第二話 理想と現実
夢
おおっ! 目の前には超イケメンな男子五名が私に愛の告白をしているでないですか!
夢乃困っちゃ〜う! ……なんて現実ゆえに夢も甘くないよね。目の前にいたのはクールな顔つきの男の子。本を読んでいて私より少し大人っぽい。
でもびっくり。感触も匂いも全てが現実みたい。これは本当に夢なのか……?
「あのー」
「なんだ?」
「ここは?」
夢でこんなこと聞くか?と自分でも思ってしまう。
「ドリームドだ」
「ドリームワールド?」
「……ここはドリームワールド。いわゆる夢の世界だ」
全く話についていけない。
「えっと……」
「はあ……めんどくさいやつだな」
はあ! ?なにこいつ! 初めて会う人にそれいう?普通。
ああ、いけないいけない。夢なのに感情的になっちゃうところだった。
「えっと……」
「……ツバサ」
「え?」
「俺の名前はツバサだ。お前は?」
「私は夢乃です」
「そうか」
「ええ。それで?ドリームワールドってどんなところなんですか?ここは何をするところなのでしょうか?」
「夢を作る場所だ」
「夢を作る?」
「ああ。皆、寝れば夢を見るだろ。それを作っているのはこの世界。ドリームワールドだ」
「へ〜。じゃあ、私がみているこれも夢なんですか?」
「いや、少し違う。たしかにお前がみているのは紛れもない夢だ。しかし、ここはドリームワールド。お前は……」
「お前は?」
「お前は夢で夢の世界に来てこの世界を救う、救世主になるのだ」
喜怒哀楽が全くなく、淡々と喋っているツバサ君。それなたいして何を言っているのか全く理解できない私。
「きゅ、救世主?」
世界を救うあの戦士。それを私が?
ってまてまて。これは夢。そう、ただの夢。こんなの嘘っぱち。
「まあ、見れば早い。外に出ろ」
「ど、どこに行くのですか?」
「なあに、どこにも行かない。外に出るだけだ。あいつらはこの近辺にいるはず」
そう言ってツバサハドアを開けた。
いや、何がいるの?という考えは一発で吹き飛んだ。
目の前には怪物がいた。怪獣にそっくりな、怪物が。
深緑色をしていて、ヒレのある、漫画でいそうな怪獣。
……へ?
私は怪獣を見た瞬間ドアを閉めた。
「……おい。なぜ閉める?」
「いや、普通危険なもの見たら逃げるでしょ! 常識的な考え方です!」
そう言ってもツバサ君は私を睨むばかり。
「……………」
おい! なんかしゃべれ! あー、なんなのこの夢。
「なんで怪獣がいるんですか!」
「怪獣じゃない。悪魔だ」
ツバサ君ら戸棚からコップを一つ取り出してコーヒーを注いでいる。
こんな大事な時にツバサ君はのんびりだねぇ!
っていうか、私の分も用意してくれたっていいじゃない!
「……え?どこが?どこからどう見ても怪獣ですよへ?」
私はあんぐりと口を開けた。
「どう見たら怪獣に見えるんだ。お前の目は節穴か」
「君の目こそ節穴か!」
相変わらず不機嫌そうなツバサ君。
悪魔(?)が近くにいるのによく平然としていられるなぁ。
「んで、その怪……じゃなくて、えーと、悪魔はどんな悪さをするんです?」
「……このドリームワールドは雲の上にある小さな世界だ。今、ここは危機的状況に陥っている。悪魔によって、この世界が破壊されてしまったらお前たち人間は永遠の眠りなつくことになる。それを阻止しているんだ」
「……そうなんだ」
「あと、稀に見られる悪夢。お前も見るだろ?あれは悪魔の仕業だ」
「うー、嫌なことするんですねぇ。で、どーするんですか。 どうやって戦えばいいのです?」
まだ半信半疑な私。窓を覗くと悪魔が暴れまわっている。それに反応して身体が身震いした。
「こんなよわっちーのお前みたいなバカでも倒せる」
バカは余計。
「ほらよっ」ツバサ君は段ボール箱から古びたスマートフォン、略してスマホを取り出し、投げつけた。
「これは?」
「スマホ、見ればわかるだろ」
「いや、それはわかります! で、どーするんですか!」
「それで戦うんだよ」
「うん?どういうこと?」
「お前、スマホの扱い慣れてるだろ」
「……え、あ、うん?えーと、ツバサ君は何をおっしゃっているのでしょうか……?」
「だから戦うんだよ! ほんと、バカだな」
「ははは、冗談はよしてくださいよ」
「アホ。スマホ開け」
私はスマホの電源をつけた。画面に映し出されたのはゲーム?
