弍拾
「それでは、第三回戦、第一試合を始めます。スタート!!」
その合図と同時にシェリーとサツリクの戦いが始まりました。
試合が始まると同時にサツリクは過去の試合と変わらず無防備に攻めていきました。
そして、シェリーは敢えて敵の攻撃を受け止めて、反撃を喰らわそうとしたのだと思います。
しかし、その反撃をする前に、サツリクはもう片方の腕でひたすらに、シェリーの盾を殴り続けました。
盾で受け止めてはいるのですが、
第1回戦でレフトが説明した通り、盾で攻撃を受け続けていてもダメージを無効化できるのではなく、ただ軽減できているだけ、そんな攻撃を何度も連続でくらい続けています。
そして、盾は1分ほど殴り続けた結果破損をし、それでもサツリクはシェリーを殴り続けていました。
シェリーも何とか腕で殴りを受け止めてはいるのですが、既に腕の色は紫色に変色をしています。
審判もこの惨状を見ていられず、試合を中止させようとしたのですが、
シェリーが
「私はまだ諦めていない!!」と叫んだことで会場は一気に盛り上がり、渋々と審判は戻っていきました。
その後も一向に展開は変わる気配はなく、既に腕は骨折をしており相手からの攻撃を受けきれなくなっていました。
「なかなかしぶとくて根性がある女だったが、これで最後だ!!」
サツリクがそう叫んび拳をより一層握りしめたと同時に、シェリーは全力でサツリクの股間に向かって蹴り上げを入れました。
観客席では、その光景に非常に歓喜があふれましたが、そのような反応も束の間のじかんでした。
攻撃を受けたサツリクは平然としていて
「これが最後の一撃で良いのか?結構お前は頑張ったからもう1発ぐらいなら食らってやっても良い。」
その言葉を聞いたシェリーは今度は思いっきり助走をつけた上で再度、サツリクの股間めがけて蹴り上げました。
しかし、サツリクは表情を一つも変えずに、
むしろ、笑いながら
「これで終わりだ!!」と拳を握りしめたと同時に、シェリーが
「降参します!!!」と叫んだことによって戦いは終わりました。
「三回戦、第1試合、勝者 赤コーナー サツリク!!」
客席からはシェリーの戦いを褒め讃える者がたくさんいました。
そして、この戦いの後、シェリーはすぐに病院へと緊急搬送をされたという話をこの試合後のアナウンスで聞きました。
その後、この戦いを見ていた選手たちは大量に参加を辞退するという意を報告し、残る選手は私と、サツリク、シークレット選手の三人だけとなった。
本来19時半ごろに開催予定だった決勝戦は時間の巻により急遽18時に開催することに決定し、決勝戦までは1時間の空き時間ができました。
私たちはシェリーさんが搬送されたという病院に向かい、そのうちの彼女が入ったばかりの一室へと入っていきました。
「ごめんなさいね。ヒマワーさんのリベンジが出来なくて……」
シェリーはひどくしょんぼりとした態度を取っていた。
「いえいえ気にしないでください………あの……凄くカッコよかったです。」
ヒマワーは元気付けようと精一杯の笑顔でシェリーに話しかけています。
「そうだな。なんていうか、シェリーは凄く勇敢だった。」
目も合わせずにレフトはシェリーに向かって言いましたが
「あらあら、そんなこと言っちゃうと、私喜んじゃうわよ。」と浮かれた声で彼女は答えた。
「所で、あなたたちはここにいるようだけど、今大会はどうなっているの?」
大会を愛するシェリーの思いとしては真っ当な疑問だと思います。
「あぁ、シェリーの試合の後に怖気付いた奴らが多くて、今残ってんのはサツリクと、シェラ、後はシークレット選手だけだな。」
「そう。」とシェリーはあからさまに気持ちを落としていましたが、私たちが病室から出て行くときに、
「シェラさん。」と呼び止められました。
「シェラさんは大会を見て凄く強いって知っているのだけど、油断しちゃダメよ。
それと、私の分まで頑張ってきて頂戴。」
そういう彼女に手を振りながら私たちは会場へと戻っていきました。
「それでは、準決勝もないまま決勝という異例の事態になってしまいましたが、武術大会決勝戦を行います 赤コーナー サツリク!!
