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みらはりせん  作者: 勤太朗
7/8

第七撃 巻き込まれていた騒動

『まぁ大人しくしときや~と言われてもな・・・』

 みら達と別れた俺は家に戻り、そのままいつも通りに過ごしてベッドに入った。そして気が付けば、また夜の街に幽体離脱して立っていたというわけだ。

『なんか・・・4回目になると何か慣れてきたな・・・・・・』

 そもそもこんなことに慣れる必要は無いのだが、こうなった以上仕方が無い。

辺りを見回すとシンと静まり返ってはいるが今日は電信柱の常夜灯が多い場所のようだ。見通しもよく昨日のような奴がいる気配もない。

でも油断は出来ないので、昼間みら達に言われたよう急いで家に戻ることにする。

『えっと・・・あったあった』

 自分の足元の糸を確認する。糸はまっすぐ地面の向こうに伸びていた。

 現在地はよくわからないが、道順は足元の糸でわかる。これだけは便利だと思う。

『・・・・・・』

 しばらく無言で歩く。そして妙なことに気が付いた。

『なんか・・・だんだん遠くなってないか?』

 ちゃんと計ったわけではないので確認は出来ないが確認は出来ないが、最初に幽体離脱した時に比べると今日は歩いている時間が長いような気がする。

 そんな事を考えていたらふと思い出したことがあった。

そう最初に幽体離脱した時、誰かに会ったような・・・・・・?

「・・・・・・」

 そこまで考えて俺に向けられている視線に気が付いた。

 思わず振り向いて相手を確認する。

『君は・・・・・・』

 そこにいたのは女の子だった。

 そうだ。最初に幽体離脱した日に出会った女の子・・・そうだ、あの時はいきなり後ろに体が引っ張られて、目が覚めたんだ・・・・・・

『や、やあ・・・・・・』

 とりあえず女の子に挨拶する。うん、我ながら律儀だと思う。

『お、お父さんとお母さんは見つかった?』

『・・・・・・』

 女の子は無言で横に首を振る。

・・・・・・まだ見つかってないのか。

『じゃ、じゃあ今日は遊ぶんじゃなくて俺と一緒に探しに行こうか?』

 そのぐらいはいいだろう。帰り道も糸を辿ればいいだけだし、それまではこの子に付き合おう。ちょっと遠回りするだけだ

『・・・・・・』

 コクンと女の子がうなづいて、おずおずと右手を差し出してくる。俺がその手を繋ごうと左手を差し出した時・・・・・・


 ヒュン!


『!?』

「!!」


 ちょうど手を繋ごうとした辺りから風切り音が聞こえ、女の子がビクッとして手を引っ込めた! 直後、とてつもない速さで駆け出していく!

 追いかける間もなく女の子は暗がりに消えてしまう。

『・・・え? ・・・・・・え?』

 そのスピードに呆気にとられてしまったが、すぐに我を取り戻す。

『あ、ちょっと!』

とりあえず追いかけようとしたが・・・・・・。

「あ~もう! また逃げられたッス!」

 今度は後ろから別の女の子の声が聞こえた。その声は結城みらでも天蓮華さんのものでもないが聞き覚えがあった。声の主を確認しようと振り返る。

 

