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#3《Q_学校って何で行くの?》

 一人の吸血鬼少女との出会いで変わった、俺の日常。出会った後の日常は、何処か不思議なことばかりだった。そんな中、いつも通りに朝起きて、学校へと行く準備をする。あの少女は“ロン”と言う名前らしい。もう数百年は生きているらしいな、本人曰く。ただ、数えてないから正確な年月は分からないとのこと。何回かこういう風に人間や吸血鬼に拾ってもらったらしいが、あまり長居はしなかったんだと。吸血鬼に拾われた場合は血を吸う必要がないから異端扱い。人間に拾われた場合は大抵魔力を持ってなくてすぐに去ったんだそうだ。どの種族でも、差別はあるんだなぁーと、俺はその事実に少し悲しくなった。

 そんな事を考えながら、学校へと登校する。ロンは絶賛爆睡中だ。ま、吸血鬼は夜行性らしいから昼間爆睡は当たり前か。

 そうして学校に行き、昼休み。屋上に行くと、何故かロンの姿があった。屋上は俺のお気に入りスポット。うちの学校の屋上は見晴らしが良く、生徒の間では密かな人気スポットだ。そのため、いつも各学年から数人の生徒が弁当を食べに来ているにだが……今日は何故か、人っ子一人いやしなかった。天気に関しちゃ良好で、快晴。雲一つなく、見晴らしは最高だ。しかし、屋上は静寂に支配されていた。ロンは羽をしまわずに出しっぱなしだ。俺はロンに近づく。すると、ロンがニヤリと笑った様な気がして……次の瞬間、俺はロンに抱きつかれていた。俺は抱きつかれたことに驚き、よろめく。なんとか立つのを維持して、口を開いた。


「いきなり抱きつくなよ、驚くだろ」


 俺がそう言うと、ロンはより強い力で俺を抱きしめ……


「むぅ……凰牙兄が家に居ないのが悪い」


 ……と、口を尖らせて、不機嫌そうにそう言った。

 あれ?学校に行って来るって、ロンが寝る前に俺言った気がするんだが……。それを言ったら可哀想な気がするから、やめておくか。


「今日は学校だからな。後、その呼び方はここでしないでくれ。誰かに聞かれてたら誤解されかねない」

「はぁーい」


 俺が家に居なかった理由を話し、呼び方を注意すると、渋々と言った感じで分かってはくれたらしい。

 ちなみに、俺はロンに何故か懐かれ「凰牙兄」と、そう呼ばれている。まだ会って三、四日くらい……だったか。出会ったのが先週の金曜の下校中だったからな。まだ出会って数日しか経ってないのに「お兄ちゃん」扱いらしい、ロンの中では。俺は初めてこう呼ばれた時「お前の方が年上だろ」と、思わず声に出してツッコんでしまった。そのツッコミに対してロンは「見た目じゃ凰牙君が年上」とまあ、ごもっともな事を言われて、それ以上は反論出来なかった。結局「見た目は俺の方が年上だから」と言う事で納得せざるを得なかった。

 ……と、俺が回想に浸っていると


「それでさー」


 ロンがそう言って、そこで一泊を置き……


「何で学校って行くの?」


 と、まあ、学生には答え難い質問をぶつけてきた。中学までなら俺も一応答えられた。なんて答えたかと言うと「基本勉強が義務だから」だ。別に、学校は行かなくてもいいのだ。家に居たって、義務教育と同じレベルの学習を子供がしていれば、それで良いのだ。そして、親には子供に勉強させる義務があるが、子供に学校に行く義務はない。本来なら、学校に行く行かないは個人の自由なのだ。なのに今の世間一般の常識は、俺が知っている限りじゃ「学校には行かなければならない。何故ならば、義務だから」だな。本当は学校に行くのではなく、勉強が義務なんだけどな……っと、話が逸れた。

 さて、義務教育を終えて、高校に行っている俺はなんて答えようか……。まあ、無難なのにしとくか。


「何故学校に行くのか……俺が考える答えはな」


 俺は、そう前置きをして


「より深く学びたいから、だ。まあ、後は高校によるが、高校を卒業しとけば楽に社会に出れるってのもある。が、基本は前者の理由で高校に来ている人間がほとんどだろうぜ」


 俺はロンの質問にそう答える。これはあくまでも俺個人の答えであり見解だ。恐らく、この質問に共通の「正解」はないんじゃねーかな。まあ、だからこそわざわざ前置きをしたわけだが。


「ふーん、より深く学びたいから……。それが凰牙に……じゃなかった、凰牙君の答えかぁ」


 ロンは納得した様に、何回も頷きながら俺の話を聞き、そう言った。

 さて、ロンの疑問も解決したし……俺は屋上で見つけた時から気になっていた事を聞いた。


「なあ、ロン」

「なぁに?」

「何で昼間に起きているんだ?つーか、太陽は平気なのか?」


 俺がそう問うと……


「一つずつ答えるね」


 ロンはそう言って優しく微笑み、言葉を続ける。


「まず、昼間に起きてるのは、目が覚めちゃったから。時々あるんだー、短い睡眠時間だけでぐっすり寝た気になる事」


 次に、と、ロンは言葉を続ける。


「太陽についてだけど、人間が信じている「吸血鬼は太陽に当たると死ぬ」って言うのは正直言って迷信だから」


 呆れた様な顔で、ロンはそう言った。続けて


「でも、太陽に当たると怠くなったり眠くなったりはする。だから、あんまり太陽には当たりたくないかな」


 苦笑しながら、ロンはそう言って話を締め括った。

 ……一つ、気になることが出来た。


「じゃあ、人間が信じている「吸血鬼を殺せる弱点」は、全部迷信なのか?」


 さっきの話を聞いて、この点が気になった。正直なところ、本当に迷信だとしたら、俺らの先祖は一体何をどう勘違いしてそう信じたのかが気になるな。


「うん、迷信。極力ニンニク料理は食べたいと思わないし、神様に祈ったりすると気持ち悪くなる。十字架とかも同様だね。でも、死ぬ程じゃない」


 ……つまり


「人間が信じている「吸血鬼の弱点」は確かに苦手ではあるが、死ぬ程ではない……と」

「そう言うこと。何だろう……食べれるけど、嫌いだし苦手……みたいな?」


 なるほど。食べ物で言えば、やろうと思えば食べれるが、極力食べるのを避けたいモノ。それが人間が信じている吸血鬼の弱点の立ち位置か。何でこの弱点で吸血鬼を殺せると、古来の人間は思ったのだろうか。まあ「殺す」ではなく「撃退する」と言う意味でなら、案外迷信ではない気がするな。

 と、そんな感じでロンと話していたら、学校のチャイムが鳴った。昼休み終了の音だ。……弁当は休み時間にサクッと食うか。


「んじゃ、授業があるからまた家でな」

「はーい」


 俺はそう言って、屋上を去って教室へと向かった……


◆◇◆◇◆


 誰も居なくなった屋上。僕は、誰も見てない事を確認して屋上を飛び立つ。凰牙兄と話してる時に羽出しっぱなしだったから、その時点で見られたらアウトだけど、まだこの段階なら言い逃れは可能。けど、飛ぶところを見られたら言い逃れなんかできないからね。普通の人間に見つかって面倒なことになるのは、もうウンザリだから。

 そんな事を考えながら凰牙兄の家に向かい……ベッドに潜り込む。そのまま目を閉じると、僕の意識は眠りに落ちた……

 

学校に行く意味に関しては、完全に個人の意見であり見解です。ご理解頂くとともに、ご了承下さいますよう、お願い申し上げます。

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