壱
20XX年、地球では第三次世界大戦が行われていた。
その戦いには新兵器として、生物兵器や、人意的災害、ましてや太陽光までもが使われる壮絶な戦いになっていた。
その時、とある国の研究室では新たな兵器が生み出されようとしていた。
「後は、この起動ボタンを押すだけだ。」
薄暗く、コードやコンピューターがごちゃごちゃした部屋にある正方形の箱の前で、目の下に隈を浮かべたある白衣姿の男がいた。
「これで、これで……人型自動学習戦闘AIの完成だ。コイツがいれば、きっと戦争も終わらせてくれる筈だ……」
現地球上にある必要であろうデータをインプットさせた、最高の機械の誕生である。
男は立て掛けてある小さな写真を一度見てから、数刻後に手元にあるボタンを押した。
「プログラム起動。異常を確認中、異常無し。起動します。」
ボタンを押すと箱が途端に崩れ、銀髪のロングヘアでエメラルドのような色の瞳をした整った顔立ちをした、150cmほどの背丈をした機械が目の前に現れた。
「動作確認異常無し。貴方が私のマスターですか?」
何処か懐かしいような印象を抱かせる、長い手足を左右に揺らしてから、機械的に右手を差し出してきた。
「あぁ、私が君を作った。と、その前に服を着てくれないか?少々目のやり場に困ってしまうのでな。ついてきたまえ。」
そう言い、研究室を出てしばらく進んだ後廊下の突き当たりにある目的地へと到着した。
機械は、何も言わずについてきていた。
「この部屋の中にあるクローゼットから好きな服を選んで、服を着てきてくれ。」
「承知いたしました。少々お待ちください。」
機械は部屋に入っていき、それを見送ると、私は部屋の扉の前で座り込んだ。長い時間活動していたので疲れていたのだろう。
数分後、部屋の扉が開いた。
すると、紺色をベースにして作られた体育ジャージを上下に着た彼女の姿があった。
その姿を見て少しばかりだが、目元が潤んできた。
「機動性を重視した服装は、この程度しかありませんでした。涙を浮かべているように認識していますが、何かご不満などはございますか?」
「いや、少々懐かしいことを思い浮かばてしまってね。その服装で構わないよ。」
「承知いたしました。次のご命令は何でしょうか?」
「あぁ、命令か。そう堅苦しい言い方はせずに、次からはお願いという形で言ってくれないか?」
そういうと彼女はわざとらしく小首を傾げた。
「承知いたしました。ではお願いはございますか?」
「あぁ、では、一つだけ頼みごとを引き受けてほしい。大きな事態というのは分かっているのだが………どうか、この戦いを終わらせてくれないか。」
「目的、戦いを終わらせる。にアップデート致しました。」
彼女の発言中に、突如彼女の立っている足元に青く光っている円が浮かび出してきた。
「何なんだ?これは。」
「現在、異常を検知中です。マスター、異常を検知されませんでした。」
「一体……何が起きてるんだ。」
すると、先ほどまで、ただの模様だった足元から、徐々に光が彼女を包み込んでいく。
「マスター、現在下半身に該当する部分の居場所が何処にあるのか、検知できません。登録されているマップ外に存在する可能性があります。」
彼女には地球全体の地形データをインプットされている為、地球上の場所であれば大凡の場所は把握出来るはずだ。
それが出来ないとなれば……考えたくもないが機械を全て破壊することができる兵器があるのかもしれない。
そんな兵器聞いたことがないが、此方もこのような兵器を秘密裏に開発していたので、可能性はある。
何かが起こる前に行動をしなければ、そう思った時に不意に口が動いた。
「すまない、もう一つだけ頼まれてくれないか?」
「はい、何でしょう?」
「ことが終わったら、もう一度私と暮らしてくれないか?」
「エラー、もう一度とは一体?」
「いや、すまない忘れてくれ……」
そう言いかけた時には目の前から彼女の姿は消えていた。
男は醜く歪んだ顔を押さえ、膝から地面に崩れ落ちた。
現在の場所を検知しています。エラー、データに存在しない地形。
「@njtwm!!!jm@pwb@j!!mjbpydagjm!!」
周囲を確認中。部屋の内部には3人の人物を確認。
また、部屋の外部に8人以上の人物を確認。
状況を確認。青年が、玉座に座っている男性を叱責していると推測。
言語を確認中、データにない言語と断定。
データを元に、彼らの言語を翻訳可能なように演算中。成功。
「すまない……伝説の武器を召喚する手順は正しい筈なのだが……」
「何がだよ!!出てきたのは結局女の子じゃねぇか。
なぁ、コイツがまさか、伝説の武器なのか?」
「初めての試みで自分自身でも状況が分かっていないのだ。許してくれ。」
「こんなよくわかんねぇ女ので魔王を倒せって、本の読みすぎなんじゃねぇか?
