表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/62

四章01 邂逅


「――――その者たちを、捕えろ」


 褒美を与えると呼ばれ、付け焼刃の作法で頭を垂れて待っていると、館に入ってきた麗人がそう言った。


 ……ンナ馬鹿な。こっちは腕を失いながらも敵の首魁を倒し、皇子の仇を討ったンスけどぉ?


 理不尽な上に、意味不明だ。だが頭を上げると、麗人の部下である兵士達が銃を構え、こちらに向かって来ていた。

「んなっ、何で――」

「それはこちらのセリフ。――なぜそちの横にいる娘が、我が妹、ナタスタシアの姿をしておる?」

「…………妹?」

「いかにも。ナタスタシア・ルーイス・ダタン。謀殺されたはずの我が妹だ。なぜ……全く同じ顔の娘が、そちの隣にいる? 偽者であれ、()()であれ。皇族を連れているやもしれぬ以上、そちは裁かれるべき者だ」

 凛とした声が、館のエントランスに響き渡る。

 ククリは、ナタを見た。いつもと変わらぬ横顔。()()()()()()()()()何かが……。


「……久しぶり。アルカナシア姉さん」

 その言い方に、その態度に、その雰囲気に。

 飲まれかける。その場にいる、誰もが。


「……我はまだそちを妹とは認めておらぬ」

 ナタが何も無い空中に手をかざす。――掌に白く淡い光が集束し、一枚のカードが現れる。

 俗に、「固有スキルカード」と呼ばれる、自身の努力や才覚が結晶化したカード。

 それには、玉座に座る女の姿が描かれていた。


「王者の風格S。……なるほど。その逸話を知っておるか。確かに、ナタスタシアはそのカードを持って生まれたが故に、末子でありながら玉座に座るべき者になった」

「……これを見ても、私を妹と認める気は無い?」

「我ら皇族を嵌めようとした者だとすれば、ナタスタシアのその逸話、知らぬはずがあるまい。何かしらの偽装工作を施していたとしても、ありえぬ話ではない。……全ては、連れて帰ってから調べよう」

 ナタスタシアは近付く兵士達を一睨みすると、改めてアルカナシアに問うた。


「――――その帰る間に、私、『事故』に合うんじゃない?」


 アルカナシアが、僅かな逡巡の後に、それを否定する。

「何を言うか。我を侮辱すると、妹だろうとそうでなかろうと許さぬぞ」

 ナタは首を振った。もういい、と言うように。

「玉座如きに、私は興味ない。……下らない政戦に巻き込まないで」

 ため息を吐き、アルカナシアは即座に首を振る、

「そうもいかぬのだ、……()()()()()()

 そしてアルカナシアはもう一度、兵士達に告げた。捕縛せよ、と。

「……どいて」

 ナタがぽつりと呟く。それだけで兵士達はビクッと身体をすくめたが――アルカナシアの命令は絶対だ。

 銃とナイフを構えながら、兵士達は少しづつ、ナタに近付いた。




 ……どういうことッスかね、本当に。

 大金星を上げたというのに、報酬が無いどころか、捕縛されそうになっているし。会話の端々から物騒な言葉が漏れ聞こえるし。


 全く、酷い話だ。


 いつもこうだ。俺が命を賭けて高い代償を払った結果、得られるものはごく僅か。それどころか、今回にいたっては新しいトラブル付きだ。

「……ま、いいか」

 もう慣れた。

 ククリはポケットを確認する。カードは全て入っている。問題ない。

 だが、ククリが動く前に動く影があった。




「――小生、少し気にいらぬな」

 そう言ったのは、巨大な魔物の骨を加工した大剣を背に担ぎ、褐色の肌に、真っ白な髪がきれいな少女。

「……そちは、誰だ?」

「タウンNo.13出身。這い出る亡霊 カトラ・スーだ」

「そぅか。……もう興味はない。失せよ」

 アルカナシアの態度に、カトラは舌打ちする。

「これだから高貴な者という奴は……。やはり小生、微力ながらもククリ達に加勢しよう。報酬一つ払わぬ外道、殺した方が世のためだ」

「そうか。――悪いが我は貴様の生き死にには興味がない」

 その言葉を聞き、兵士達が発砲する。

 だが、やはりというべきかその弾丸は届かない。

 カトラの周囲にバリアが展開し、弾丸を弾く。……そのまま、カトラはアルカナシアに特攻する。


 ――それを、同じ冒険者である女騎士ノノンが受け止める。

「落ち着きましょう? 皇族を殺すつもり?」

「無論。命の価値は皆平等。皇族も、小生達有害都市の者も。……いつか奴らを殺したいと、故郷でドロを啜りながらよく思っていものだ」

 剣戟が舞う。カトラが力任せに大振りの剣を振るい、ノノンがそれを丁寧かつ慎重な剣技で受け止め、弾く。

 戦いは膠着しているかのように見えた。が、そもそも二人に流れる時間は対等ではない。


 混沌とした状況。周囲の者には現状がまだイマイチ理解できていない。……だが、一つだけ確かなことがある。


 ――――皇族にして、次に帝として君臨する者――――アルカナシアの命令は絶対だということだ。


 我も我もと、次々に冒険者達がノノンに加勢する。


 ククリはそんな彼らを一瞥し、

「カトラ、下がれ!」

 一声かけると、爆裂砲のカードを取り出し、天井を撃った。

 吸血鬼が死に、この屋敷を守っていた保護の魔術は最早無い。

 あっさりと天井に穴が開き、瓦礫が次々と落ちてくる。

 カトラに集中し、ククリへの警戒が疎かになっていたアルカナシアと兵士達

 は、瓦礫の山に飲まれた。

「……後でしっかり説明してもらうッスよ」

 ナタの手を握り、ククリは窓を破り館に背を向けて走り出す。

「…………うん」

 ククリに手を引かれて、ナタも駆け出した。

 二度と、アルカナシアを振り返りはしなかった。






 背後からアルカナシアの怒声が届く。

 ククリ達は馬車を一つ奪うと、カトラと共に森を走った。

 束の間の、平和な一時。

 だが三人が森を駆ける間に、緊急クエストが国中に発令される。

 皇族を騙る逆賊三名の捕獲クエスト、現帝による最後の勅令。


『末葉の選定』


 ――――吸血鬼を倒し、英雄になるはずだった(ククリ)は、国家と相対することになった。

本編とは無関係なことだけども。

今、左腕の肘にヒビ入って療養してるんだけど、おんなじアパートのばあさんがしょっちゅう尋ねて来てくれる件。すごいありがたいんだけど、ちょくちょくウチの中覗くのは勘弁してくれ……。何か色々くれるし、孫感覚なのかな……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