序章5 蛇足
「やったぜ! これで、この最強のカードは俺のものだ!」
タウンNo.7の町の片隅を、リールズは一人歩いている。
侮っていた少年に手こずらされた挙句、銀貨を二枚も失ったため、仲間達には見限られてしまった。だが、今となっては不幸中の幸いだ。
これで山分けする必要は無い。このカードを売って手に入る大金は、全てリールズのものだ。
ヒューマノイドに撃たれ、倒れた時。リールズはこっそり、隣に倒れていたククリからカードを奪っていた。
青い鳥が撃ち抜かれる姿が描かれたカード。
「エネルギー弾・タイプX」
転生者が持つ、強力なスキルカード。
カードを見て、思わずリールズはほくそ笑む。
「これで、俺も金持ちの仲間入りだ……!」
「――――それは、残念だったな」
顎に奔る衝撃と、力が入らなくなる身体。実行犯を除いて誰にも見られることなく、リールズの身体は、誰もいない路地裏に引きずり込まれた。
「悪ぃな、人の夢を潰して。……でも、こっちも仕事なんでな」
実行犯の姿は、リールズにも見覚えがあった。
さっきの賭博場にいた、ダークスーツの男だった。
力の入らなくなった掌から、カードが剥ぎ取られる。
それを阻止しようと、無我夢中でリールズはカードを掴む。
「ふ、ざ、けん、な……! これは、俺の、おれの、オレの……!!」
その執念に、その自己中心的な価値観に、ギンドロは呆れたような感心したような、どちらともいえない顔になった。
「脳震盪を起こして、まともに動けないハズなんだがな。……まったく、凄まじい執着だ」
そして拳銃を取り出し、リールズの額に銃口をピタリと当てた。
「――――なら、スマンが死んでくれ。……ウチの利益のために」
無慈悲な宣言と共に、銃弾が発射される。
僅かにリールズ……リールズだったモノの頭が後ろに下がり、弾丸がリールズの頭蓋骨を貫通し、脳をずたずたにした。
「…………」
ギンドロは僅かな時間黙祷し、カードとリールズの財布を回収すると、死体を近くのゴミ箱に押し込み、油をかけて火を放った。
次第に燃え上がり、煙を放つゴミ箱から速やかに離れつつ、財布を開き中を確認する。
「あった。ギルド会員 リールズ・ハッバー。……これならモミ消しは簡単そうだな」
すばやく確認を終え、必要なものを取り出すと、その財布もゴミ箱に投げ入れる。
「必死だったな。……過去に金持ちに酷い目に合わされたか、それとも養うべき家族か彼女でもいたのか?」
少しだけ気になったが、ギンドロはかぶりを振り、忘れることにした。
どのみち彼はもういない。たった今殺したのだ。
数日後、リールズの退会依頼書がギルドに届き、マレは深く考えず「ククリとの喧嘩で、顔を出しづらくなったんだろうな」と思って、これを受理した。
彼の焼死体と放火は近隣住民によって通報されたものの、揉み消され。
――――そして彼の実在した痕跡は、日常という現実に埋没し、誰にも見えなくなった。
ひとまずこれで序章は終わりです。ヒロイン? ……知らない子ですね……。次章では苦肉の策として女性キャラを増やしましたが、どいつもメインヒロインよりキャラが立ってる気がする……。