結局、親父も権力に物を言わせてただけなんだろ。俺は目的も無くなったし、もうこの国を出るぞ。ライト、行くぞ。」
青年は扉を開け出て行ってしまった。
現状況を今までの単語から推測します。
エラー発生、非現実的な結果が導き出されました。
再検索しま
「あの……君、不安だよね。突然こんな現場見せちゃってごめんね。」
状況把握、青年と男性ではない3人目、近寄ってきた少女が話しかけてきました。
「あっ……待って。異世界から来たのなら言葉も通じてないよね。えっと……どう伝えれば……」
「言語の解析は完了いたしました。何か御用でしょうか?」
「解析ってことは……もう分かっちゃったの!?凄いね。君の名前は何かな?」
「私の名前……」
検索中……検索結果、個体名に関するデータは見つかりませんでした。
「あのね。私は読めないんだけど、この服に書いてある、この緑色の縫い物って、君の世界の文字じゃないかな?」
胸元を確認。
胸元の縫い物はほつれできています。
推測結果。
「シェラ。」
「シェラって言うんだね。私はライトって言うんだ。よろしくね。」
個体名、ライト。
容姿を確認中、朱色のポニーテールに、青眼をした推定14歳程の少女、服装は茶色のベレー帽のような防止に、フリルの付いた白と青色をベースにしたドレスに、左手には髪色のような朱色の球体が上部にむき出しになっている彼女の背丈程もある杖を持っている。
データ、登録完了いたしました。
「お父さんもほら、謝って。」
そう玉座に向かってライトが言葉を発すると、男性は渋々といった感じに頭を下げた。」
「すまない。ただ、まだ理由は聞かないでくれ。今、色々言ってしまうと混乱してしまうだろうし、今の状況が飲み込めてないだろう。今日はとりあえず、ゆっくりこの城で休みたまえ。」
「いえ、要件がないのであれば、私は戦いを終わらせるという使命がありますので。これで失礼します。」
私は扉に向かったが、私の手をライトが掴んでいた。
「待って!!戦いを終わらせるのが目的なの?」
「はい、私の最優先の目的はそれだけです。」
「なら、話を少し聞いてくれないかな。良いよね?お父さん。」
「あぁ、シェラさんは焦ったり、パニックになる様子もなく冷静な方のように見える。ライト、今までのことを説明してあげなさい。」
「シェラさん、少々よろしいかな?」
目的を確認中。タイムリミットは特に聞かされていません。
「はい、構いません。」
「えっとね。今、この星は魔王軍対人類で戦争が起こっているの。昔までは魔王軍も条約を結んでとくになにごともおきてなかったんだけど、最近になって急に暴れ出してきたの。そこで、お兄ちゃんと私が勇者となって、魔王軍を倒すことによって、また魔王軍とのバランスを戻そうとしているんだけど、ここまでは良いかな?」
「続けてください。」
「そこでね。私たちは半年ぐらい旅を続けてきたんだけど、魔王軍の幹部っていう強い相手と戦って負けちゃったんだよね。そこで、城に伝わる伝説である、<魔王軍が再び目覚めた時、伝説の武器が召喚される>って伝説を思い出して、その召喚の儀式を行ったら、シェラさんが召喚されたんだ。ごめんね。シェラさんの世界から勝手に連れ出した上に、召喚に失敗までしちゃうなんて……」
「いえ、非現実的な話ではありましたが、多少は辻褄が合いました。お話、感謝いたします。」
戦争が起こっている。この発言が事実であるなら、私の目的とも一致しています。
「納得しちゃうんだ!?シェラさんは急にこんなことに巻き込まれたのに凄いね。私なんて、最初に旅に出るって分かった時には全く動かなかったのに。
じゃあ、シェラさん、勝手に召喚しちゃったお詫びも込めて、この城でゆっくり過ごしてね。お父さん、そのぐらいのお詫びは良いでしょう?」
「あぁ、そのぐらいなら構わん。悪いことをしたとは自分としても理解しているからな。」
「じゃあ私たちは旅に出るからシェラさんもゆっくりしててね。」
「ライト、貴方たちの旅に同行してもよろしいでしょうか?」
「えっ!?」
ライトは驚いた顔で此方を振り向いてきた。
「拒否するのでしたら、私は独自で行動します。如何でしょうか?」
ライトは暫く考え込んだ後に笑顔を見せた。
「うん、一緒に行こう。シェラさん。」
「承知いたしました。行動を開始します。」
ライトに続いて扉を出ると、先程の青年が近くの壁に寄りかかっていた。
「さっきまでの話は聞かせてもらったが、お前戦えんのか?」
「はい、戦いに関しては、戦闘データがインストールされています。」
青年は私に顔を近づけてきた。
「それは、足手まといにはならないってことで良いんだよな?」
「はい。肯定します。」
「ここまで、脅しても顔色ひとつ変えないってことは、過去に何か大きなことでも乗り越えてきたんだろ。合格だ。ついてこい。」
そう言うと、青年は廊下を歩いていった。
「ごめんね。シェラさん。お兄ちゃんも色々あってね。あっ…まずはお兄ちゃんの紹介しなくちゃだよね。さっきのは私のお兄ちゃんのレフト。口は悪いけど、今ままで私のことを守ってくれた。大切なお兄ちゃんなの。」
個体名、レフト。
推定15歳。身長はそれなりに大きく170cm弱
ライトと同じく。朱色の髪に青眼をしている。髪型は短髪で、服装は顔以外は鎧に身を包んでいた。背中には推定50kg以上であろう盾を背負っている。
データのインプット完了いたしました。
「シェラさん、行こっか。」
私はライトと2人で、レフトについていった。
まずは、初心者の稚拙な作品をご拝読くださり、誠にありがとうございます。
某作品に影響を受けて本作を描こうと決めましたのですが、この作品について少しでもご興味がございましたら次回も読んでみてください。
いつまで続くかわかりませんが……
誤字がございましたら遠慮なくお申し付けください。
やる気があれば修正致します。