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二丁拳銃の執行者  作者: 柳田 脩
第一章「ちょっとした寄り道」
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第3話:冷えた体の感触

一体何十秒、いや何分机の下でうずくまっていただろうか。気がつくと激しい揺れはおさまっていた。そして室内は、あんなに揺れていたのが嘘のように再び静まり返っていた。


初めて体感したせいか、稿哉はとても長い時間揺れていたように感じていた。実際、こんな規模の揺れはそうそう人生でも体感しないだろう。


「な・・・何とか凌ぎ切ったか?」


稿哉は静まり返った室内を机の下から観察する。崩落の影響でか、室内には若干の砂埃が舞っていた。また、机の上に置かれていた物などは殆ど床に散らばり、壁にはひび割れができていた。


この様子から察するに、相当激しい揺れだった事を稿哉は改めて実感する。しかしラッキーなことに、机の下に閉じ込められるという状況は何とか回避したみたいだ。


「ったく・・・今日は厄日だ」


彼はそう言うと、のそっと机の下から這い出ていた。


それは揺れが収まった安堵感からか、それとも興奮状態になったせいで注意力が散漫になったせいなのかは分からない。ただ何の心配もなしに、稿哉は出てしまっていた。


そして、その行動がどれほど危険であったか、すぐに稿哉は身をもって知る事となってしまった。



ゴトリ、と、何かが稿哉のすぐ横へと落ちてきたのだ。


「ん?」


それに気をとられた彼は、動きを止めて音のした方を見る。

するとそこには、天井から落ちてきたであろう石の塊があった。先ほど見た物と同じような石塊だ。


そして一瞬で、今自分がどれだけ危険な行動に出ていたのか理解した。


(あ――――)


そして考え終わる間もなく、ドバッ!!と、まるで河川の堤防が決壊したかのごとく、一気に天井が崩れ落ちてきた。


「うあぁぁぁぁぁぁぁッ!!」


彼は必死に前へ避けようとしたが、既に手遅れだった。まるで濁流のような崩落は、稿哉の体へ一気に襲い掛かってきた。そして、なす術も無く彼は瓦礫の底に沈んだ。


ハッ気がつくと、強烈な痛みが体中から湧き上がってきていた。どうやら瞬間的に気を失ったらしく、いつの間にか彼は床へと這いつくばっていた。


「くッ・・・ガう・・!」


万力で全身を締め上げられるような壮絶な痛みに、稿哉は再び意識が飛びそうになる。何とか頭は潰されなかったが、胸から下は全て天井の残骸に埋もれていた。そして体中が火に包まれたかのように熱くなっているのに気付いた。


(く・・・そぁ・・・)


途切れそうになる意識の中、彼は必死に抜け出そうと腕を動かす。


しかし、


「がァァァァァァァッッ!!?」


その瞬間、胸へと凄まじい痛みが生じた。それは例えるなら、内側から肺か何かをグチャグチャにかき回されるような、そんな感じだった。


あまりの激痛に、頭の血管が本当に破裂してしまいそうだった。そして同時に、口の中が血生臭い臭いで一気に満たされ、ゴポリと、稿哉の口から血が吹き出た。


「ゲホッゴホッ・・・!」


あまりの不快感に咳込む彼だったが、その咳に混じって少量の血が飛び散る。吐血するのは、たいてい臓器に何らかの損傷があるときである。つまり、天井の崩壊によって心臓か肺へと深刻なダメージを負ってしまったのだろう。


(ッ・・・息が・・・ッ!?)


そして唐突に、呼吸がしずらくなる。いくら吸おうとしても、胸が圧迫を受けているためか、上手く呼吸できなかった。苦しさに身悶えしようとするも、体は拘束されたかのように動かせなかった。


そんな悪夢のような状況の中、ふと稿哉は体から力が抜けていくのを感じる。心なしか、痛いと感じなくなってきていたし、体の熱さもそこまで感じなくなってきていた。


(誰か・・・・)


稿哉はそう言おうとしたが、血に塗れた口は思うように開かない。そして段々と、今度は逆に、体全体に寒気を感じていた。それは、とても真夏とは思えぬ異様な感覚だ。


瞼も、まるで夜更かしでもしている時のように、自然と重くなっていく。また、それに伴って意識や思考まで遠のいていくのが分かった。


(助けを・・・・・・・)


まるでクラクラするような感覚に、稿哉はもう何がどうなっているのかも分からなくなっていた。


そして、稿哉が瞼を閉じた時、彼の意識は完全に失われた。

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