―――小柄なデコっぱち娘。


そして、俺はこのデコっぱちに見覚えがあった

『・・・・・・ぱち?』

「へ?」

そう言われたデコっぱちはマジマジと俺の顔を見てきた。

「み、三倉先輩!?」

 思ったとおりだった。顔は隠しているが目の前にいるのはぱちこと八塚千誉だ。

『お前も対魔師だったんだな~』

 あの二人と行動を一緒にしているならその方が自然と言えば自然だ。

「そ、そうっスけど・・・って言うかなんでここにいるんスか!? 確か結城先輩達と話して、幽体離脱しても大人しくしておくってことだったんじゃ・・・・・・」

『まぁ・・・そうなんだけどな・・・・・・』

 確かに昼間そういう話をしていたが、こちらとしてはいきなり街中に放り出されるので何とも言えない。

「と、とりあえず先輩たちをこっちに呼ぶっス! 三倉先輩を見かけたらすぐ呼ぶように言われてるっスので!」

 そう言いながらぱちが慌てつつ連絡を取る様子を見て、俺はこれから何が起こるかを考えると・・・気が重くなった。


* * *


「で・・・何で、今日の昼間に大人しくしとけって釘刺した奴がここにおんねん? ・・・・・・今度襲われても知らへんで?」

 ぱちの連絡から約二十分。俺の姿を見たハリセン女は、呆れと怒りの混じった口調でそう言った。

『色々あったんだよ・・・色々・・・・・・』

「その『色々』の部分、詳しく教えていただきたいですなぁ?」

 俺とみらと天蓮華さんはそんな会話を交わす。 

あー・・・天蓮華さんも口調はいつも通りだが少々語気が強いな・・・・・・。

「せ、先輩・・・とりあえず落ち着いて・・・・・・」

 そんな中、ぱちが二人をなだめてくれてはいたのだが二人の無言の怒気に当てられたか正直殆ど役に立っていない。気持ちだけはありがたく受け取っておこう。

「もう一回聞くけど。何でこんなトコおんのよ? 大人しくしとけって言うたハズやろ?」

 みらがジト目でこっちを見る。

『それなんだが・・・出歩いた記憶が無いんだ』

「? ・・・どういうこと??」

 俺の発言にみらが意外そうな口調で聞き返す。

『いつも、気が付いたら街中にいるんだよな・・・・・・』

「・・・・・・」

 俺の発言にみらと天蓮華さんの表情が変わった。それも『マズイ』と言う感じで。

「あの、先輩?」

 その様子に八塚が二人に声をかけたが二人は答えない

「三倉はん・・・他に何か変わった事はありませんか?」

 代わりに天蓮華さんが真剣な眼で俺に聞いてきた。その問いかけに俺も真剣な口調で答えた。

『最初の日に比べると家までの距離がどんどん長くなったような気がする』

「・・・・・・他には?」

『最初に幽体離脱した日にさっきの女の子に会った・・・・・・その時は会って、すぐ目を覚ましたんだけど・・・・・・』

「!?」

 女の子という言葉を聞いて二人の表情がさらに険しいものに変わった。直後・・・・・・

「・・・・・・例の悪霊っス。さっきまで三倉先輩に接触してたッスよ」

 俺の言葉にぱちが口を挟む。

 ・・・って、悪霊!?

『ちょ、悪霊ってどういうことだよ!?』

 今度は俺が思わず声を荒げて聞いてしまうが・・・・・・

「・・・そういうことか・・・こらちょっとヤバイんとちゃう?」

 俺の問いには答えず、みらがあまり似合わない険しい表情のまま天蓮華さんに確認する。

「まぁ・・・今の三倉はんのお話でなんとなく流れはわかりましたわ・・・で、八塚、針の方は?」

「今回は何と右手に当てたっス」

「上出来や」

 そのまま3人が重々しい雰囲気で何やら話し込んでいる。が、こっちは何のことかさっぱりわからない。

『あの・・・とりあえずどういうことか説明して欲しいんだけど』

「そうしたいんですけど、夜とはいえ、か弱い乙女3人が深夜に集まるのは不審に思われます・・・とりあえず玉笹神社に移動しましょうか? あ、ぱちは今までのこと、上に連絡しといて」

「了解ッス!」

そう言いながら3人は歩き始めた。まぁ俺は幽体離脱しているから普通の人には見えないのだろうが確かに、俺と同い年ぐらいの女の子3人が深夜に集まっているのは怪しく見えるだろう。

もしかして、前に回覧板で見た不審者は、この3人のことだったのだろうか? だとすれば諜報活動に問題ありと言うことになる。天蓮華さんには伝えておいた方がいいのかもしれない。

などと人事のように考えていたが一番気になったことがある。

か弱いという言葉に思わず何でやねんとツッコミたくなった自分は目の前にいるハリセン女に影響を受け始めているのだろうか?