「うーんと、なにこれ。ゲーム?これで遊ぶの?」
「ちげーわバカ。それで戦うんだよ」
え! 楽しそう! やるやる! 戦いたい!
…………ってなるわけないでしょ!
そら、ちょっとは楽しそうとは思ったけど。なんでよりによってスマホで戦うのよ!
かっこいい呪文を唱えると魔法が使えるとか、手から魔法が出るとか、私の淡〜い想いをどうしてくれるんでしょうか。
誰かー! 見つけに行ってください!
「んじゃ戦うぞ」
無理やり手を引っ張られ外に連れ出されかけた。
「無理! 使い方わかんないですしそれに私か弱い女の子ですよ!? 攻撃受けたら一発で死にます!
「アホか。早くするぞ」
「もー」
結局する羽目になるのか。
ちなみに攻撃の種類は四つある。
1、防御 これは敵から身を守るという意味だよね。
2、光の魔法
3、暗闇の魔法
4、ツバサに任せる
こういう感じのゲームはやったことがあるから使い方はだいたいはわかる。この四つの中から一つタップするだけの簡単な操作。
最初は攻撃する数が少ないけれど、おそらくのちに増えて行くタイプだろう。
でも、私には1つ、気になることがあって
「4のツバサに任せるって何?」
「はあ? なんだよそれ。絶対押すなよ」
「うーん、どうしよっかなあ。まあ、そうですねぇ、使わないでいましょう」
「……絶対使う気だろ。まあいい。行くぞ」
「はーい」軽く返事をする。
そして、ドアを開け、外に出た。
怪獣に似た悪魔が口から炎を出している。どこからどう見ても悪魔だ!
草むらは炎に包まれている。
「こいつは下の下の怪獣……じゃなかった。悪魔だ。初めて戦うお前にとっては持ってこいの獲物だな」
「今、怪獣って言ったよね」
私はニヤニヤしてツバサくんを見る。
「言ってねえ」
ツバサくんはそっぽを向いた。
まあ、いいや。ココで一発決めてやろう。
「ふっふっふ。悪魔! お前は私がが殺してやる!」
決まった〜! ツバサくんはすごい目で私をガン見しているけれど。
そんなこんなを言っているうちに私にぬかって悪魔が炎を吹いた。
「えーとえーと、とりあえず自分を守らなきゃ」
ってことは防御を押せばいいんだ! 私は防御を押した。すると私の身体はギリギリセーフで守れた……ではなく。
スマホが壊れていた? ううん。
充電切れ? ううん。
正解はスマホだけを守っていた、でした!
ってなんでこんな時に楽しくクイズなんて出してんのよ!
私のバカ!
そう、そうなのだ。このおんぼろスマホはわたしの身を守ることはおろか、スマホしか守っていないのだ。
私の身体はどうなっかというと
「バカ。防御はスマホしか守らない。そんなこともわからないのか」
と言いながら私をとっさに庇ってくれた。
「あのー、一つ言いたいんですが、普通の人だったら自分の身を守ろうと思うのが普通ですよ?」
「俺はもう助けないからな」
ツバサくんは庇うのをやめた。
えーと、次は光の魔法っていうのを使ってみよっかな。手から魔法がでたりして。それか、スマホが私の身体の中に入って私の身体を操るとか?
