表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/50

第24話 聖女の本性①

 三月初め、裏庭のソメイヨシノの蕾がプクッと美味しそうに膨らみを見せてきた。桃の花のピンク色が可愛い。我が家は英国式ガーデンを表に、裏庭は日本庭園風にしてある。四季折々の花木が楽しめるし気分によって、白い小石で敷き詰めらた砂紋を変える事が出来る。砂かき棒(レーキ)はミニ、中くらい、大と三つの種類があって、これらを使い分けて描いていく。枯山水のように本格的に描こうと思ったら、もっと微妙な大きさの沢山のレーキを使い分ける必要があるが、趣味の範囲の日本庭園風なのでその辺りは適当で良い。砂紋を描くには全身を使うので、意外と結構な運動量になるのだ。仕事が落ち着いたら、瑠伽もやってみたと言っていた。一緒にやるのも楽しいだろう。


 「奥様、やはり万が一の事を考えて準備は万全にしておいた方が宜しいかと思います」


 十種類ほど並べられた盆栽、その中の一つに手を加えていた蓮は、作業の手を止め切実な声をあげた。早歩きで大レーキを操り、砂紋を描いていた私は立ち止まり、蓮に向き合った。彼は私が何かに打つこんでいる時は、余程の事がない限り声をかけてこない。


 「うーん、そうねぇ……でも、何だか最初から信用していないみたいで気が引けるのよねぇ」

「お言葉ですが奥様、人間の善意を無条件に信じるのは大変な危険が伴います。先日、約束を破って奥様を拉致したような連中ですよ? 奥様の信頼を先に反故にしたのはあちらです」

「でもねぇ……」

「それに、あちらが危害を加える可能性もそうですが、奥様を加害者に仕立て上げる可能性も低くありません。どの道、奥様の潔白を証明する必要があります」


 私を加害者に仕立てるって、これ根強い人気の『悪役令嬢』『聖女』『悪女』『断罪』『処刑』『追放』あと『婚約破棄』の令嬢モノのファンタジーのテンプレ、タグ展開よね。私の場合は婚約破棄というより『契約破棄』になるけど。


 一度は私が言った通りに引き下がった彼が、少ししてから反論を述べる事は珍しい。私の身に危険が迫っていると判断したのだろう。経験上、何か予感がしているのかもしれない。少し過保護な気もするが。この間は極楽寺組に日本刀二本で乗り込んで来た時は驚いた。でも、とても有り難い事だ。こんな風に感じた時、くすぐったい気持ちになる。ちょっとだけ意地悪して甘えてみたくなるのはどうしてかな。小さい子どもが大人に甘えるような心境に似てるのかな。


 「でも、蓮が絶対守ってくれるんでしょ?」

「ええ、勿論全身全霊でお守り致します」


 えへへ、嬉しいなぁ。この瞬間だけ、美形騎士に守られるお姫様気分。


「ですが、何事にも絶対に大丈夫という案件は存在しませんから」


 安請け合いしない部分、この謙虚さ。本当に蓮は誠実だと思う。そうだね、何かあった時、全くの無防備なのと。ある程度予測して備えてあるのとでは守る負担が違うだろうし。


 「分かった、そうね。『備えあれば憂いなし』て言うしね」

「はい、それが宜しいかと。では早速、準備をして参ります」


 蓮はホッとしたように笑顔を向けると、道具を素早く片付け私に一礼を捧げてその場を後にした。


 今日昼過ぎ、小夜子さんが訪問する事になった。かかってきた自宅の電話に応対したのは蓮だ。その際、『持ち物検査はさせて頂く、とか拳銃(チャカ)やナイフは預かる』とか言っていた。小夜子さんが私に会いに自ら出掛けてくるのは初めてなのではないだろうか。恐らく、先日の拉致事件についてが議題になるのではなかろうか。


 蓮は、私に特殊加工を施した服装とダテ眼鏡、帽子、靴を見に着けて欲しいと言った。更に、隠し防犯ビデオの設置の必要性を説いた。盗聴器は探知機で発見されるかもしれないから、今回は避けた方が無難だという。私はそこまで必要ないのではないかと述べたのだが……結果は上記の通りだ。


 さてさて、小夜子さんは果たして「聖女」様か、実は「悪女」か。まぁ間違っても「悪役令嬢」ではない事は確かだ。



ここまで御覧頂きまして有難うございます。誤字脱字報告、感謝致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