 * * *


どうやら話がさらにややこしいことになってきたようだ。

 

―――だがこの状況、上手く使えば・・・・・・


 しかしそれを実行するにはあいつらだけでは荷が重過ぎる。

こうなれば私自身が出向くしかないだろう。


 * * *


「あの子は・・・元々は小さな浮遊霊だったんです」

 移動先となった玉笹神社で天蓮華さんはあの小さな女の子(ぱち曰く悪霊)について説明をしてくれた。

「十数年前、家が一軒全焼する火事が有りまして、住んでいた一家は殆どがその場で亡くなったそうですが・・・・・・一人だけ、かろうじて息のあった女の子は病院に搬送されたそうです・・・・・・」 

『まさか・・・・・・』

「はい、そして三倉はんが会ったあの小さな女の子がそうなんです・・・その子も親戚が駆けつけた時は息を引き取ったと聞いています・・・・・・」

『・・・・・・』

 天蓮華さんはゆっくりと言葉を続ける。

「結果として、あの子は1人で死んでもうたんです。それ以来、浮遊霊となったあの子はずっと1人で家族を探し、さ迷っていたのですが・・・・・・」

「その時間が長すぎて悪霊になってもたんや・・・・・・自分と同じような思いを持った奴を呼び寄せ、仲間にするような悪霊に・・・・・・」

天蓮華さんの説明をみらが補足する。そこで昼間話をした時の疑問が再び浮かんできた。

『あ、もしかして昼間言ってた『俺も探していた』って言うのは・・・・・・?』

「はい。あの女の子の霊を成仏させること・・・それがウチら3人の受けた指令なんです」

 指令だから答えてくれないかと思ったが天蓮華さんは素直に話してくれた。まぁ俺がここまで巻き込まれたら仕方ないと考えたのだろう。

「いや、でも、そうなる前に何とか出来なかったのか? 浮遊霊なら天蓮華さんでも成仏させられるんじゃ・・・・・・?」

「それが・・・何か、カンが良くていっつも逃げられるんスよ。今までも色んな方法で追跡や捕獲を試したんスけど全部失敗してるっス」

 と、しょんぼりと肩を落とすぱち。

長い間、さ迷って来た経験とでもいうのだろうか?

『ちなみに、その仲間になったヤツはどうなるんだ?』

「あの子に縛られて、成仏も出来ずあの子の周囲でさ迷うことになんねん。自縛霊ならぬ霊縛霊って感じやな」

「あー・・・・・・」

 みらの言いたい事はなんとなくわかった。つまりあの子を中心に他の霊が彷徨うということらしい。

「今のトコ、被害って言うか仲間になったのは他の浮遊霊だけやから、そこまで目立った被害はないんやけど・・・・・・」

 それだけ言うとみらがチラッと俺を見てきた。

「このまま数が多くなると・・・・・・昨日みたいなヤツがようさん出てくる」

『!?』

 昨日みたいなヤツ、その言葉に思い当たった。

『昨日のヤツって・・・アイツか!?』

 そう・・・幽体離脱した俺を襲ってきて、今は対魔師に捕まっている化け物・・・・・・『妖』の一人・・・・・・

「そうや、ああいう連中にとって絶好の餌場になってまうねん」

「そして、その噂を聞いた妖がこの辺に集まりだすと、その分、人に見つかる確率が上がります・・・結果として妖の存在を世の中に知らせかねないんです」

 みらや天蓮華さんの言葉は納得できるものだった。確かに絶好の餌がウヨウヨしているのなら、我先にとああいう奴等が集まるのは明らかだ。

『でもな、俺が会った時、あの子のまわり何にもいなかったぞ?』

 とりあえず見たことを伝えてみるとぱちがすぐに答えてくれた。

「あ、それはっスね。一週間ほど前、なんとか周りにいた浮遊霊だけは排除できたんス。ただ本命である本人は逃がしちゃって・・・・・・」

「二重三重に手を打ったんやけどな・・・・・・」

『・・・・・・』

手を打った内容を知らないので何とも言えないが、ちょっと逃げられ過ぎという気もする。まぁ霊に関して素人の俺が言える事ではない。

「それにウチ等にとっては今の三倉はんの方が問題なんです」

『問題・・・・・・?』

 天蓮華さんに解説を求める。

「三倉はんは・・・あの女の子の『念』に引きずられているんです」

『念って・・・あの残念とか念力とか言うヤツの・・・・・・念?』

「はい、それで間違っていません・・・・・・」

「まぁ、簡単に言えばあの子の新しいお仲間第1号になりかけとんねん」

 みらがのんきな口調で補足してくれるが正直、話が良く見えない。

「三倉はんは体から離れた場所で幽体だけが目覚めた状態で動いていました。ウチが最初に会った時は、三倉はんが夢やと思って自分でウロウロしていたと思っていましたが・・・・・・」