想像しただけでもワクワクする!
さっそく、期待を胸に光の魔法を押した。するとスマホのレンズから強い光が出てきた。
その光悪魔に当たると身動きができなくなっていた。
「ああ……。また期待はずれだった……」
「今だ。カメラを選択して悪魔を取るんだ」
「カメラ?」
「スマホの右上にカメラのマークがあるだろ? 」
「これを押して悪魔を撮ればいいんだね」
「ああ」ツバサくんは頷いた。
私はスマホを構えた。
「悪魔さーんわらってわらってー! 」
「アホ。さっさと撮れ」
「はいはい、わかりましたよー」
たく! 面白みもないんだから!
写真を一枚取ると、悪魔はレンズに吸収されていく。びっくりしすぎて身動きを取ることができなくなった。
「お前が固まってどうする」
なんてツバサくんに言われちゃったけど。
悪魔はどんどんスマホに吸収されていき、とうとう消えてしまった。
「あ、あの悪魔はどうなったの?」
「俺の爺さんの話によるとスマホのなかっで良い悪魔になるために、勉強されているらしい」
「良い悪魔ってなによ」
「スマホを見ろ」
ツバサくんに言われた通りスマホを確認。
『捕まえた悪魔一覧』と書いてある。画面にはさっき捕まえた悪魔の写真が表示されている。
「そこに今まで捕まえた悪魔が管理されるようになっている」
「そうなんだ」
「おーもしかして。こいつが眠り姫か?」
女の人の声が聞こえてきた。
振り返ってみると肩に馬鹿でかいハンマーを載せている。
真っ黒に日焼けしていて、神は肩より少し上ぐらい。18歳くらいの女の人だった。
「ね、眠り姫?」
「よっ! 眠り姫! 私はアズサ」
「え、あ、どうも」
私は一礼した。眠り姫ってどういうことだろう。
「あの、眠り姫ってどういうことですか?」
「ん?ああ。眠り姫っていうのはあんた」
「え?私?」
姫って照れちゃうな〜。
「ああ、この世界に人間がくることができるのは、ある力を持っている人だけだ」
「ある力?」
「夢のは選ばれし存在に与えられた称号」
「さーてさて! 改めて自己紹介! 私はアズサ。んで、こっちの冷酷人間がツバサ。ツバサはドリームワールドの王子をやってんだ! 」
え! ? こんな奴が王子?
「おい。夢乃。口に出ているぞ」
「え?あ、すみません」
「特殊な能力があるお前は夢ケ丘学園にいる限り、普通の人間には聞かない睡魔が襲ってくる。
その睡魔を吸ったお前は毎日ドリームワールドにくることになる」
だ、だからこんなに眠かったんだ……って毎日授業中に! ?そんなことをしていたら先生に怒られるよ……。とほほほほ。
「ん?もしかして先生に怒られる心配してる?」
「当たり前ですよ」
「だいじょーぶだいじょーぶ! そんなのすぐになれるって! 楽勝楽勝!」
全てアズサさんに見透かされていた。
「そうそう。初日から大遅刻して、授業中寝て、もう立派な問題児だ」
「私問題児じゃありません!」
「いや、完璧問題児だ」
「違います」
断固拒否する。
「だーかーらー問題児だって!」
「ちがーう!」
「おいおいお前ら! なに会ってしょっぱらから言い張ってんの!」
アズサさんが私とツバサ君を突き放す。
「だってツバサ君が!」
「いや、こいつだろ」
「お前ら会ってからそうそう喧嘩かよ。まあ、この調子ならこれから仲良くできそうだな」
「「どこがだよ!!」
「ほーら、息がぴったり!」
「だから違いますって……」
「おおっ! もしかして眠り姫でござるか」
背後からおじいさんの声がした。振り返ってみると……目が三つあるしわくちゃな老人が……。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
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