六章03 失われたカード
「ギンドロが持っていたンスね……俺のカード……」
戦いを忘れ、ギンドロの手に握られたカードを注視する。
――――青い鳥が撃ち抜かれる絵。「エネルギー弾・タイプX」と書かれたカード。
……盗まれた、ククリのカード。
それを手に、ギンドロは酷薄な笑みを浮かべた。
「ああ。お前がカードを盗まれた後、アイツを殺して奪った。……少々、後味は悪かったがな」
「返せ。……それは、俺のカードッス」
ギンドロは肩をすくめた。
「返すわけが無い。もはやこれは俺のカードだ。盗まれた後、お前はカードを取り戻す努力をしなかった。なら、もう俺のものだ。――一度諦めたものが再び目の前に現れたからといって、それはもう二度と手に入りはしない」
「なんだと……」
言っていることは、それほど間違っていないと思う。
だからこそ、腹立たしい。
ナタに人体実験した男にこうも好き放題されて、腹が立つに決まってる。
「お二方、喧嘩をしている場合では無い。……見よ」
バリアが破れ、城がむき出しになったからだろう。
敵は散開していた部隊を城の前に集め、ククリ達の接近を阻んだ。そして同時に、ククリ達を待ち構えていた部隊が待つのを止めて、突進してくる。
あの巨大な光線を見たからだろう。
多くの犠牲が出る前に、勝負を付けたいのだ。
「――――下らん。何をしようが無駄だ」
ギンドロは笑い、カードを構える。
エネルギー弾・タイプX。
見た限り、狙ったモノのみを破壊する巨大なエネルギーの塊だろうか。
「これさえあれば敵は存在しない。……ワイバーンを残らず消し飛ばしてやる」
それを聞いた瞬間、グラッチェが鬼のような形相で振り向いてギンドロを睨んだ。
「止めろ。……ワイバーン乗りとして、それは聞き捨てならん」
グラッチェの変わり様を見て、ギンドロは笑った。
「はっ、ならどうする? お前の腕で、ここから安全に離脱できると? ……できないなら、撃つぞ?」
挑発的なギンドロの言葉に、グラッチェは俯いた。だが……。
「…………分かった」
初めて、ギンドロが熱の籠もった瞳で前を睨む。
相棒の本気を感じ取り、ワイバーンのライも嬉しそうに鳴いた。
待ち構えていた敵達に突っ込むように加速し――――一切減速せずに、急カーブする。
大通りを避け、迷路のような小路を飛ぶ。背後から、ククリ達を追って壁に激突する音が連続した。
そして唐突に、アクロバティックな動きで空高く舞い上がる。
数秒遅れて弾丸の嵐がククリ達の背を追う。だが、余りに唐突な動きについてこれず、結局一発も当たることなく雲間に紛れた。
雲間に紛れたククリ達を追うように、兵士達も追う。……だが同士討ちを恐れ、近づくことができない。
――――グラッチェは再び、鋭い槍の一撃の如く急降下し、巨城の前で待ち構える兵士達に突進する。
「っ!」
降り注ぐ弾雨に、ククリが慌ててバリアを展開した。
薄く広く展開されていた兵士達は蹴散らされ、居城の一角に突っ込んだ。
「……これで文句ないだろう?」
グラッチェが鼻を鳴らす。
「危険すぎだ……文句しかないぞ」
溜め息を吐いて、ギンドロはライから降りた。
「同感だ」
「むちゃくちゃッスね」
誰もが文句を言ったが――結果として、城に着いたのは確かだった。
「まぁ助かったッス。ここまでありがとう。これで借りはチャラッス」
「むしろ返しすぎたくらいだ。ほとんど詐欺だ」
「お互い様ッスよ」
ククリはニヤッと笑うと、グラッチェに背を向けた。
「これから城内で暴れるから、隙を見て脱出してくれ。――じゃあ、達者で」




