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執事と主、陛下と塔の守人

「結婚式みたいだった……」


 猛然とこちらに向かってきたフリートさんを目にして儀式の終わりを悟ったトオルが、私が思っても言わないでおこうと決めたことをぽそりと漏らすものだから、思わず吹き出しそうになる。


 確かに、トオルとフォワード国王陛下の縁を繋ぐという点において、この儀式は結婚と近い意味があるかも知れない。それに真っ白な正装で光に包まれる幻想的な雰囲気は結婚式のようではあったけれど、未婚のフォワード国王陛下の心中やいかがなものか。


 緩む頬を抑えてトオルの隣をちらりと見れば、確かに結婚式みたいでしたね、なんて満面の笑みで答えていらっしゃるフォワード国王陛下。


 うん。なんの問題もなさそうだ。

 むしろ無邪気なトオルを目の当たりにして、別の意味で心中穏やかでない様子が窺える。分かりますよ、そのお気持ち。


 挨拶に応えられなかったことをたどたどしく謝罪するトオルの言葉を嬉しそうに受け止めるフォワード国王陛下を見ていると、ここの王族は守人に対して皆こうなるのだな、と不思議な納得感を得る。


 私も、初めて守人として名乗った三代前の国王陛下であるフリートさんのお父上には実の娘のように猫可愛がりされたし、先先代であるフリートさんの兄上からはなぜか姉のように慕われた。

 名乗りの儀の間、そばを離れることをどれほど我慢していたのかと思うほど距離を詰めてきた、先代の国王陛下であるフリートさんのことは言わずもがな、私の知る王族の中では一番守人への思いが深い御方だ。


 そんな王家の血を引く、一人っ子のフォワード国王陛下がトオルを弟のように構いたがっているのが見て取れて、二人が和気藹々としている様子には大変心が和むのだが。


 どうも様子がおかしい。


 フリートさんに手を取られ、両手の平を矯めつ眇めつ検分されながら、はてと首を捻る。


 トオルの名乗りで夜が明けていくように、紫紺の粒子が全て光の色に染まるはずだったのに。

 地下室の天井辺りは確かに光り輝き、トオルの神気を強く感じるけれど、足下の床一面はまだ私の色に染まったままだ。そのせいで、天井から溢れ落ちる光の粒が、薄色に光って見える。


 心を澄ませば、まだ私の気を辿ってくるものの存在を感じて身の内を閉ざしていくけれど、私を求める気配は止まない。

 トオルが守人としてこの地に受け入れられたことは、トオルの元へと集う光の粒子たちを見れば分かるのだが、私の周囲に依然として漂う紫紺の光。これが意味することは。


「これからは僕も、トゥワ様と一緒に守人としてこの地を守っていきますからね」


 さてどうしたものかと頭を捻っていたら、トオルがフォワード国王陛下に揚々と力強く宣言するのが聞こえてきて、私はもちろん、なぜか私を抱え上げようとしたフリートさんの動きも、ぴたりと止まった。

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