五章04 難敵達Ⅱ
「降伏してくれないッスか?」
窓の割れきった廃ビルの中。ククリがそう言うと、ホロハロが嘲笑った。
「それも悪くなかった。……さっきまではな」
「こうも実力がある相手なら、ぜひ戦ってみたい」
「そりゃ残念。バリアも破ったのに」
「あなたには見せていませんでしたね。私達も、変わらないはずがないじゃないですか」
ノノンは不敵に笑うと、ポケットからカードを取り出した。
オーラを発する剣が描かれたカード。
これまでにない新戦術を試すために、購入したカードだ。
「発動。……剣よ、舞って」
ささやくように、ノノンは呟き、愛剣を撫でた。
「……なんなんスかね」
降伏は拒否。だが、決して柱の影から出ない。二人して隠れたままだ。
爆裂砲で破壊できるとは思うが……このボロビルだと、柱一つで崩壊しかねない。生き埋めはごめんだ。最後の手段だろう。
ククリもまた別の柱に隠れながら、二人の様子をうかがう。
「本当に、どういうことなンスかね。逃げないし、攻撃も一切無いな」
謎だ。そう、首を傾げていたとき、きらりと薄暗い廃ビルの中に銀色の光が奔った。
「!」
無風の筈の室内で、風を切る音が耳に届く。
とっさに頭を下げると、頭上を剣が飛んでいった。
剣を握っている者はいない。
誰もいないのに、剣は振られていた。いや、その軌道は「振る」というよりは、「飛ぶ」という方が正しい。
「そういうことか」
これがノノンの言っていた、俺には見せていない新しいカードか。
再び、剣がククリの方を向く。今度はクルクルと円を描くように、回転しながら飛んできた。
ククリはそれも無事に避けることができたが、柱から出てしまった。
「……もらった」
静かに声を出して、ホロハロは飛び出したククリに狙いを定めた。
だがホロハロが銃を撃つ前に、それを予期していたククリが鬼の右腕で床を叩き、這うように飛んで別の柱に隠れてしまった。
「こっちの意図、バレてるね」
「…………業腹だがそのようだな。問題は、どう対策されるのかということだな」
ノノンは剣を操作し、再びククリを追い詰める。
ホロハロはククリの隠れた柱から目を離さず、じっと機会を待った。
頭上を飛んでいった剣が向き直り、再びこちらを向いて飛んでくる。
くらうわけにはいかない。だが、これを避けるとまた柱の外に出てしまう。ホロハロの腕なら、今度は当てられるだろう。
「こなくそっ」
ククリは軍刀を握ると、剣とぶつけてはじき飛ばした。
念のため鬼の右腕を起動させて弾いたが、浮遊する剣にはそれほど力は無いらしい。剣はくるくると遠くまで飛んでいった。そしてククリは痛恨のミスに気づいた。
「暗いからどこいったか分からないッスね……」
遠いと何も見えない。
剣が自動でカード使用者の敵を攻撃しているならヤバい。そうではなく、ノノンが操作しているなら、この暗闇だし、しばらくは思うように動かせないはずだ。……その後はやっぱり不意打ちを食らうが。
……だがまぁ、それほど問題は無い。
どのみち、これでは埒があかない。こっちは防戦一方でジリ貧だ。
こうなれば、先手必勝しかない。
ククリは躊躇い無く爆裂砲を撃った。
「「――――!」」
二人の隠れていた柱が、木っ端微塵に吹き飛んだ。
悲鳴が聞こえる。ククリは爆裂弾を連射しながら突進した。
「クソ、こんな場所で高火力砲を放つヤツがあるか……!」
舌打ちしながら、ホロハロが立ち上がり銃を構えたのが見える。
閃光。
ククリは唐突に、使用するカードを雷鳴弾に切り替えた。
爆裂弾よりも遙かに眩い。
暗いこの場所に慣れた目には辛い閃光は、目くらましにはちょうどよかった。
ククリは確かな手応えを感じ、ホロハロのうめき声を、確かに聞いた。
一方で、ククリもまた肩に銃弾を食らった。幸い右肩で、義手にへこみができただけで怪我は無かった。
「ホロハロッ」
ノノンが慌てた声を出した。
廃ビルは柱が無くなったことで、少しづつ、傾き始めていた。じきに倒れるだろう。
……勝敗は決まったし、いいかな。
「ほら。そっち持って」
ククリはノノンと一緒に気絶中のホロハロを運び出した。
時々ブックマークが増えてて、すっごい嬉しいんだけど、なぜ全員ポイント評価2ポイントなんだろうか…… 空気読んだに違いないな(確信)
いつも読んでくれてありがとうございます。