『一応聞くけど、それ経束扇のせいじゃないの?』

「経束扇はあくまできっかけなんです・・・本来、幽体離脱と言うのは自分の体のすぐそばに魂が出た状態・・・普通は自分で自分の体を見ている状態になります。しかし、気が付いた時に全く知らない場所にいるということは、何か別の力によって魂が体から引き離されているということになるんです」

 超常現象に普通と言う表現を使われてもイマイチピンと来ない。

 そんな俺の考えも気づかず天蓮華さんは説明を続ける。

「ただ完全に離れると死んでしまいますので、魂と体を繋ぎ止めておく糸があるんですが・・・三倉はんは心当たりありますやろ?」

『もしかして・・・辿ると戻るって言われてたあの糸?』

天蓮華さんに最初に会った日に教えてもらった糸・・・

「そうです。アレを辿れば帰れると言うのはそういう意味やったんです」

 幽体離脱した魂にとって目的地である体に繋がっている糸・・・なるほど確かにそれをたどれば戻れるのは当たり前だ。

「幽体離脱した時、元に戻る方法は二つあるんですが・・・・・・はい、結城はん? 何でしたっけ?」

「へ?」

 いきなり話を振られてきょとんとした顔になる結城みら。

「こんなん基礎の基礎ですやろ?」

「そら知っとるけどな・・・・・・魂が体に重なった時と肉体が先に起きた時やろ?」

「はい正解・・・まぁ当然ですけどな」

「自分、性格悪いで・・・・・・」

「そうでしょうか?」

 ぶつくさ言うみらをあしらいつつ天蓮華さんは説明を続ける。

 じゃあ、最初に幽体離脱した時に途中で体がすごい力で引っ張られて起きたのは体のほうが先に目覚めたからなのか・・・・・・

「おそらくは・・・あの子の寂しいと言う思い。誰かと一緒にいたいという思い・・・そういったものが見えない力となって三倉はんの魂を自分の方へ引っ張ってるんです。 このままやと三倉はんの魂はあの子から離れられなくなり、体に戻れなくなります」

『でも、・・・なんで俺があの子の念? とかに引きずられているんだ?』

「つかちゃんも・・・今、あの子と似たような状況やろ?」

『・・・・・・は?』

みらの発言に思わず聞き返してしまう。似たような状況ってどういうことだろう?

「ホラつかちゃん、前おったトコに帰りたいって言っとったやん?」

『ああ・・・・・・』

 確かにそうだった。

 親の急な転勤で誰も知らない場所に放り込まれた。

 今までいた場所に戻りたいとコイツに愚痴ったっけ・・・・・・。

「今のつかちゃんは、あの悪霊の思いに同調してもうて魂が引き寄せられとったんや。多分、日がたつにつれて幽体離脱しとった時間も長くなっとったんちゃうか?」

『そういえば・・・そうだな』

 それはさっきも感じていたことだった。

『確かに・・・気が付いたら街中に放り出されて・・・帰ろうとするんだけど、だんだん歩く距離が長くなっているような気はするな・・・・・・でも、引きずられていると言っても俺は別にそんな感覚は無いけど?』

「別に縄みたいなものでガッチリ縛られて引っ張られているわけでは無いッスから自覚は無いと思うッス。でも帰る距離が徐々に長くなってきたっていうのは、女の子の方に引きずられていると言う証明なんスよ!」

 ぱちがここぞとばかりに口を挟む。

その直後・・・・・・!

「が、この状況・・・使いようによってはまたとないチャンスかもしれない」

「!?」

その声は突然神社の暗がりから聞こえてきた。もちろん、俺でもみらでも天蓮華さんでも八塚のものでもない。声の感じから俺たちよりも年上の女性のようだ。

 そしてその声を聴いた瞬間みら達の姿勢がまっすぐになった

足音がゆっくちとこちらに近づいてくる。そして徐々に人影が

背の高い短髪の女性。ただストールで鼻と口が隠れている。

「はじめまして、だな。三倉司君」

 女性はハスキーな声で俺の名前を呼んだ。

『あの・・・あなたは?』

「私はこいつらの指導員・・・まぁ直属の上司だと思ってくれ」

 そういうと上司さんは少し目を細める。

「すまないな。本来なら顔を見せて名乗るべきなんだが・・・これ以上、一般人の君に対魔師の情報を与えるのは色々と問題があってね・・・このような姿で失礼する」

『あ、それは構いませんが・・・・・・』

 結構色々いろんな事を知ってるのでいまさらという気もするが向こうの都合もあると思うのでここはそう答えておく。

「まずは私の不出来な部下が色々とご迷惑をかけたこと、心からお詫びしたい」

 そういって上司さんは俺に向かって頭を下げてきた!

