二章04 夜明け
少ないですが、これで二章は終わりです。
「…………」
崩れ落ちた砦を眺めながら、オーリーはこれまでのことを思い出していた。
両親が抗争で殺された日。
兄弟姉妹、親戚と利権争いし、殺しあった日々。
そうまでして手に入れたものを払い、何とか「組織」の後ろ盾を得て、虐げられ、搾り取られながらも地道に勢力を拡大してきた。
――その全ては、水泡に帰した。
信用は地の底。最早、再起することはできない。
確かに、私は人並みの人生を歩んできたとは言えない。
だが。だからと言って、……この結末はあんまりじゃないか。
私は、私の持っているものをただ受け継いだだけなのに。
それが『悪』だろうが何だろうが、そんなの、子に選べるわけが無い。子は親を選べないのだ。与えられたものを捨てる選択肢なんてありえない。――人は、自分の人生を選べない。
人生の全てを捧げた果てに得たものは何も無く。
虚無感と喪失感が身も心も溶かし、深く暗い絶望の海の底に沈んでいく。
オーリー……いや、オフィリア・ウーの人生は無価値なものだった。
あまりに認めがたいが、それが現実だ。
――その絶望を噛み締めながら、私は死ぬのだ。みせしめとして。
オーリーは口からまた血を零した。
一度竜化したことで服ははじけ飛び、オーリーは森の中、全裸で立っている。
足元には、ククリが気絶していた。竜化を解いたことで、オーリーの体外に弾き出されたのだ。
「業腹だが……仕方ないか」
オーリーは胸……ちょうど心臓の辺りに手を当て、念じた。
「んっ……はぁ」
ゆっくりと、心臓の辺りから金色に光るカードが現れた。
白い服を着た、胸を押さえた青い瞳の修道女が描かれたカード。
『格納』
自身の体内にカードを仕舞いこむカードであり、本当に窮地に陥った時のためのカードが仕舞われている。
『格納』と一緒に現れたカードの中から、二枚のカードを選んだ。
どちらも茶色のコートを着込み、ゴーグルをつけ帽子を被った男が描かれている。
片方は手前に向かって、もう片方は、その反対側に向かって歩いている。
『旅路』『帰還』
『帰還』は登録したポイントにワープするカード。
『旅路』はどこか分からない、この世界のどこかへワープするカードだ。
どちらも、国宝級の希少カード。
オーリーの家が、かつては無数のカードを生み出した大魔術師の家柄だからこそ持っているカードだ。
『旅路』を使い、オーリーは国外へ逃げる賭けに出る。
『帰還』を使い、ククリをあるポイントへ飛ばす。
……そうすればきっと、オーリーのこれまでの人生にもほんの少し意味が生まれるはずだ。この少年がアレを逃がせば、もしかしたら、アイツラ「8」に一泡吹かせるかもしれない。
オーリーは身体についた血をぬぐうと、その辺に散らばっていた死体からシャツを剥ぎ取って着替えた。そして、『帰還』を使う。
淡い光と共に、ククリの身体が消える。それを見届けた後、オーリーは『旅路』を使った。
……ここで、ウー家の歴史も、ウー家としての『私』も死ぬ。
何もかも失った。これまでの人生は、殆どが無駄だった。
だが同時に、私はようやく解放されたのかもしれない。
全てが燃え尽きた焚き火。その灰の下に、小さな火が未だに、仄かに灯っている。
「まずは医者を探すか。……医者がいる所に飛べればいいが」
仄かな希望の光を胸に抱きながら、オーリーは淡く輝き、消えた。
――――そして、誰もいなくなった。
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ストックがまた切れてしまいましたが……三日に一度更新は何とかキープしたいなぁ、と思ってます。とりあえず、次また三日後は気分転換に書いた「貧乏びより♪」という作品を上げる予定です。プロットほぼ無しの行き当たりばったりの短編で、g○部とか、アタゴオル玉○箱みたいなの書きたいな、とか思って書いたらできたナニカです。読んでいただけたらうれしく思います。




