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宵闇のヒーロー 青春ハイスクールライフ始めました  作者: 滝藤氷弥
第一章 一年生一学期
1/1

第一章 1『人生、転機は急に』

新しく連載始めました。応援よろしくお願いします。

「今日のターゲットはあの廃工場か。全く、本当にバレねぇとでも思ったのか」


衛星の光がチラつく夜空の下、冬夜はとある高層ビルの屋上から目的地を見つけると、少し助走をつけて飛び降りた。高層ビルほどの大きさでは無いが八階建てである。常人ならまず自殺行為であろう。しかし冬夜は五十メートルくらい先の裏路地に軽々と着地して、ゆっくり歩いて目的地を目指す。


そして五分後、ようやく廃工場の入口の門まで着いた。そして、柵状に形成された鉄の門を蹴り破る。門は勢いよく飛ばされて二十メートル先でバウンドし、カーンカーンと耳に響く音を立てる。


「あー、中の奴らにバレちまったかな?まぁいっか、目的は施設の破壊だけだし。一人や二人捕縛して吐かせればいっか」


そう呟くと冬夜はまず廃工場の前まで走ってから屋根に飛び乗る。


「明かりつけなくても人の気配はバレバレなんだよ!」


言い終えると同時に屋根を鉄拳で突き破る。そして出来た穴から建物の中に侵入すると、中は眩しい光で満ちていて、逃げ遅れた数人の白衣の男が冬夜を見るなり慌てて隣の部屋へ逃げようとする。


「逃がさねぇよ」


冬夜が地面を一蹴りすると、コンクリートの地面にヒビが生えた。そして一瞬のうちに数十メートルという距離を縮めて、最後尾にいた男を二人捕まえる。


「ヒ、ヒィ」


「どうか、い、命だけはー!」


騒ぐ研究者たち。冬夜はチッ、と軽く舌打ちをした後


「うっせーな。おめーらみたいな下っ端にゃ興味ねぇんだよ。どうせあれだろ、上の連中は俺が来る前にトンズラしてお前らみたいな捨て駒は何も知らされずに置いていかれたんだろ。上からの指示だけで動いているようなお前らには興味ねぇよ。俺が叩かなきゃいけないのは元凶の上の連中だ。あいつらを捕えない限りまたどこかで何かしらの非人道的な実験が繰り返される」


冬夜はポケットからスマホを取り出すと、冬夜の雇い主の浅井に電話をかける。プルル、プルルと二回くらい着信音がなったところで向こうが電話に出た。


「お疲れ。終わったのかい?」


「サーセン、失敗しました。どうやら俺が来る前に上の連中はとっとと逃げたらしく捕まえられたのは、実験の本当の目的すら知らなそうな下っ端研究員です」


「そうかそうか。もうすぐ回収員到着するから待ってて。来たら帰っていいよ。あ、あと少し話があるから帰って落ち着いたらこっちに連絡くれないか?」


「分かりました。それじゃまた」


珍しいな、と思いながら冬夜は電話を切った。


「さてと、回収員が来るまで散歩でもするか」


下っ端研究者の二人は部屋の隅で体育座りで震えている。わざわざ脅す必要も無さそうだな、と冬夜は思い隣の部屋に行く。


真っ暗な部屋の明かりを付けると、そこには多数のカプセルと様々な色の培養液と思われる物が多数置いてあった。


「何の研究をしていたんだか」


ポツリと呟きながらさらに奥へと進んでいく。コンピュータが沢山置いてある司令室、研究者たちの仮眠室、実験場と思われる何も無い真っ白の部屋。元工場だけあって広い。ちなみに冬夜が侵入したのはもちろん裏口だ。


「人の気配はない···当然か。おっと、回収員が来たか?」


冬夜が元の部屋に戻ると、武装した回収員五人があの二人を連行していくところだった。彼らは冬夜を見るなり


「「お疲れ様でした!」」


とだけ言って玄関に向かっていく。


「そっちもご苦労さん」


冬夜は返答するなり軽くジャンプして、最初侵入する時に作った天井の穴から外に出る。時間は午前一時過ぎ。東京の街も光が薄れ初め道には警備ロボや酔っ払いくらいしか居ない。コンビニも含めてどこの店も閉まっているこの時代。高層ビルの屋上を渡って帰宅する冬夜から見れば便利な時代かもしれなかったが、もし二十四時間営業が出来るような安全な時代だったら、冬夜という存在は必要ないだろう。