 またこれか!? 

『あ、いや・・・頭を上げてください! 元に戻る手段もあるんだし、もう気にしてませんから!』

「しかし、不出来な部下の不始末で結局君を危険な目に合わせてしまっている・・・その事はどんなに頭を下げても償いきれるものではない・・・・・・」

 そう言って上司さんは中々頭を上げてくれない。

「あの・・・あんまり不出来不出来って言わんといて欲しいんですけど・・・・・・」

 そしてその様子を横目で見ていた事の張本人であるみらは、上司さんの不出来連呼に少々ふてくされた小声で抗議する。

「実際、不出来なのだから仕方がないだろう。大体私から見ればお前たち3人はまだまだヒヨッコだ」

 ようやく頭を上げた上司さんはみら達を見てそう言った。

「それより、先ほど言っていたチャンスというのは、どういうことでしょうか?」

 天蓮華さんが悩みながら上司さんに質問をした

「言葉通りの意味だ・・・八塚、針の方はまだ生きてるか?」

「は、はい! このとおりまだ反応してるっス!」

急に話を振られたぱちが慌てながらポケットから手の平ぐらいの何かを取り出した。

「なんだこれ? コンパス?」

 手の平ぐらいの円形の容器に中心でバランスをとった針がつけられている。って言うかどう見てもコンパスにしか見えないけど・・・・・・

霊離計れいりけいっていう道具なんスよ。霊体にでも突き刺さる針・・・霊離針れいりしんって言う針とセットになってて、霊離針を取り付けた相手の居場所を教えてくれる道具っス!」

 どうやら経束扇以外にも色々と道具があるらしい。まぁ対魔師にとっては当たり前なんだろうが・・・・・・

『じゃあ、あの時、飛んできたのは・・・・・・』

「そうっス!あの子が三倉さんと手を繋ごうとした時、あの子の右手に投げ刺したんス。正直当たるかどうかヤケだったッスけどね!」

 投げ刺したって・・・ちょっと待て。その針、外したら俺に命中してたって事じゃないのか?

色々抗議したいが、今はそんな雰囲気でもないのでやめておこう。

「・・・霊離計は携帯性を重視しているので精度が低い。方向も距離も大体しかわからないし、すぐに針が外れてしまう・・・・・・だが、今はこれが機能しているだけでもかなり助かるな」

 それだけ言うと上司さんは改めて俺のほうに向き直った。

「三倉司君・・・本来、君にこのようなことを頼むのは筋違いなのだが・・・・・・」

 それだけ言うと上司さんは一呼吸置いて言葉を続けた。

「あの子を成仏させるのに協力してほしい」


 * * *


1時間後、俺は幽体離脱したまま公園にいた。この前、携帯のチェックに出かけた際に偶々みらに会い、ジュースを奢る約束を果たした場所。そしてあの女の子と遊んだ公園でもある

少々広い公園だが深夜ということもあって今は誰もいない。さらに今は対魔師達が公園全体に人払いの術・・・そしてあの子が出られないよう結界をかけているらしいので、この公園に人の出入りはないらしい。

「・・・・・・」

 1時間前、上司さんに頼まれたことを思い出す。


 * * *


「今、三倉司君はあの子に引きずられている・・・あと先程、八塚から聞いた報告によると、君の言う事は素直に聞いているらしいな」

『みたい・・・ですね・・・・・・』

 自分には実感は無いが手を差し出してくれたことを考えると間違いではないと思う。

「言い換えると、あの子は三倉君に対してはまだ心を開いているということになる・・・・・・そこを利用したい」

『・・・・・・利用?』

 あまりいい響きではない言葉に少々顔をしかめた。

「まず、あの子の居場所を確認してから、気づかれない範囲で結界を張り、あの子を閉じ込める・・・その後、三倉君が1人であの子と接触。そしてあの子が三倉君に近づいたところを、結城達が3人で成仏させる」

