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Iris GARDEN  作者: 和島純平
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第00-05話 部室にて[04]

そして三日後――――……。


私は、答えを心に決めて、ここ"Iris"の部室の前に立っていた。


緊張に押し潰されそうになりながら、私はそっと扉をノックする。


「し……失礼します!!」


やばい……声がうわずってしまった……


やってしまった思いを感じながら、気にしないように扉を開いた。


「来たか」


扉を開くと、中央のソファーに、沢野さんが座っていた。

それを囲むように、他のみなさんも立っていた。


凛と張り詰めた空気が空間を支配する。


心なしか、彼らの瞳に、鋭い光が宿っているのを感じた。


意を決して部屋の中へ歩みを進め、沢野さんと対面する位置で立ち止まった。


「さて、三日過ぎたわけだが……もう答えは決まったか?」


シンと静まりかえった空気を引き裂くように、沢野さんは口を開いた。


「………はい

私、決めました

私…………」


震える手を握りしめ、目を閉じる。

私は昂って仕方のない鼓動を、どうにか沈めようと深呼吸をした。


落ち着いて………

落ち着いてこの思いを伝えなくては………


私は目を開き、真っ直ぐ全員の方を見つめて口を開いた。


「皆さんと一緒に映画が作りたいです………!!」


私は、一斉一代の告白のように、全身全霊で思いを伝えた。


あまりの緊張からか、握った手には冷や汗が滲んでいる。


「そうか」


そう沢野さんは呟くと、どこか不敵な笑みを浮かべて、右手を挙げた。


パンッパーーーーンッ


軽快な破裂音が部屋中にこだまする。


どうやらクラッカーを隠し持っていたようだった。


突然の大きな音に私は一瞬驚いた。


しかし、その驚きもすぐに喜びに変わった。


「「「ようこそ! Irisへ!!」」」


掛け声と共に、全員から温かな拍手が送られる。


「あ……有り難うございます!!」


私は心優しいサプライズに、思わず涙が出てしまいそうになった。


「いやぁ、良かった良かった

一瞬、他のヤツらみたいに決めてくれないかと思って、焦っちまったよ」


沢野さんはホッとしたのか、喜びと安堵の混じった表情を浮かべながら、深くソファーに背を預けた。


「今日は宴だぁ~!

お菓子開けていぃ?」


篠宮くんは、後ろのファイルやいろいろなモノが置かれている場所から、お菓子を取り出す。


「いつも食べてんじゃん」


やれやれと言ったふうに、お菓子を持ってくる彼に曽我部さんがツッコミを入れる。


「てか、それオレのぉ!!!」


篠宮くんの取ったお菓子を見て、我妻家くんが悲しそうな悲鳴をあげた。


「まだ同じようなのいっぱい残ってるんだから我慢しろ」


お菓子を取り返そうとしている我妻家くんに対して、渡草さんは呆れたように止めに入る。


「ジュースとかいる?

いるなら持ってくるよ」


保住さんはそう言うと、入り口付近に隠されて気付かなかった小型冷蔵庫から、何本かジュースを見繕って来てくれた。


「もっと全体が取りやすいように拡げろよな」


適当な感じで並べられていくお菓子を、嘉島さんが取りやすく纏めていく。


「ちょっとぉ、ケーキ系のはないの?」


桜川先生は、スナック菓子しか並んでいないこの状況を見て、異論を唱える。


「何、しれっとアンタも混ざってんだよ

学生じゃねぇんだから

つか、ちゃんと食い終わったら後片付けしろよな」


何事もないように混ざっている桜川先生だけでなく、畔田先生は部員たちにも注意をした。


「「へーい」」


「承知です」


若干気の抜けた返事を返す嘉島さんと篠宮くん。

保住さんはしっかりとした返事を返していた。


かと思うと、別のところから怒声が聞こえる。


「言ってる側から食べ溢すな!!」


どうやら、我妻家くんが食べこぼしてしまったのを見て、沢野さんが怒っているようだった。


「むぐぐく!んぐむくぐ!(溢してない!逃げられただけ!)」


リスのように、口にたんまりお菓子を蓄えながら、我妻家くんが会話をする。


「食いながらしゃべらない!

汚いでしょうが!」


「やっぱりアホだ」


それに対して、曽我部さんが注意をし、渡草さんが呆れた顔をしていた。


「………」


私は、あまりの自由加減に、ただ見つめる事しかできなかった。


「ジュース、何飲む?」


保住さんはいくつかのジュースを持ってきて、私の隣にそっと立った。


「えっ!

いいんですか……?」


私は思わず聞き返す。


「もちろん!

だってこれは君の歓迎会だからね

ほら、遠慮しないで」


ニコリとこちらに向けられる慈愛に満ちた笑顔が、太陽のように私の心を暖めてくれた。


「……有り難うございます!」


つられて私の顔も笑顔になってしまう。


彼には、人の心を開かせる魔法でも使えるのではないかと、つい思ってしまう。


「さっ、お菓子を取りに行こう!

ぼぅっとしてるとひなや悠希に全部取られちゃうよ」


「はい……!」


こうして私は、この輝く素敵な世界へと足を踏み入れることとなった。


楽園に住む精霊のように、常に楽しそうに微笑む美しい彼らとの生活に、心が踊っていた。


しかし、この時の私はまだ知らなかった。


この後、とてつもなく巨大な事件を解決することとなるとは………

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