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執事と主に陛下を添えて②

 頼りなく縋るような眼差しで私とフリートさんを見つめるフォワード国王陛下。


 成人して間もなく、賢王と謳われたフリートさんから王位を継承し、初っ端の大仕事が頓挫しかけているのだ。誰かに縋りたくもなろう。

 国王陛下という肩書きがそれを許さないとしても、ここにはフリートさんと私しかいないのだから、存分に弱音を吐いていけばいい。


 ここでは王としての威厳を示す必要など、欠片もないのだから。


「フォワード国王陛下、ご安心ください。塔がそこにある限り、守人も必ず中に存在しております。我ら守人と塔は一心一体。守人が塔を残してどこかへ行くことなど、できないのですから」

「では西の塔に守人様は、いらっしゃるのですね?」


 まだ不安そうな目をして問うフォワード国王陛下を安心させるように、しっかり頷く。


「間違いなく西の塔の中に守人は在ります。それも、相当人見知りで恥ずかしがり屋の、やっかいなのが」


 新しい守人がやっかいな御仁だと断定すれば、フォワード国王陛下は肯定していいものかどうか迷うような、曖昧な笑みを溢した。

 その天色の瞳の奥を窺えば、神気の揺らぎも凪いできている。


 フォワード国王陛下はもう大丈夫だろうとひとまず息を吐き、今度は静かに気を澱ませているフリートさんの金青の瞳を見上げる。


「トゥワ様は、大丈夫なのですか?塔からこれだけ離れてしまわれて、御身体に障りはございませんか?」


 私の問いたげな視線を受けて口を開いたフリートさんは、せっかく緩めた腕に再び力を込めて、強く私を抱き込んだ。


 フリートさんが心配してくれるのも、無理はない。

 塔と守人は本来、遠く切り離せるものではない。

 塔の中でのみ時の干渉を受けない身体にとって、塔から離れるということは生命の源との別離、すなわち死に向かうことを意味する。

 だから私も以前は、辺境へ向かうにも王宮に参上するにも常に塔ごと移動しなければならなかったし、塔から出られる時間にも制限があった。

 辺境ではその限りを超えてだいぶ無茶をしてはフリートさんの手を煩わせていたというのだから、こんな風に不安がらせてしまうのは、私のせいだ。


「西の塔が顕現した今、塔の守人は過渡期にあり、私の身柄も暫定的なものとなっております。ゆえに塔から離れることもある程度は許容されているようですし、私が新たな塔の守人のために出張っていくことは我が塔の望むところでもあるようですので、この身に障りなどありません」

 

 強張るフリートさんの腕を、宥めるように撫でる。

 大丈夫、大丈夫、私はちゃんとここに在りますよと、分からせるように、何度も。ゆっくりと。


「フリートさん、私は大丈夫ですからね。西の塔の守人にはさっさと名乗りを上げてもらって、夕餉は南の塔(うち)で食べましょうね」

お読み頂きありがとうございます。

長くなった後半部分です。

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