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執事の主は西の塔に困惑顔

 これは、手こずるかもしれない。


 西の塔の領域に難なく入って目にした建造物に、私はがっくり肩を落とした。


 塔は守人の、その為人を表す。

 すなわち、塔を見ればそこに住まう守人がどのような人物であるかある程度は分かるのだが、西の塔はなんというか、世界を拒絶しているように見えた。


 まず、窓がない。 

 窓がなければ陽の光を取り入れることも出来なければ、外の様子を伺うことも出来ないというのに、自分が外から見られることはおろか、外への興味を持つことすらも拒否するような構え。

 加えて、まるで廃墟のように脆く崩れそうな石壁に取り付けられた出入り口は、鋲を打った頑丈な造りの金属製という徹底ぶり。


 ちなみに南の塔(うち)は、天の災いを観測するための大きな物見窓を最上階の周囲に巡らせているため、頭でっかちな形をしている。一見不安定に思えるかもしれないが、最上階へと繋がる硬質な塔身は螺旋を成し、かかる力を分散させているため地の災いにもびくともしない。

 どこに建っても存在感があるのに目にも馴染む白金色の外壁は、私のお気に入りだ。


 神術に頼ることなく守人の意思と想像力でその形を変えることができる塔を、私は趣味と実益を兼ねた形に改造してきたけれど、西の塔の守人は自分を閉じ込めるための場所としているように見える。


 塔の領域への侵入を簡単に許してしまうくらい神術を満足に扱うことも出来ないというのに、塔との意思の疎通は十分に図れているというあたり、守人としての素質はあると思うだが。

 外界を完全に拒否したその造りに、さてどうしたものかと頭を捻る。


「とりあえず、入ってみますか」


 人の情の機微に疎い私がいくら頭を捻ったところで、西の塔の守人の心中を慮ることなんて不可能なので、面と向かって、くれるかどうかは定かではないけれど、できれば対話することから始めたい。

 何か思うところがあるのならば聞かせて欲しいし、私が導けるものならば、次代の守人のために道筋をつけてやりたい。私がかつて、遥か昔に北の塔の守人から受けた恩を、ここで返したい。


 それに、塔の中に入って気配を探れば何か分かるかもしれないし、家探しすれば、ばったり出会えるかもしれない。


 上向きな気持ちなったところでフリートさんの両腕から飛び降り、重そうに見える扉にほんの少し神術を乗せた手で触れれば、案外軽く塔の内側へと開いた。

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