六章09 再び
幾度となく放たれる数多の雷と青い光線が、巨竜の身体を削っていく。
その身を守っていた鱗が、剥がれ落ちていく。
「――――!」
巨竜が唸る。ククリもカトラもグラッチェも、あまりの騒音に耳を押さえた。
試行錯誤の結果、巨竜の首筋の辺りから下へ、楕円を描くように回るのが一番安全だと分かったが……唯一の問題はこのルートだと、とにかく耳が痛いということだ。
「頭が痛くなってきたッスね……」
だが、状況はかなり良くなったといえる。
一人では、一切勝機が見えなかった。――だが三人と一匹なら、勝機があるかもしれない。
どれだけ攻撃しても、山のような巨竜の身体には軽微な傷しか与えられない。それでも、それを何度も繰り返せば。
「…………まだ、足らないか」
いや、違う。
手数は足りている。既にこの場は三人だけじゃない、巨城の周りを飛んでいた兵士達も駆けつけている。
問題なのは、どんな攻撃も巨竜には致命傷たり得ないということ。
――そして、戦いが長引いてはいけないということだ。
巨竜の足下の街や城が破壊されてしまうのは勿論だが……気になるのは、融合した三人のことだ。
ギンドロの行った融合がどういった効果なのか、ククリには分からない。……だが、仮説を立てることはできる。
ナタは、自身の意思の力で「竜化」の力を押さえていた。それが融合した途端「竜化」が進み、暴走したなら。……おそらく、今三人の意識は溶け合っている。
ナタ以外は「竜化」の狂気に対抗できなかった。もしくは、そもそもそんな気が無かった。その結果、竜化が進み巨竜になったのだ。
どうにかして巨竜を倒し、融合を解いたとして、三人の意識が混ざったまま解除されては困る。融合して長い時間経てば、もう元に戻れないかもしれない。
「所詮推測ッス。けど……」
早めに解いた方が、いいに決まってる。
「…………」
ククリが悩んでいると、近くに、ワイバーンに乗った一人の兵士がやってきた。
咄嗟に身構えると、相手は慌てて首を振り、武器を収めた。
「違います。私は話をしに来たのです」
「話? ――先程の戦いのことか?」
カトラの目が、スッと細まる。
「い、いえ。違います。――我々にとって今問題なのは、この巨竜です。街を滅ぼそうとするアレと戦うあなた方は、私達にとって味方です」
「今は、か。……敵の敵は味方、ってことッスね」
「…………はい」
兵士が頷く。それで? とククリは続きを促した。
「我々は、あなたの持つ、その『光線のカード』の力を貸していただきたいのです」
「カードを寄越せと?」
「はい。……もしくは、このような安全な場所ではなく、ドラゴンの顔に近づき、目に直接光線を撃って欲しいのです。幾らあの巨体でも、目は弱点に違いありません」
……何スかね、ソレは。
なるほど。それは妙案だ! ……とでも言うと思ったか?
「愚問にもほどがある。それは、命を捨てろ、と言っているようなものだぞ」
怒気を含んだ声を兵士に浴びせながら、カトラは兵士を睨んだ。
「いえ、決してそうなりはしません。あなた方の武勇を持ってすれば……」
兵士は、そこから先を言うことができなかった。
カトラが放つ強い殺意が身を竦ませ、兵士は言葉を発することさせできなくなる。
「…………殺すか」
カトラの手がカードに伸びていくのを見て、ククリは慌ててそれを制した。
「待つッス。……分かった。その提案を飲もう」
ククリの言葉に、カトラが目を見開く。
「正気か?」
兵士も受け入れられたのが意外だったのか、目を瞬かせる。
「ああ。――――勿論、無条件で、というわけじゃないッスけど」
ククリは条件を言いながら、また今回も分の悪そうな賭けに出るなぁ、と我ながら思った。




