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アンゴルモアの皇女と創る平和  作者: 須田原道則


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プロローグ

 平和とは真っ平らで和な世界のことを言うのだろう。日本語ではそういう漢字が充てられているのだから、簡単な解釈をするとそうなのだろう。


 だとすれば尖って出っ張ってしまった、地球のささくれのような人間という存在は、地球に対しての平和を妨げる者なのだろう。


 では人間達の語る平和とは何のなのだろうか。争いのない世界? 食料困難にならない世界? 貧富の差がない世界? 何をもって平和なのかは気になるものだ。


 全世界の人間の割合的には依然世界は平和だった。自然は豊かで、技術進歩や医療科学の発展も目に見えるほどであった。そのおかげか人間は恐怖という感情に飢えていた。


 自らが望んで恐怖に陥り、そして自業自得の言葉と共に命を落とす馬鹿な人間もいる。


 他にも、名声がほしい為に、名乗り上げ犯罪を犯し、他人に迷惑が掛かると知っていて、犯罪を犯すもの達も少なくはない。それは平和が作り上げた、悪という象徴。

 

 そんな日常を異常とは思わずに、平和と言って暮らす毎日に人々はなんら疑問も思わず、日々は過ぎっていく。いや、声を上げていた人間もいたかもしれない。でもそれは平常時には戯言にしか聞こえないのだ。


 ある日、世界のどの世地域でも流星群が見れると、全世界で話題になった。


 その流星群はとても大きく突発的なものであると評論家や研究家が述べていたが、世間の大半は小難しいことには耳を貸さなかった。それもそのはず、国からお墨付きの研究者は反対の事を言うのだから。ただただ物珍しいものが見られる。お祭り気分で、国以外の言葉に耳を貸さなかった。


 その日の日中はとてもとても暑かったのを覚えている。そのせいで流星群を見る夜は道路に熱がこもり、汗が吹き出し止まらず、飲み物を片手に少し涼しげで真っ暗な河川敷の草むらの上で座っていることにした。ここまで来るのに会ったのは母親と同年代の可愛い女の子だけだった。


 殆どの人間はよく見える屋上や、澄んだ空気の場所へと移動してしまったようだ。


 この場には一人ぼっちだ。いつ流れるのかと気になり空を見上げた。


 空は暗黒で星が一つもなかった、雲一つない空なのに真上で、何光年先の光を届けているはずの星々が姿を現さない。都会の光の影響でも一つも見えない訳がない。一等星すらも顔を覗かせないのはおかしいことだ。


 僕は酔っているのかと思い、片手に持った飲み物のラベルを見ても水だと示されている。どこにでも売っている美味しい水だ。だから酔ってはいないのは確定だ。そもそも僕は未成年だ。それに視力は両目とも二で、無数にある星を見落とすこともない。もしも今、光を捉えることができなくなったのなら話は別だけど、ちゃんと遠くのビルの光は捉えられているので問題はなさそうだ。


 訝しげに思い、もう一度空を見上げる。


 すると黒く塗られた空に、ようやく金星のように強く光る星が一つだけ光っていた。


 やっと流星群が見られると思った矢先だった。その光が一筋の線のように横へと流れるのではなく、だんだんと大きく光の強さと大きさを増して、まるでこちらへ接近しているようだった。


 成り行きを途中まで見ていたが、不信感を覚えるようになってきていた。あれはもしかして流れているのではなく、落ちてきているんじゃないだろうか。


 現に強く光る星は昼間かと錯覚するほど光っている。隕石ではなく恒星かと勘違いするほどに、光り輝いている。今頃街中では大パニックだろう。


 この時普通なら誰もが恐怖して逃げるはずなのだろうけど、僕は逃げも隠れもしなかった。


 あの光の大きさを見て逃げられないと諦めていたのではなく、どこか心に魅かれるものがあったからだ。別に世界に終わりを求めていた訳じゃない。これは僕なりのあがきみたいなものだったのだろう。


 僕は目を瞑り両手を広げて光に包まれるのを待った。


 目を瞑ったことにより聴覚と嗅覚と触覚が研ぎ澄まされる、体全体に夏の暑さとは違う熱量が近づいてくるのが解る。周りは焦げ臭く、肌にじりじりとした痛みがはしる。


 遠くから空気を裂く地響きのような音が近づいてくる。


 目の前は真っ暗ではなく、瞼越しに眩しい程の光が溢れかえっている。ここで目を開ければ恐怖に飲みこまれてしまう。そう確信できる。


 音と光陵が大きくなってくる度に、肌に伝わる熱と痛みも大きくなる。偶にくる急な痛みに目を開けたくなるが頑固として開けたくなかった。どこか意地になっていたんだろう、いつもの日常では味わえない体験を乗り越えて、特別な存在へとなりたいという現の夢を見たかったし、これを乗り越えることでインスピレーションが得られるとも思っていた。


 僕も浮かれた一人だったんだ。


 そんな夢も長くは続かなかった。


 手に持っているペットボトル内の水がお湯に変わっている。その熱さにペットボトルをどこかへと投げ捨てた。汗も滝のように流れ出て、有酸素運動をしているかのように呼吸を乱し、肌に刺さる痛みに耐えきれなくなってくる。


 呼吸を整えるために息を大きく吸った時にドンと重低音な音と共に地響きがした。


 その後に急に涼しくなった。今までの暑さは何だったのかと思えるほどに。


 周りの環境変化を不思議に思い僕は目を開けてしまった。


 見えない恐怖に僕は撃ち負けた。


 その言葉通り僕の胸にはポッカリと風穴が空いていた。どうりで胸がスースーと心地いい訳だ。

痛みはまったくと言って無かった、だけど目の前はさっきの煌びやかな光とは真逆に黒くなっていくのだ。


 最後に見えた景色は黒のキャンパスから、流れ流れ、この世界に降り注ぐ死の流星群だった。



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