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執事は儀式を静かに見守る

 いつのまにか装着された白銀のマントに全身白一色の正装姿であるフォワード国王陛下と、塔の守人唯一の衣装にして正装たる白いローブ姿のトオル。

 真っ白な装いの二人を横に並べて対面する私もまた白いローブを纏っていて、この真っ白な地下の空間に、白装束が三人。


 これからここで、私が名乗りの儀を執り行う。


 トオルに謎の圧をかけるフリートさんを諌めて、フォワード国王陛下への伝令を頼んですぐにこの場が調ってしまったため、準備らしい準備は何もできてはいないけれど。

 意外と乗り気な西の塔の空気を感じて勝算がたったせいか、肩の力はいい感じに抜けている。

 恐らく前代未聞の名乗りの儀となるだろうが、私には一片の迷いもない。


 トオルの左手に右手を、フォワード国王陛下の右手に左手を、私の手の平と重ね合わせるように添えて、息を吸う。


「我が名は塔の守人ミナレット、トゥワ。この地を護りし者なり。私の声に応えて集え、この地に住まいし数多の神の気よ」


 張り上げた声は私の神気を帯び、この地下室の天井、つまり地上の方へと吸い込まれていく。

 この勢いなら私の声はすぐさまこの地に行き渡るだろうから、これから来るであろう森羅万象ありとあらゆるものに宿る神の気を迎え入れられるように、私は心と体を開放する。


 私との繋がりを求める声を、ここに呼び込むように。

 私という餌で惹き寄せて、この場でこの地の気にトオルをお披露目できるように。


 息を深く、吸って吐いて。また、吸って吐く。

 目を閉じて、ゆっくり二呼吸しているうちに肌が粟立ってくるのを感じる。

 空気の騒めきすらも感じて目を開けると、私の声に応えるように集まってきた紫紺の粒子が、真っ白な空間を夜明け前の空色に染めていた。


 私の神気を帯びたものたちが、こんなにも。


「集い集えて、そして迎えよ。新たなる塔の守人を」


 この地に蔓延る数多の神の気が、いまここに。


「我は新なる塔の守人ミナレット、トオル。これよりこの地を護りし西の塔の主にて、この地に安寧と平穏を与えし者なり」

「我はランダルシア国の王たる者フォワード。新なる塔の守人ミナレット、トオルの加護のもとこの地を統べる者なり」


 私の目配せでトオルが名乗りを上げ、フォワード国王陛下がそれに倣うと、二人の手に添えた私の両手から金色の淡い光が漏れ出した。


 紫紺の粒子が描いた空を明けさせる柔らかな光。

 これは、トオルの黒い瞳の奥の神気の色だ。

 そしてこれは、この地がトオルの名乗りに応えた証。


 重ねた手をそっと離して光を放てば、私の色に染まった地下室がトオルの色に塗り替えられていく。


 どうやらうまく行ったようだと安堵して、部屋の隅に控えるフリートさんを見遣れば、真顔のままでこちらに向かってきた。

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