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みらはりせん  作者: 勤太朗
6/8

第六撃 泣いて笑って恋バナで

「い、痛かった・・・・・・」

 目に涙を潤ませて頭をさすっている。さすがにアイアンクローで締め付けられていたとはいえ、泣いて謝ってきたので勘弁することにした。

「少しは止めようって気は無かったんか?」

「まぁ、自業自得やし・・・」

 みらの恨みがましい視線をものともせず、天蓮華さんはペットボトルのお茶を一口飲んだ。物はペットボトルだがどこか雅な仕草である。

「それにしてもアイアンクローとは三倉はん渋い技知ってはりますなぁ」

「いや、じいちゃんが好きで、昔からよく一緒に見ていたから」

個人的に天蓮華さんの口からアイアンクローと言う言葉が出てきたのが意外である。

 もしかして・・・・・・

「天蓮華さん・・・結構・・・・・・?」

「はい、結構。古いのも・・・・・・」

 確認の言葉はそれだけで十分だった。

「じいちゃん秘蔵の試合ビデオがあるんだけど、ダビングしようか? あ、でも映像の質が悪いかもな・・・・・・」

「是非・・・画質の悪さも味があると思います」

にこりと微笑んで答えた天蓮華さん。ちょっとした趣味の共有が出来てなんだか嬉しくなった。

「それはそれとして、ここまでの流れは把握して頂けましたやろか?」

「あ? ああ・・・・・・」

 が、すぐに何事も無かったかのように話を戻す天蓮華さん。残念だがここは頭を切り替えよう。

「でしたら大丈夫ですね?」

 そう言うと天蓮華さんは、ふぅ・・・と一息ついてペットボトルのお茶を口にする天蓮華さんはやはり優雅だった。流石巫女さんである。

「じゃあ、俺はこれからどうしたらいいんだ?」

「・・・それがな・・・今はつかちゃんに幽体離脱せぇへんようにはすることが出来へんのよ」

「は!?」

 みらが申し訳なさそうに言った言葉に思わず仰天した。

「天蓮華が最初に言うたやろ? 処置したけどつかちゃんは次の日も出てきたって」

 そういえば確かに言っていた。つまり普通ならあの時に何とか出来ていたはずが、そうは行かなかった・・・・・・?

「実は経束扇で叩かれて幽体離脱するようになったことが問題なんです・・・・・・」

 天蓮華さんが説明を続ける。

「あれは見た目に限らず強力な力を持ってます・・・・・・せやから並の術やと力を消してしまうんです」

「えー・・・・・・」

 思わずみらの持つ経束扇を見てしまう。

どこからどう見てもハリセンのあれが強力な力を持つ道具ですと言われても信用しろというのは・・・・・・。

「そして経束扇の効力が消えるまで、どうしても叩かれてから五日はかかってしまうんです・・・・・・」

 天蓮華さんが申し訳なさそうに言葉を続ける。いや言ってる意味はわかるんだけど・・・・・・。

と、その時閃いたことがあった。期待薄だが聞いてみる。

「じゃ、じゃあその効果を消す道具なんか無いの!?」

「いや、さすがにそんな便利で不思議アイテムは無いわ」

 俺のかすかな期待にみらが呆れたような口調で答える。

あのな、お前のハリセンも充分、不思議アイテムなんだぞ?

「その辺の問題があったから、つかちゃんにここまで色々説明したんよ。 何も問題無かったら、天蓮華がやった術で元に戻っとるはずやし」

 みらがめんどくさそうに言葉を続ける。いや、原因はお前なんだからな? しつこいけど。

 よく考えてみればそんなものがあればとっくに使っているだろうし、現状としては何も出来ないようだ。

「もっと大掛かりな術なら出来るとは思いますけど時間がかかりすぎて・・・・・・一番早いのが経束扇の効力が切れる日を待つと言う方法なんです・・・・・・」

 天蓮華さんが沈痛な表情で言葉を終えた。

「あー・・・・・・」

 何かもう色んな事を一気に聞いたせいで頭がボーっとしている。聞いた内容が現実離れしているというのもあるが。

「・・・・・・つかちゃん?」

 ボーっとしたまま固まっている俺を見て流石にみらが心配そうに俺の顔を見てきた。天蓮華さんは目を閉じたまま黙って俺の発言を待っているようだった。

 正直、原因はみらと持っているハリセンにある。そこは怒ってもいいと思う。

 でも、昨日妖に襲われたのはたまたまそういうヤツに見つかってしまった。事故みたいなものだ。

 そして、二人は返り討ちの危険を冒してまで襲われている俺を助けてくれた。それは感謝するべきだ。

 だから・・・・・・

「・・・・・・仕方ないか」

「へ?」

「え?」

 俺の発言を聞いたみらと天蓮華さんがちょっと間の抜けた声を出した。2人にとっては想定外の言葉だったのだろう。

 そして俺は言葉を続ける。

「正直な・・・今までの話を聞いても、まだどこか納得できてないんだよ。あまりにも突拍子すぎて・・・・・・でも、昨日、俺が化け物に襲われたのは現実。それは身に染みて・・・いや魂に染みてわかっている」