「あの・・・その作戦だと別に三倉はんがいなくても実行は可能だと思いますが・・・・・・」

 上司さんが提示した作戦について天蓮華さんが率直な意見を述べる。

「いや、あの子の意識を三倉君に向けさせることで我々の接近に気づくことを遅らせることが出来る。実際、八塚が一度同じ状況で霊離針を当てているからな・・・成功率は格段に上がるだろう」

 上司さんの言葉に結城達3人の視線が俺に注がれる。

「・・・・・・」

 つまり俺を囮にして、あの子をおびき寄せる。

 あの子は悪霊・・・みら達はそう言った。だが俺と話した時、あの子にそんな様子は全く見えなかった。

 生きていればそこらへんにいる子供と変わらない・・・それだけの存在。


・・・・・・いいのか?


 そんな疑念が頭の中をぐるぐる回る。

「あの・・・幾らなんでも無茶やないですか?」

「確かに・・・一般の方にそこまで手伝わせて万が一の事があっては・・・・・・」

俺の考え込んでいる様子を見てみらと天蓮華さんが意見してくれた。

「お前たちの言う事はもっともだ」

 上司さんが真剣な目をしてみら達を見る。

「だが、状況から考えても時間が無い。このまま行けば三倉君自身も数日以内にあの子に取り込まれてしまう。そうなれば三倉君は生ける屍も同然だ」

 上司さんは淡々と状況を説明してくれた。

つまり今の内に何とかしないと俺自身も危ないと言うことか・・・・・・

「なぁ・・・つかちゃん? 別に手伝わんでもええんやで? つかちゃんをこんなことに巻き込んだのはウチのヘマやし、今日中にウチが絶対何とかするから!」

 みらが俺にそう言ってくれた。

俺を危険な目に合わせたくないという、その気持ちは素直に嬉しい。

ただ、何とかすると言ってもみらの中に具体的な案は無いのだろう。

今のままではまた逃げられてしまう可能性が高い。


そして何より、このままではあの子が・・・・・・

あの子と一度だけ遊んだ・・・一緒にブランコに乗った時を思い出す。

足元に座った女の子が小さな腕でギュッと俺の両足を抱え込むように掴んだ・・・・・・

その感触がまだ足に残っているような気がした。


 色々考えた俺は・・・・・・

『やらせてもらえませんか?』

 と、上司さんにそう告げた。

 その言葉にみら達の表情が驚愕に変わった。提案者の上司さんも少し驚いたようだった。

「ええんか!? つかちゃん、悪霊と一人で接触ってかなり危険なんやで!」

 みらが声を張り上げて俺に詰め寄る。

『でも、このままじゃまた逃げられる可能性が高いんだろ?』

「・・・・・・」

その一言にみらが黙ってしまう。

『多分、大丈夫だと思う。俺と話した時、あの子に昨日のアイツみたいに悪いものは感じなかったし』

「でも悪霊なんスよ!?」

 今度はぱちが抗議してきた。ちなみに天蓮華さんは無言で事の成り行きを見守っているようだ。

『一回・・・遊んだんだよ・・・あの子と』

「え?」

「・・・・・・!?」

 俺の言葉に全員が黙ってしまう。上司さんも俺の発言に少々驚いたようだった。

『鬼ごっことブランコ・・・それだけだった。それだけでもあの子はちょっとだけ笑ってくれた。悪霊とは思えないんだ・・・・・・大体、あの子自身が悪いことしてるわけじゃないんだろ?』

「それはそうっスけど・・・・・・」

『それに、知らない人間がいきなりハリセンとか振り回して走ってきたら、そりゃ怖くなって逃げるって・・・・・・』

「いや、ウチいっつもハリセン振り回しとるわけやないんやけどな?」

 そう。あの子は想いが強すぎて悪霊になってしまった子。それならまだやりようがあるのではないか?

『そのかわり一つだけお願いがあります。俺にあの子を説得させてください』

「・・・・・・!」

 俺の言葉は上司さんにとって少々予想外だったようだ。

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