東京の街を駆けながら冬夜はそんなことを考えていた。





************************





21××年。日本の科学技術は発展し続けて、警備ロボの徘徊、防犯カメラの増加により日に日に街は安全になっていた。特に人口の最も多い首都、東京ではそうした影響を強く受けていた。


しかしあくまでそれは昼の話。科学技術の発展は同時に危険なマッドサイエンティストも多数生んでしまった。善良な科学者が世のためを思って開発したものを悪用する、非人道的なことをするのになんの躊躇もない彼らは基本人の少ない夜に行動していた。彼らは夜人さらいすることで実験材料を集めることが多かった。特に子供が夜に忽然と姿を消す事件が相次いだため、人々は夜中の外出を恐れ始めた。日本の政府の要請もあったが、夜中に営業する店は次第に減っていっき、ついには無くなった。


そんな東京の状態を危険と思った政府は、裏でマッドサイエンティスト対策委員会というものを作ったが、この状況を打開する策は見つからなかった。その間にもマッドサイエンティストは増加していく。


そんな時、マッドサイエンティスト対策委員長である浅井は身体能力が生まれつき人の倍以上あるという超人的な少年、冬夜と出会った。浅井は彼を匿い、十歳になった時、彼を対マッドサイエンティスト戦闘要員として、夜中に様々な施設や研究所を襲わせてマッドサイエンティスト達を捕らえていった。


(もうかれこれ仕事始めて七年かー。浅井さんも少し老けたもんな)


五十階建てのタワーマンションの最上階に住む冬夜は、そのマンションの屋上から飛び降りて自分の部屋の玄関の前で着地すると掌をドアの前にかざす。冬夜の手形を認識したドアは自動でガチャ、と鍵が開いた。


誰もいない真っ暗な部屋にあがり電気を付ける。リビングにはテーブルやテレビといった必要最低限のものしか置いていない。


(シャワー浴びたいけど、先に浅井さんに電話するか)


プルル、プルルとコール音が鳴りまたしてもツーコールで浅井が応答する。


「もう家に着いたんだ。今日の廃工場結構遠かったしもっと遅いと思っていたよ」


「あー痴話話は飛ばして本題入って貰えますか?すいませんが早くシャワー浴びたいので」


「ハハ、ごめんね。まず単刀直入に言うと来月、四月七日から君には高校に入学してもらう」


「···はい?」


「君も来年十六歳だからちょうど高一でしょ。学力も君みたいな秀才は問題な···」


「いやいやいやいやいやいや待って下さいって。なんで急にそんなことになるんですか!?俺生まれてこれまで闇の世界でしか生きてこなかったのに無理ですよ」


冬夜は必死に無理だと言い張る。なんせ冬夜は記憶がついてから浅井さんと共に闇の世界を歩き、義務教育も受けていない。学力は多分問題ない、むしろ難関大学入試問題もスラスラ解けるくらいはあるだろうが、コミュニケーションと何より力加減の問題がとても不安である。


「驚くのも行きたくないのも分かるけど、僕が君に高校へ行って欲しい理由は二つある。一つ目は君も最近耳にしただろうけど君の噂が都市伝説で流れ始めている。一番新しいものだと『東京の治安は一人の超人が守ってて、夜に街を徘徊している』なんてのも出ている。警察とか役所とかには君の存在は知られていないから君のことが世間バレたら、大混乱が起きてしまう」


「政府の力で何とかなんないの?」


「難しいだろう。なんせ僕達も裏の人間だしね」


冬夜は思わずハァーとため息をついてしまった。浅井は話を続ける。


「そして二つ目こそ重要なんだ。君が通ってもらう高校にはあのマッドサイエンティストに関する情報が隠されているという情報を掴んだ。君には潜入の意味も込めて登校してもらいたい」


「·······あー、分かりました。任務なら仕方ない。やりますよ、送りますよ、ハイスクールライフ」


冬夜は明確な理由を二つ挙げられるとあっさり降参した。


「納得してくれてよかったよ。じゃあ手続きは全部こっちで済ましとくから、来週頃に制服送っとくね」


「はい。それでは」


とっとと電話を切って座り込む。二週間後に急に始まろうとしている高校生活。冬夜は不安いっぱいのまま

二週間を過ごした。

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