拾参
「ヒマワー君、私は仲間だと思ってたけど、何か嫌なことしちゃったかな?」
その問いかけにアタシは正しく返答する事が出来なかった………
「最後まで変なこと言う奴だな……命乞いの一つや二つくらいしやがれよ……」
正直、王族や貴族などの裕福な家庭は自分たちさえ良ければそれで良い。という考えを持っていると思っていた。
だから今までなんとも思わなかったし、喜びさえ感じている節があった。
クソッ……
腕を振り下ろしても最後まで嫌味ったらしい事を言わなかったら、ライトさんは殺さなくっても良いかもしれない。
腕を振り上げた時に、突如のしかかっている筈のライトさんの体が揺れた。
クソッ……
さっきまでの台詞は演技かよ。
変なことをしてないか見える範囲で体を見てみると、ライトさんの右足に矢が突き刺さっていた。
これはシェラさんが言ってることが確かなら毒だよな。
そんなことを考えるよりも先に、不吉な予感から腕を振り下ろし、ライトさんの右膝を切断した。
ライトさんからは言葉にもなっていない嗚咽が聞こえたが、きっとこれが最善の策だ。
すぐにライトさんの上から離れると、突如テントが崩れ
「スリープモード、強制解除。再起動します。」
と何とも無機質な声が聞こえてきた。
まだ30分ほどしか経ってないのに、何故かシェラさんが目が覚めたようだ。
アタシは急いで自分のズボンを脱ぎ捨て魔法で形を包帯にし、ライトさんの足に巻きつけ一応、応急処置だけは行った。
本来なら直ぐにでもライトさんを病院に連れて行きたい所だが、アタシが連れて行っても亜人が人間の国に入ることは煙たがられていると共に、アタシが連れてきたライトさんもアタシの仲間だと思われ治療をまともに受けさせてもらえない可能性の方が高い。
今は1秒でも時間が惜しい所だが、今目覚めたであらうシェラさんにライトさんのことは任せて、アタシはこれ以上ライトさんが矢を食らわないように小虫を潰した方が良さそうだ。
アタシはすまない。と心で謝罪し、水滴を垂らしながら狙撃手の元へと駆け出した。
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「再起動。完了いたしました。」
視界が開けると、腹部には何か重りを感じます。
前回のスリープモード前の記録を確認。
色や形状からして、テントであると推測。
前回の記録から敵からの攻撃の可能性があると判断。
直ちに脱出します。
無理矢理にでもテントをこじ開け外に出ると
片足がなく、大量の血と共に地面に倒れているライト。
南南東に向かって50mほど先に走り出しているヒマワーの姿を確認。
周囲にはライトのものと思われる足、足には昼頃に確認した矢が刺さっており、ライトの右膝には包帯のようなもので応急処置をしたと推測できる状況です。
恐らく敵は昼間に出会った地球儀であり、ヒマワーは対象を追跡中。
現状から行動パターンを構築します。
結果、直ぐにライトを近くの町に運びます。
私はライトを持ち上げると、極力揺らさず速度をだせるように、旧亜人の町へと走り出しました。
草木をかき分け進んでいき30分程で到着しましたが、時刻は既に遅く、既に光は町から感じられません。
そこで私は、急いで見張りの人に声をかけました。
「すみません、緊急治療が必須な患者がいるのですが、病院は何処にありますか?」
このようなことを私は聞いたと記録しています。
しかし、「一年前出来たばかりの町では最新の治療技術などなく、彼女ほどの重傷者の治療は難しいだろう。」そのようなニュアンスを言われたと記録してあります。
私は無理を言って町の病院に急ぎ、夜中に医者に駆け込み「成功の保証はない。」と言われながらも緊急治療室にライトを運ぶことに成功しました。
後は結果を祈るしかないですが、レフトやヒマワーの様子も気になりましたので、芝生に再度戻るという判断をしました。
どうか……死なないでください。
そんなことをメモリの何処かで願っていたことにその時の私は気づいていませんでした。
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なんとかシェラさんは状況を把握して直ぐにライトさんを連れて行ってくれたようだった。
理解の速い人(?)で助かった。
現在アタシは草むらに入って行った彼を追いかけている所だった。
「お前、スプラッターさんだろ。アタシは何もする気はないから話だけでも聞かせてくれないか?」
ここなら叫んでも誰からも聞こえないという場所について、虚空の暗闇に向かって叫ぶと
虚空の暗闇から地球儀頭の男が現れた。
「ダッセェな。お前、その被り物より、まだ元々の頭の方がカッコ良いぞ。」
「そうか」と言われたことが気にかかったのか素直に頭についていた地球儀を取り外した。
「顔の割れていない相手には別の被り物をして近づくんだが、ヒマワーお坊ちゃんにはかなわないな。」
地球儀が左右に割れたかと思うと、中からは
外面は木製のデザインでできており、レトロなスピーカーのような頭を提げた男が現れた。
「で、何か用でもあるのかい。もしかして、あのお嬢さんとの戦いに横槍を入れたことかい?そりゃ悪かった。だけど、おじさんは仕事中で忙しいんだ。謝罪はまた今度で良いか?」
地球儀に乗せていたベレー帽を手で軽く叩いてスピーカーに被せたスプラッターはどうやら困ったような声色をしていた。
スプラッター、職業は殺し屋。
仕事は報酬分はこなすもののそれ以上の事は決して行わない男。
昔、亜人の国で知り合った相手であり、使用武器は相手によってケースバイケースで変える。
「ふむ……おじさんの顔を知られているとまずいからな。銃は音が大きく正体がバレやすいから極力使いたくないが、これでヒマワーお坊ちゃんも殺させてもらうか。」
彼はボストンバッグの中から拳銃を取り出しアタシの頭上へと銃口を向けた。
「スプラッターさん、殺す気ないじゃねぇか。
そんな見え見えの嘘つくんじゃねぇよ。」
「オォ〜イッツ、アサシンジョーク。」そんなことを言ってスプラッターさんはヘラヘラとバッグへと銃をしまい込んだ。
「それで、今回の任務は何なんだよ?」
とりあえず、先に聞きたいことだけ聞いておくことにした。
「そりゃ、勇者を殺せっつう依頼なんだが、あの異常に強いお嬢さん何者なんだ。
前金を貰ったからせっせと撤退は出来ないんだが、あんなお嬢さんがいるってこと、おじさん知らされてないぞ。」
スピーカーから大きな音を出して、スプラッターさんは地面を連続で蹴飛ばしている。
怒りが昂ぶるとスピーカーの音量が上がっていくのも昔と変わっていないようだった。
「それで、いつその仕事は終わるの?
