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執事は主の青い花が見たい

「ああやはり、トゥワ様の透けるような白い肌にこの深い青はよく映えますね。もっとフリルやレースを重ねようとも思いましたがよくよく考えてトゥワ様に余計な装飾など不要と思い至り、その分生地の色味にこだわってみたのですが大正解でした。肌触りの良さも鑑みて染料は天然由来のものを使用しておりますが着心地はいかがでしょうか?後ろから拝見しておりますとトゥワ様の栗色の御髪にもしっとり馴染んでおりますし間違いはないと思うのですが。そうそう御髪といえば、髪型はいかがなさいますか?おろしたままでも結い上げてもどちらもよくお似合いのことと思いますが、やはりいつもより動きのある装いですので少し纏めて流すように致しましょうか?そういえば、高い位置に切り替えがありますのでスカートが花が咲くように広がるとお針子たちが申しておりましたので、あとで外に出て回ってみられますか?」


 早い早い早い。

 早すぎて聞き取れませんよ、フリートさん。


 結構な文字数を一息で言い切ったフリートさんの笑顔を背後に感じるけれど、私の頭はまだ言われたことの半分も咀嚼できていないので、もう少し待って欲しい。


 せっかく身に着けてみたのだから今日一日はこの衣装で過ごします、と言ってフリートさんに身支度を手伝ってもらったところ、これである。


 深青色の衣装の胸の切り替え部分から垂れ下がる透かし模様が美しい白い布を、背中側で結んで形を整えてくれているフリートさんからずっと、ものすごい勢いで話しかけられているのだけれど、何を仰っているのやら。

 音としては認識できるのだが、聞いたこともない言葉が散りばめられているし、とにかく早口すぎてよく聞き取れないから、全体としては何を言っているのか分からないのだ。


 とりあえず、返事のいりそうな疑問形になっている部分だけを抜き取り、答える。


「たいそう着心地の良い衣装をありがとうございます、フリートさん。髪はできれば先日頂いた髪留めを使って、半分結い上げる髪型にして欲しいです」

「トオル様に初めてお会いした時の髪型ですね、承知致しました。少し編み込みを入れてみても?」

「仔細はフリートさんのお好きなように、どうぞ。あ、あと、花を咲かせるのは好きですが、衣装で咲かせたりしませんからね」

「この世にはない可憐な青い花を、咲かせたくはないのですか?」


 フリートさんに重ねて促されても、先先代の治世に一度だけ参加した舞踏会で壇上から見た人々が踊る様を思い出して、首を振る。

 欲を孕んだ豪奢な衣装の裾を花開くように広げて。

 フリートさんを貶めた者たちが咲かせた毒花と同じように、この美しい青を開花させたいとは、思えない。


「青い花なら、本物を咲かせて見せますよ」

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