青コーナー シェラ!!」
目の前にいる相手はなんだか、ニヤニヤと笑っています。
対戦相手、サツリク。
今までの戦いを見る限り、純粋なパワー比べでは私の今の出力と五分五分といった所。
相手は殴るや蹴るなどの攻撃をメインで行ってくるはずです。
とりあえず、警戒モードを上げておきましょう。
「それでは、決勝戦スタートです!!」
盛り上がったのか盛り下がったのか、なんとも絶妙な客席の空気を感じながら決勝戦がスタートしました。
またもや、サツリクはこちらめがけて突撃してきます。
その攻撃を手で軽く受け流し、次に来るもう一つの手の攻撃をかわし、そのまま手を振り上げて、相手の顎にアッパーを決めました。
少なくとも、脳が左右に揺れ軽く脳震盪を起こすくらいの効果はあってほしかったです。
相手はアッパーの攻撃を受けながらも、両手を私の腰に持っていき、宙へと浮かせました。
恐るべき力とタフネスといった所でしょうか、痛みを機にする様子もなく、そのまま私を握りつぶそうとしてきました。
しかし、私の体は博士が頑丈に作ってくれていたので、ダメージと言えるものを負うことはありませんでした。
私が平然としているのを見て、サツリクが驚いた様子で
「お前ももしかして、同じなのか?」
と奇妙なことを呟きました。
押し潰さないと分かったと思うと、サツリクは地面に私を叩きつけようとしましたが、受け身をとって衝撃を減らしつつ、地面に寝たまま相手の足元に蹴りを入れ、サツリクがふらついたところを私は追撃をし、サツリクをうつ伏せに倒しました。
その時点で観客席からの声援は絶大なものになっており、非常に歓喜が湧いていました。
私はそのままサツリクの背中に向かって蹴りを入れましたが、サツリクの体が衝撃を受けて揺れることはあっても彼は一切の悲鳴や弱音を吐くことはありませんでした。
そして、何度か蹴り続けたいるうちに、彼の服が破け、彼の皮膚には紫色に変色した皮膚や、血肉が剥けていて骨があらわになっている部位までありました。
先程の彼の発言や、今までの異常なまでのタフネス。
きっと彼は……
「試合終了だ。そんなものを見てしまっては耐えられない。」
突如場内にディーナーが上がってきました。
「この試合は勝負がついておる。勝者はシェラとし、優勝賞金と、19時半からシークレット選手との対決をすることを宣言する!!」
「待て!!まだ闘える!!」
ディーナーが宣言をした後にサツリクは必死になって試合の継続をアピールしていたが否定されました。
「サツリク、お前さんはすぐに病院に診てもらった方が良い。」
ディーナーが優しく声をかけると、
サツリクは急いで立ち上がり、
「待て、まだ動ける!!ほら見ろよ!!」
と自分の体を動かし始めました。
そんな彼の姿を私は見てられなかった。
「サツリク、ただちに安静にしてください。」
私がそう言って肩を抑えると、サツリクはがっくりとしたように座り込んだ。
その後、彼は病院で搬送。
彼は服の後ろ側しか怪我の様子を確認できていませんでしたが、後に聞いた話によれば、全身にあざや身体部位の破損などが見つかり、緊急で治療を開始したそうだ。
また、彼は先天性無痛無汗症という難病を患っており、大会中、彼は場外を狙わずに相手が動かなくなるまで殴っていた理由は、相手が痛みを感じている姿を見て、自分と比べた結果、普通の生活をしている相手を羨ましく感じ、余計に異常者であると自分を自覚した結果、腹が立ち何度も殴ってしまったのだと語った。
この話は後日するとして、とりあえず今はこの時間の話に戻しましょうか。
そんなこんなで、なんとも締まらないまま、私は武術大会を優勝しました。
現在の時刻は18時30分。シークレット選手との試合は19時ごろ開催するとのことでした。
時間があったので、私はレフトたちの元へ帰ってくると、
「おめでとう。」と観客を含めた彼らは迎え入れてくれました。
「シェラ、次はシークレット選手との試合だけどどんな奴が来るんだろうな。
ここに来てすっごく弱い奴が来たら笑い者になっちまうけどな。」
レフトは賞金が手に入ったことが嬉しいのかニヤニヤと笑っていました。
ヒマワーも「おめでとうございます。」と言ってくれました。
私は軽く挨拶をしてから、そろそろ控室に向かわなければならなかったので、小走りへ控室に行き、時が満ちたので入場をしました。
「それでは、今大会のフィナーレを飾る対戦カードは、
赤コーナー シェラ!!」
「ワァァァ!!」と客席から歓声が聞こえてきました。
今まで私は歓声を浴びる機会などなかったために少しだけ照れくさいように感じます。
「それでは、シークレット選手に登場してもらいましょう!!青コーナーはこの方です!!」
すると、突然スポットライトが空へと当たり、そこから白い翼を生やしたペガサスによく似た生き物に跨っているとある青年に目がいった。
綺麗なショートカットの髪に、中性的な整った顔立ち、スタイルも良く、煌びやかな豪華なマントをなびかせながら、緑と白を基準とした寛大な威厳をその身にまとったような服装をしっかりとその身に着こなしている。
そのような美青年が場内へと降り立った。
「シークレット選手はこの人!!
青コーナー 魔王の指先 3指のストシンカーさんです!!」
いよいよ長かった武術大会編もフィナーレを迎えようとしています。
シークレット選手は過去にチラッと名前だけでた魔王の指先であるストシンカーでした。
次回は試合のルールに則った上でのVSストシンカー戦となっておりますのでよろしくお願いします。