のうのうと贅沢と仮初の平和を自分達だけで味わっている。


 諸国は一年でこの格式を変えてみせると大口を叩いていたが、一年で何も進歩はせず、駄目な国とレッテルを貼ってもおかしくはないくらい時間が過ぎただけであった。


 今もブラウン管テレビに映っている男が現状の政治の在り方に対して激しく反発し、抗議している。毎週毎週顔を赤くしてご苦労様なことだ、その声が世界を動かしている人物達の心に届けと僕は願っているよ。


 テレビのリモコンを手に持ち、ため息交じりに電源ボタンを押す。点いていたテレビ画面は音を立てて切れ、部屋に静電気の音だけが短く響いた。


 その音が聞こえなくなる前に黒い座り心地の良い革のソファーから立ち上がり、窓の前まで行き、明るい外を眺める。外には崩れた家やビルが処理され一か所にまとめられて高さ三メートル長さ百メートルくらいの横長の壁になっている。


 周りに民家はあったが、廃れ、緑が生い茂った廃墟だらけになってしまっているものもあるが、そんな惨状でも、雨風が凌げれば最低限なので、まだ誰かが住んでいるところもあったりもする。しかしそれが以前の住人だとは限らない。


 ここは一年前までは都会と呼ばれていた街だった場所だが、今ではド田舎もしくは秘境と言える方が正しい。この場所には決して裕福な人は寄りつかない。それは何故かと言われると簡単である。一般人が森の中にひっそりと建つ廃墟に入りたがるだろうか? 答えはノーだ。好奇心旺盛ならば入ることはあるけど、そこに何が住み着いていて、何をされても自己責任だ。そんな危険を冒してまで裕福な人間は来ない。


 アースクラッシュ以降市民権を得られていない人間や、都心部へと住まうお金を持っていない人間達が住まう場所。それがこの場所だ。


 アースクラッシュはただ世界各地を崩壊に陥れるために起きた、天災ではない。アースクラッシュは人間を殲滅するために送られたものを輸送する為の人災なのだ。人災と言っても宇宙人だが。


 そのものは小さな風穴を開ける為に、星や隕石と呼称される物体の中に宿り、対象と入れ替わる為に、重要な器官を支配することで、その者の精神を支配し、体も支配することができるのだ。


 精神を支配することで、その者の力を未知の力ザイガ。我々人間の力で呼ぶと気力や魔術に近いものであり、そのザイガで混沌を用いて、文明を破壊し、地球に住まう人類を滅ぼし、新人類にとって代わる目的がある。


 この一年でザイガを使用した人間紛いのものが犯罪を起こした件数は一億件は超える。その中で殺人を犯したのが半数以上。だがこの犯罪は異常でも何でもなく、猟奇的殺人事件や、テロ組織活動として扱われ、刑事民事裁判もしっかりと行われ、刑が軽い場合は再び世に解き放たれる。人間紛いのものは狡猾にも人間に化け、ゆっくりと人間を減らしているのだ。


 着実に侵略行為が行われている中、彼らには予想外の出来事が一つ。それは稀に精神を支配できず、逆に力を支配されるという異形の人間がいる。その人間はその事実を知り、ザイガを持つ人間紛いの者を裏で倒し、奴らの侵略を抑えている。


 それが僕、白銀しろがねしょうだ。


「咲、飯!」


 唐突に八畳の部屋に少女の甲高い声が響き渡る。僕は声の主の方を向くために窓の外から目線を外して、億劫な気持で後ろを見る。そこには先程僕が座っていた黒いソファーに見た目小学生の低学年の幼い体つきをした銀色に近い白髪の少女が、論外と書かれた大きめのTシャツだけを着て跳ねていた。


「今日は何が食べたい?」


 僕は少女に尋ねる。少女は「うーん」と顎に指を当てて少々考えた後に思いついたかのように万歳をし。


「茄子を使った食べ物! あれだ! マンボー茄子!」

「はいはい、じゃあ後で茄子を買いに行くから、それまでこれで我慢してね」


 僕は冷蔵庫から僕が口に付けた水を取り出して、彼女に渡す。


「我慢する!」


 そう言って少女は水を受け取りソファーの前にあるテーブルの上に置いてある本、人間失格を手に取り読みだす。少女にしては中々ハードな本を読む奴だ。


 なぜ僕はこんな少女と廃墟に囲まれた場所で生活しているとなると、アースクラッシュがあった日の一年前に遡ることになる。


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