あんまスプラッターさんに手を出して欲しくないんだけど。」
そう言うとスプラッターさんは片方の手でグッドマークを作った。
「片方は不発とはいえ、兄と妹の両方に矢を打ち込むことはできた。
報酬とおじさんの命の危険を考えると、今回の任務はこの程度で終わりだ。」
そう言ってスプラッターさんは
「大きくなったな。」とアタシの頭を軽くポンっと叩いて再度暗闇へと姿を消していった。
今回の話を聞いて一番最初に思った事はあの2人が勇者だったことへの衝撃だった。
ったくよぉ……どんな顔をしてライトさんに会えば良いのかまったくわかんないよ………
トボトボとしながらアタシは帰路に着いた。
帰路につくとちょうどシェラさんが芝生へと戻ってきた頃だった。
「ヒマワー、お怪我はございませんか?」
「はい……大丈夫です…ところでライトさんは…」
急に性格が変わったりすると怪しまれるだろうと踏まえて前の性格のまま応対することに決めた。
「はい、近くの病院には運びましたが、治療が成功する保証はない。と言われました。」
っ……普段は何をしても特に感じることがなかった後悔や罪悪感がアタシの中から湧き出てきた。
普段はやってやったと言う高揚感が昇ってくるのに今回の悲しみは何故なのだろう……
「ヒマワーも迅速なら応急処置をありがとうございました。
あれが無かったら運んでいる途中で死んでしまっていた可能性も浮上してきました。」
シェラさんが丁寧に頭を下げてきた。
目元からは既に大量の雨粒が次から次へと流れ落ちてきやがる。
後で、ライトさんやシェラさん、レフトさんにもしっかり謝らないとな。
きっとアタシがしてきた事は許される事ではないと思うが自分で結末ぐらいはしっかりつけておきたい。
「ところで、レフトが何処にいるのかをご存知でしょうか?」
あ……時刻はあれからまだ2時間ほどしか経っていない
もしかして、そんな思いで押しつぶされたテントの下を見てみると、未だにいびきをして寝ているレフトさんの姿があった。
「おや、ライトがあんなことになっていたのにレフトはずっと眠っていたとは珍しいこともありました。
やはり、人間ゆえにこんな事もあるのでしょうか?」
そう個人で納得したようなシェラさんはアタシを左腕、レフトさんを右腕に抱えて、ライトさんの治療をしている病院へと運び込まれてました。
まさか、と思うほどびっくりなスピードで抱えられていき、相変わらずシェラさんとは何者なんだと言う気持ちが強くなった。
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「あぁ?ここ何処だ?」
目を覚ますと知らない椅子に座らされていた。隣にはシェラとヒマワーが座っていた。
すぐ左を見ると固く閉ざされた扉があり、右には廊下が続いていた。
この光景どっかで見た事あんな。
そんなことを考えていたらすぐに病院という結論が出た。
ここが病院で、隣にいないやつって……まさか!!
「レフト、目が覚めましたか?今の状況の説明が必要でしょうか?」
俺に気づいたシェラがこえをかけてくれたようだ。
「心配は無用だ。今は周りを見てどんな状況かは理解しているつもりだ。」
「そうですか。」とシェラは俺の顔を見るのをやめてすぐに閉ざされた扉を見つめた。
何だかんだでシェラもライトの事が心配なんだな。と感じたが今はそんな場面ではどうやらないらしい。
クソッ……何で大事な時に俺は寝ちまってたんだよ………
それから俺はシェラとヒマワーに俺が寝ている間に何があったのかの大まかな流れを聞いた。
ヒマワーは色々と気持ちが混ざりライトと取っ組み合いになり、そこを昼間の地球儀に狙われたこと。
ライトを直ちに最低限の応急処置と運びで何とか今までライトを繋ぎとめてくれていたこと。
この治療の成功の有無についても聞きたく無かったが聞かされた。
ライト………どうか死なないでくれ!!
そんな緊迫した空気の中時は3時間以上も過ぎ去っていったようだ。
待合室でライトのことを考えていたところあっという間にそんな時間が経ったようだった。
更にそこから数刻の時が経ち、ヒマワーは見張りをしていてたかれてしまったからであろうスヤスヤと隣で眠りについていた。
俺も若干の体調不良と眠気で意識が朦朧としている中、突然、扉が重く開く音で、俺とヒマワーは意識を戻した。
中からは医者や数人の看護師さんが続々と出てきた。
「手術自体は終わりました。
結果は…………
とりあえず、ヒマワー編はもうすぐ終わりそうです。
構想は頭の中で出来てはいるのですが圧倒的に時間とモチベが足りていない。
とりあえず、進捗については前向きに検討します。




