五章09 嵐前
躊躇いは無い。
ギンドロが元「8」の幹部と知ってすぐに、ククリは軍刀を振った。
首筋を狙った、必殺の一撃だった。
それをある程度予想していたのか、ギンドロは即座に後方に飛び避けた。
少し遅れて、ククリもバックステップする。
中距離から遠距離。自身にとってベストな間合いに移り、爆裂弾を撃った。
「おっと。……話し合い、とはいかなそうだな」
「当たり前ッス」
バリアカードで爆裂弾の直撃を防ぎ、改めてギンドロが問う。
「よく考えてみろ。バラバラになった「8」は最早お前達の脅威じゃない。むしろ、アルカナシアに復讐を誓う仲間だ。敵の敵は味方、というだろう?」
「どこがッスか。俺達がナタを取り返したとき、それを利用するつもりッスよね?」
「そこは否定しないとも。なら、つかの間の協力、というのはどうだ?」
ククリはそれを聞いて、少し考える。……話は筋が通っている、と思う。
改めて、ギンドロを見る。
前会ったときと同様、頼りがいのある兄貴といった風貌と雰囲気で、頭も切れそうだ。
――――コイツ、俺に御しきれるか?
そうは、思えないッスね。
絶対どこかで裏切る。利用されて棄てられそうだ。
早々に倒しておいた方がいい。
ククリは、そう判断した。
「――――あいにく、その話には乗れないな」
爆裂砲のカードを、ククリは取り出した。
「――――そうか。……もう少し利口な奴だと思っていたが」
ギンドロもまた、複数枚のカードの束を取り出した。
一触即発の空気の中、唐突に、グラッチェ以外の誰もが別の方向を向いた。
無数の足音。それに、銃声が四つ。
四つの弾丸は四人の頭上を駆け抜けて、二頭のワイバーンの両翼を撃ち抜いた。
「ライ、グル……!」
それを見て、グラッチェが悲痛な声を漏らした。
「――ターゲット発見。移動手段の排除に成功しました」
増援と参が到着したのだ。
「……揉めている場合じゃなさそうだな」
ギンドロはククリの方を見た。
「幸い、俺は治癒系カードを持っている。俺が治しておくから、お前達でアレの相手をしてくれ」
潜在的に脅威であり、敵であるギンドロと、今まさに目の前の脅威である増援の兵士と参。どちらを優先すべきか? ……そんなの、決まっていた。
「…………分かった」
渋々、といった様子でククリは応じた。
ニヤッ、とギンドロは笑う。
「では、協力関係といこうか」
ククリは苛立ちとドス黒い感情を無理矢理押し込め、口角を上げた。
「ああ。……よろしくッス」
増援を砲撃系カードを借りたカトラとグラッチェに任せ、ククリは参と対峙した。
「対象を指名手配犯ククリと識別します」
参は機械的にそう言った。感情らしいものは見られない。
「よかった。……意思があったらこっちもやりづらいッスからね」
数秒の間を置いて、参は答えた。
「私は戦闘用AIです。――あなた同様、余分な要素は持ち合わせていません」
参が腕を上げた。指先が、赤く光る。
ククリもまた、ホロハロとノノンから貰ったバリアカード「広域バリアC」を発動し、鬼の右腕を起動。雷鳴弾のカードを構えた。
「「…・・・・・・・・・」」
二人が睨み合う。
――――障害物が何も無い、コンクリートが敷き詰められた敷地内。
No.7最後の戦いが、始まろうとしていた。
次からようやくバトル書けそう。




