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アンゴルモアの皇女と創る平和  作者: 須田原道則


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017

 迸る熱がまだ余熱ではなく、熱として残っている中、僕は目の前で絶命した芽衣ちゃんの体の前で立ちつくしていた。アンリも手をずっと握りながら謝罪の言葉を投げていた。アンリは何も悪くない、一瞬僕が覚醒をたじろいだから間に合わなかった、それだけだ。


「芽衣よ、お主の事は決して忘れん。例えこの体が小さくなろうとも、お主との約束は必ず遂行させてみせる、安心して眠れ」


 アンリはそう言って立ち上がり、彼女の体を軽々とお姫様だっこして、母親の死体の横に置いてから、どこに生えていたのかはしらないけど、一輪の花を胸に添えて僕の元へ戻って来た。


「して、咲よ、もう第二波が来てしまった。さっさと移動してしまおう」


 アンリはもう出会った時と同じような顔をして、何事も無かったように僕と接してくる。


「ねぇアンリ、どうしてそんなに平然としていられるんだい? 僕達は芽衣ちゃんのお母さんとの約束を破ってしまったんだよ? 助けるって言ったんだよ?」

「解っておる」


 この質問はアンリにとっては酷な質問なのだろう。自分は異星人でしかも何にでもできる、命が尽きるまでは蘇生ができる。そんな大それた力を持っていたからこそ、タカを括った。それが一瞬の慢心と言うものだ。


「じゃがの、お主のように、今をウジウジするのはどうかと思うの、約束は守れなかった。だから謝った、悲しみと言う感情を芽衣に注いだ。私は今できることを目一杯した。それで次に出来ることは何だ? 生き残った私達がやることはなんだ?」


 僕は黙っていた、答えないとみてアンリは続ける。


「生きることじゃろ? 死んだ人間を心に宿しながら生きながらえることじゃろ? そうして先に死んだ者に礼儀を示すんじゃろうが。お主はそんなことも理解せずとおずおずと生きてきておったのか?」


 知っている。子供の頃に大人から習う大切な死生観のことだ。物心ついたときに根付いている、当たり前のことだ。死んだ人間に手を合わせる。十字を切る。敬礼する。祈る。色々あるけど、それは死んだ人に礼儀や尊敬、弔いの気持ちを持ってすること。


 僕はまた、それさえせずに突っ立っているだけだ。


 受け止めがたいのだろう。今の今まで元気に動いていた人間が、人形のようにこときれて動かなくなったことに。そうして大きな壁の前で立ち止っている、避けようのない横幅の広い壁に阻まれてしまっている。


 でも壁とは向かい合わないといけない。絶対だ、乗り越える、避ける、退く、壊す、立ちつくす、どれかの行動をしないといけない。僕は選ばなければならない。そうして結果が変わり未来が決まる。


 だから僕は芽衣ちゃんの側にまで行き、手を合わせた。


 約束を守れなくてごめん。守れなくてごめん。そう心の中で謝った。


「ごめん、変な質問して、僕が悪かった。とりあえず僕を殴ってもらっても良い? そうじゃないと罪悪感が纏わりついて先に進めないや」


 そうしてからアンリの方を向いて、笑顔で答える。


「そうかの、ではいくぞ」


 パチン! と殴るのではなく、彼女の可愛らしい手での平手打ちの音が河川敷一体に響いて反響した。その後はまた静かのようで、騒がしい河川敷の音に戻った。


「アンリ、ありがとう」


 僕は痛みとは違う涙を飲んでアンリに礼を言った。


「礼を言うでない、お主はようがんばった」


 そんな僕をアンリは小さい体で僕を抱きしめてくれた。


 その後、避難した場所で僕達は南霧さんや、御影さんに会うことになる。


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