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三章09

昨日は投稿できず、申し訳ありません。

 激しい争奪戦の結果、ククリとナタはどうにか馬車の座席を確保することができた。これで目的地に着くまで荷馬車に鮨詰め、という最悪の事態は回避される。

 後は一度タウンNo.11で停泊し、明日の昼過ぎには目的地に着く筈だ。


「目的地は呪われた地、ラナの森「血塗れ吸血鬼城跡地」……か。どんな所なンスかね」

 ククリの疑問に、ナタが律儀に答える。

「約百年前に討伐された上位吸血鬼の居城跡地。彼の死後、定期的に死霊が溢れだすようになり、それこそが彼の「呪い」だと噂されている」

「呪いね。……そんなもの、ホントに実在するんスか?」

「……私は、魔術についてよく知らない。ただ、風の噂でそう言ったものが「在る」と聞いたことがある。……術者の死後、百年も在り続けるだけの力がある魔術なのかは、知らないけど」

「結局、未だ謎のまま、って言うのが結論になるンすか?」

「そう」

 出所不明の、謎の無限湧きアンデットか……。

 何かイヤだな……。

「怪談ってことで、夏を終えるには悪くない、最後のイベントかな」

 それを聞いた、ナタが呟く。 



「……もう、初秋だよ」




 どれほどの時間が過ぎたのだろうか。タウンNo.7を出発した馬車の軍団は、でこぼことした地面を走り続け、太陽が沈んだ頃、ようやくタウンNo.11に辿り着いた。

 この世界、もしくはこの国は、前世と比べ交通網が発達していないらしい。

 No.7もスラム扱いされる町だが、トラックは通るし、道路はきちんと整備されている場所が殆どだ。

 だがこの辺りは殆ど整備されていないし、トラックが燃料を補給できそうな場所が無い。だから馬車なのだろう。

 何度もガタガタと揺れるので、果てしなく長い時間乗っていたような気がした。

「ようやく着いたッスか……」

 疲れ果てた顔で、ククリは馬車から出る。その後ろに、少しやつれたナタが続いた。

 降りた所は荒野だった。暫く馬車に乗る必要がある程度に離れたところに、ラナの森が見えた。その反対側には、廃墟……いや、街が見えた。

 倒壊している建物も多く、一目見ただけで老朽化が進んでいることが分かる。


 馬車から吐き出された冒険者達は、列を作って並ばされた。そしてその列の前に、二人の男が現れる。

 一人は筋骨隆々とした、髪を短く剃り上げた偉丈夫。もう一人は、長い髪を結った細身の男性。偉丈夫が軍服を着込んでいるのとは対照的に、細身の男性は荘厳な装飾の施された鎧を纏っていた。鎧は薄手で実践的ではなく、あくまで儀礼用らしい。アイマスクのような白い仮面を被り、顔を隠していた。

 二人の近くにいた別の男が、偉丈夫が今回のクエストの軍事顧問でレンベルガという冒険者であり、細身の男こそがこの国の皇子が一人――ジョン皇子だと説明する。

「私はジョン皇子殿下の護衛・指揮を補助する任を承ったタウンNo.0の上位冒険者レンベルガだ。諸君、ご覧の通り今回は皇子殿下もおられる。普段、我々の生活を助け、支えてくれるこの国を育んでいるのは何か、それは誰もが知っていよう。――我々臣民の弛まぬ努力と、皇家のお導きによるものだ。なればこそ、我々冒険者もまた、故国のために努力する姿を、皇家の方々に示さねばならぬ。諸君らには、一層の武勇を望む」

 レンベルガはそう言って一歩後ろに下がり頭を垂れた。

 入れ代わるように、細身の男性――ダタン帝国の皇子『ジョン』が前に出た。

「――――我が愛しき民達よ。余がアーサー皇帝の血を継ぐ者、ダタン皇家血統の正統なる継承者、ジョン・ルーイス・ダタンである」

 一先ずそう言うと、皇子は口を閉じ周囲を見渡した。そして一呼吸の後に、また言葉を紡ぎ始める。

「皆の者、此度のクエスト受諾の件、真に大儀である。皇家と臣民達を代表し、余が代わって礼を言おう。……余がこのような身でこの場に来て、困惑している者もいよう。……確かに、余は此度ただ見守るのみだ。指揮も、ご推察の通りレンベルガに任せてある。余はそなた達のその仕事ぶりを眺めるだけで、邪魔をしない代わりに、援助もしない。ただ勿論、諸君らに気を使わせただけで、何もせずに帰るつもりも無い」

