六章01 空の旅路と忠告
――空高く舞い上がったワイバーンに乗って、四人は迅速にNo.7を脱出し、首都No.0に向かった。
見慣れた町並みは点のように小さくなり、雲海が間近に迫る。
グラッチェの相棒であるワイバーンのライは、四人乗せたところで苦しい顔一つ見せない。積載量が馬に劣ると聞いていたが、それでもこの程度なら問題ないということか。
ただ、聞いているのと実際に目にするのは違う。
ククリは久々にライを見て、少し感心していた。
ちゃんと四人乗れたこともそうだし、ほんの一時しか乗っていなかったのに、ライがきちんとククリを覚えていたことも意外だった。思っていたより、かなり賢いらしい。
「……それにしても驚いた。流石に負けるなと思っていたが、まさか人間を辞めて勝つとはな」
ギンドロがククリを見て笑う。
ククリは顔をしかめる。ナタを陥れた組織の幹部であるギンドロは、なるべく話したくない相手だった。
「別に。……必要だから、そうしただけッス」
「必要だから、で人間を棄てられるのか。……やはりお前は人間性が薄い。理屈さえあれば、感情抜きで動く」
「誰でもやってることじゃないッスか?」
「理屈と感情は別だ。そう簡単に人間であることは棄てられないし、聞いたところによると、ナタはお前の思い人なんだろう? 思い人を害した人間と、こんな簡単に手を組めない。……度が過ぎているのだ、お前の場合」
「馬鹿にしているんスか?」
「いや、褒めているんだ。その能力は素晴らしい。そうそう余人には獲得できない力だ」
「そうか? 俺には、イカレてるようにしか見えない」
「ギンドロ殿が褒めているのは、協力者としてであろう。……ククリ、理屈で動くのはいいが、もう少し自分を大事にしろ。それに、人を頼れ。人間であることを棄てずとも、小生達に助けを呼ぶなり、他に方法はあったはずだ」
いや、無かったと思うし、これが最善だと思うンスけどねぇ……。
正直、理解できない。……人間であることがそこまで大切か? あの状況下の最善はコレだ。そこに間違いは無いハズだ。
そう思ったが、ククリは何も言わなかった。
理解できなくても気を遣われていることは分かる。その気持ちを足蹴にしたくなかった。
「というか、いつ吸血鬼化のカード回収したのだ? 小生達に黙って」
「意識を取り戻した後すぐだ。特に意味なく回収しただけだったンスけど、意外に役に立ったッスね」
嘘だけど。ホントは、金ににするつもりでこっそり取ってきたのだ。……さすがにそれは言わない方がいいだろう。
「そうか……?」
首を傾げつつも、カトラはそれ以上は聞かなかった。よほど純粋なのか、さほど気にしていないらしい。……ククリは、カトラに言っていなかったことが、今更ながら申し訳なくなった。
「悪かったッスね、言ってなくて」
「いや、それはかまわない。元より吸血鬼に勝ったのはククリの活躍によるところが大きい。アビリティカードを得るのは、ククリで問題ない」
そこは問題だと思ってないらしい。ククリはホッとした。
「小生が言いたいことは一つだけだ。……あまり、突っ走らないで欲しい。汝はもう一人では無い。ナタを助け出したいと願うのはいい。だが、そのために極力自分を犠牲にするな。……No.0まではまだ長い。よく考えておいてくれ」
真摯な眼差しでカトラは告げた。それに気圧されるように、
「――――分かった」
理解できないまま、ククリは頷く。
「…………」
ギンドロは二人の会話を黙って聞き、一度だけククリを見たが、結局、何も言わなかった。
風を切り裂き、ワイバーンが空を駆ける。――――そして駆けること三日。ようやく首都が見えてきた。
雲間に隠れながらの空の旅に飽きてきていた一同は、歓声を上げる。
ククリもまた歓声を上げながら、しかし同時に、首を傾げていた。
三日前にカトラに言われた忠告を、脳内で反芻する。
…………結局、ククリはカトラの忠告を理解できなかった。
遅れたので二話投稿。次はまた二日後投稿します。
物語も、いよいよ佳境を迎えつつありますね。




