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第10話 真緒理の世話係、久岡蓮と言う男①(瑠伽視点)

 遅れて参加した塔本家のパーティーは、僕と真緒理の二人で予想していた通りの展開となっていたようだ。どのように切り込んでどう対処するかは任せる、と真緒理は言っていた。これでも物書きの端くれだ、即興で物語を創るのは造作もない。更に言うなら、僕の御家事情諸々の影響で、幼い頃から本心を隠し、表面上は全く別の言動を取る事も難無く出来る。


 けれども、現場で彼女がどのような目に晒されるのかはしっかりと把握しておく必要があった。少しでも、彼女の負担を軽くし溜飲を下げる結果にしてあげたい。そう思っていた僕に、協力の申し出があった。ついこの間まで真緒理の専属の世話係だった『久岡蓮』という男からだ。


 塔本家では、長男の誠一さんには侍従、長女の華織さんには侍女がつけられている事から、子供が生まれた時から世話係をつけるようにしているらしい。専属メイドのような感覚だろう。因みに、義兄と義姉の護衛役は世話係とは別にそれぞれ二人ほどつけているという。


 真緒理にはこの『久岡蓮』がついた。年齢は僕より一つ下、真緒理からしたら二つ年上となる。結婚すると決まってから、真緒理は彼に「家を出るから自由にして良い」と源重郎氏に就職先を頼んだと聞いた。誠一さんも華織さんも世話係を未だにつけているから、結婚をしたから自由にさせるという決まりもないようだが。


 彼は真緒理の生活全般の世話から護衛まで全て一人でこなしていた。源重郎さん直々に真緒理の世話係に任命したと聞くが、詳しい経緯は分からない。幼い頃は、真緒理と彼と三人で遊んだりしたものだが、小学校も高学年になる頃には……僕と真緒理の会話が辛うじて聞こえるかどうか、という位置に離れて見守り必要に応じて介入してくる、という形を取るようになった。

 結婚式、披露宴では会場の遠くからひっそりと見守るように。パーティーではウェイターに徹していた。その彼が、パーティーで真緒理がどんな目に合っているかを逐一、LINERで報告してきてくれた。そのお陰で、彼女がどのような状況なのか把握出来、会場に着き次第素早く対処が出来たのだ。勿論、この件は彼と僕の秘密だ。


 尤も、真緒理はただ守られるだけのか弱い姫君ではない。いざとなれば笑顔という鎧に、言語という剣で武装して闘える女性だ。護身術も心得ている。彼女の魅力の一つだ。


 結婚式の時も美しかったけれど、パーティーの時の彼女も綺麗だった。昔から、真緒理は自己肯定感が低い。自分の事を見た目も能力も無価値だ、と思い込んでいるのだ。派手な美貌を誇る才色兼備の姉に、眉目秀麗・容姿端麗・頭脳明晰・文武両道……と、四字熟語のオンパレードな兄を持っていたらそうなるのも無理ないとは思う。僕自身も、家族の事で散々悩み抜いたから気持ちは痛いほどよく理解出来る。


 確かに、真緒理本人の言うようにずば抜けて優れたものはないかもしれない。けれども、何をやらせても平均以上に器用にこなせるし、対人関係も良好だ。彼女はどこか人に好かれる要素があるのだ。容姿もそうだ、パッと人目を惹く華はないがその代わり、時間が経つ毎にじわりじわりとその存在感が増して行く。宝石に例えるなら『真珠』のような魅力があるのだ。花に例えるなら『コスモス』や『ガーベラ』と言った感じか。要は個人の好みの領域だと思うのと、真緒理の持つ家柄への嫉妬から陰口を叩く奴らがいるという事だろう。

 僕には取り分け、クッキリとした二重瞼の黒めがちの大きな瞳はとても印象的だと思う。吸い込まれそうなほど深く澄んだ栗色の双眸は、髪と同じ褐色の長い睫毛に縁取られている。本人は、睫毛がくるんとカールをしていないのが御不満らしいが、びっしりと沢山生え過ぎているから重くてカール出来ないだけではなかろうか。


 本人に伝えても全く本気にしないが、彼女に惹かれる男は少なくない。実は久岡蓮もそうではないだろうか。正直に言ってしまえば、非常に面白くない。だから(契約)結婚が決まった時に真緒理から離れることになってくれてホッとしたのは秘密だ。当然、僕にこのような感情を抱く資格はない。小夜子という恋人がいるのだから。互いの家柄上、結婚は不可能だけれども。

 真緒理は幼馴染、言わば僕にとっては妹のような存在の筈だ。真緒理は、誰に対しても恋愛感情を抱けないと言う、だからもし結婚するなら、男女の愛ではなく家族のような愛情関係が築ける人が良い、と。たまたま僕が一族を継がないといけなくなる事態が起きてしまい、僕と利害が一致した為に「契約結婚」となった。


 どうしてだろう? もし結婚するなら真緒理が良い、と自然に思っていた。時折、小夜子の事はすっかり頭から抜け落ち、真緒理の事だけに意識を取られている時がある。それを自覚し始めたのは、久岡蓮が彼女を女性として意識しているのではないか、と感じた時か、それとも……もう一人、とある男からの宣戦布告を受けた時だっただろうか?


 世間では、僕のような男を「最低クズ野郎」とか、「狡賢い二股男」とか言うのだろう。自分でも、本当に嫌な奴だと自覚はしている。最近特に、真緒理への気持ちと小夜子への想いが自分でもよく分からないのだ。


 ……こうして、真緒理への秘密が一つ、また一つと増えて行くのだろうか……


 真緒理からの伝言を聞き、書斎へ向かった。そこで僕待っていたのは、源重郎さんと……何故かあの久岡蓮だった。


ここまで御覧頂きまして有難うございます。誤字脱字報告、感謝致します。

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