 そう言うと、皇子は一枚の紙を掲げた。

「これは証書だ。余自らが、諸君らに約束しよう。此度のクエストにおいて格別の成果を上げた者達に対し、我が家財から追加で最大金貨百枚の追加報酬と、『市民権』の付与を与えてやろう」


 ――――割れんばかりの、歓声が上がった。

 

 膨大な報酬。シンプルだが、だからこそ人を沸かせるもの。


 興奮した冒険者達の姿を見て、皇子は笑った。

「諸君らが喜んでくれたようで何より。――ではこれより、ここで野営し休息をとる。酒も少しだが振舞おう。明日に備え、心行くまで楽しんでくれたまえ」


 歓声は益々大きくなった。

 ……そしてその中には、目を¥マークに変えたククリもいた。




「これは俺達も本気ださないとな」

「ですね」

 野営のテントにいると、ノノンとホロハロが訪ねてきた。

 風呂上りのようで、二人とも頬が少し上気していた。そういえば、彼らは個別のテントを貸し出されていた。……風呂無し、共同テントのククリ達とは待遇がまるで違うらしい。

「勘弁してくださいッス。俺達が取れる分の金貨がなくなっちまう」

「何贅沢言ってる? 金貨なんぞ庶民は無論、お前達新人には過ぎたる代物だろうが」

「そうです。早いうちからカードや装備に頼るクセがついてしまいますよ」

 ……二人の言葉に、ククリはぐうの音もでなかった。なので、早々に話題を変えるべくナタに話を振った。

「そうそう、忘れたッス。なぁ、馬車乗る前に話していた『二桁ナンバー』って結局なんだったンスか?」

 それを横で聞いて、ノノンとホロハロが目を丸くした。

「お前……さすがに、ものを知らなさ過ぎでしょう」

「…………びっくりです」

 驚き呆れていた二人だが、ククリもナタも黙っているのを見て、余計な詮索はしなかった。もしくは、マレ辺りからククリの「記憶喪失の異世界転生者」だという事情を聞いていたことを思い出し、ククリとナタが黙っているのを見て、自分達がそのことを「知っている」ということを黙ったのか。


 ――冒険者は互いに詮索しない。


 冒険者達の暗黙のルールだが、あくまでルールはルール。破る者もいる。その点、きちんとルールを守っている、もしくはそう見せる二人は流石だった。


「……このダタン帝国には、大きく分けて二つの町がある。それがNo.持ちとNo.外。No.外はこの国が注力していない町のことで、昔からの地名や、No.○○の南東の村、という風に呼ばれる。No.持ちは、文字通りNo.7のように地名にNo.を持つ。5より小さな数字が『市民権』を持つ者だけが住める場所。6以降はダタン帝国にとって特筆すべき場所を指す。例えば、No.7は国内数の歓楽街の一つで、「8」や「光電一番」のような巨大犯罪組織の根城が在る場所。No.5、6、7、8、9は、そういった「経済力」や「ポジティブ」な面がある都市。それに対し、No.10、11、12、13は「ネガティブ」な面が強い都市を指す。今いるここ、タウンNo.11もそう。ダタン帝国において『有害である』と認められた町」

「……なんだよ、ソレ」

 国を統治する帝自ら、有害だと認めた町だなんて。


 そんなの、狂ってる。


 だが、ナタはそう思わないらしい。

「どんな時代、どんな国でもよくあること。帝自ら「害あり」と言う事も、ままあること。特別なことじゃない」

「そんなわけ無いッスよ、町そのものの住人も歴史も、何もかも否定するなんて……」

「ある。どんな所、どんな時代、どんな世界でも」


 ――――どんな世界でも。


 被差別部落。


 アパルトヘイト。


 クーロン城砦。


 意味の分からない言葉の羅列が、頭に浮かんでは消えていった。

 だが何となく分かることもある。

 今か、それとも過去の話かは分からないが、ククリの生まれ育った世界にも、似た様なものがあったのだ。……残念なことに。

「そうッスか……それで、この町は何で「有害」と定められたンスか?」

「それは……」

 再び、皆が黙り込む。

 そして、ホロハロがため息を吐いた。

「……本来なら悪趣味だが。無知なククリが行くのなら後学のための勉強だろうな。着いて来い。案内してあげよう」


 ホロハロはそう言うと歩き出した。その後を追い、ククリはすぐそこにあるNo.7(地獄)に向かった。


また二日後、夜七時~九時くらいに投稿する予定です。……三章はサクッと進めてバトルする話になるはずが、どうしてこんな説明だらけに……。おかしい。まだ舞台に辿り着いていないぞ……

感想、評価頂けたら幸いです。


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