 二人は俺の言葉を黙って聞いている。みらでさえ普段のおちゃらけた雰囲気が無い。

「あの時は本当に怖かった・・・・・・だって、喰われるって感覚でわかったもん。普通、そんな経験しないぜ?」

「・・・・・・あの・・・つかちゃん」

「だから、色々と言いたい事はあるけど、あの時、助けてくれた二人には感謝している。それは・・・嘘じゃない」

 何か言おうとしたみらの言葉を遮り、一気にそこまで口にした。そして・・・・・・

「だから、ありがとう」

 最後にそれだけ言った。

 そのまま、少しだけ神社内に沈黙が流れる。二人は俺の発言が終わってから、ずっと顔を伏せたままだった。

「・・・・・・・・・」

 いや、二人とも何か言ってくれないとこっちも対応できないんだけど・・・・・・?


 ・・・ウッ・・・ヒグッ・・・・・・


「え?」

 何かを押し殺すような声。


 ・・・ヒグッ・・・ウェック・・・・・・


 それはさっきまで騒がしかったハリセン女のほうから聞こえてきた。

 ・・・もしかして・・・・・・?

「お前・・・・・・?」

「泣いてへんわ! しゃっくりが出ただけや!!」

 俺の言葉に顔を背けるみら。でも顔を伏せたままだったが口の脇に涙の線があった。

泣いてるなんて言ってないんだけどな・・・・・・

「・・・つかちゃん、ゴメンな・・・・・・」

 嗚咽を押し殺しながら、なんとかその言葉を告げたみら。よく考えてみればワザとじゃないにしろ、自分のせいで一人の人間を妖に襲われる状況にしてしまったんだから。罪悪感はあったのだろう。

 ここに来てから2人の妙なテンション(主に結城みらの)は気になっていたが、あれはそういった覚悟の裏返しだったのだろうか?

「三倉はん・・・ありがとうございます・・・・・・」

 今度は天蓮華さんが言葉を発した。顔はキチンと俺のほうを見ていたが目には涙が溜まっている。

「本来なら上の者が直々にお詫び申し上げるべきなのですが、対魔師の存在も隠さなくてはなりません・・・・・・そこで今回ウチらがこの場に参りました」

 つまり俺と面識のある二人が説明役に回されたのか。

 そんな事を考えていたら、天蓮華さんは地面にそのまま正座する!?

「最初三倉はんに怒鳴られた時、ウチ等はそれが当然と思い全て受け止めるつもりでした・・・・・・されが、最後にそんな優しい言葉をかけて頂いて・・・・・・」

 と言いつつ両手を前に突く天蓮華さん。みらもそれに習う。って、その体勢はまさか・・・・・・?

「対魔師を代表して心からお詫びを・・・そしてお礼を申し上げます」

 そのまま深く頭を下げた。って、そこまでしてもらう必要無いって!

「二人とも頭上げて! もういいからさ!!」

「しかし!」

 中々頭を上げない天蓮華さん。この人結構頑固だ。

「その辺の落とし前はさっきコイツにやったアレで済ませたからさ!」

「?・・・・・・アレとは?」

怪訝そうな表情で頭を上げてきた天蓮華さん。掌を出してグーパーを繰り返しながら魅せた。

それを見て天蓮華さんのぱっと明るくなった。

「あ! アイアンクロー!?」

「!?」

 明るい笑みを浮かべてそう答えた天蓮華さん。

そしてアイアンクローという言葉を聞いて、さっきまで天蓮華さんと同じように頭を下げていたみらがものすごい勢いで木の陰に逃げていった。

「結城はん?」

 え、今度は・・・何???

「あ、アイアンクローって!? またウチ、アレやられんの!?」

「・・・・・・・・・」

 その場に流れる沈黙。どうやらあの一撃は罪悪感以上のトラウマをみらに植え付けたらしい。

その光景に俺と天蓮華さんは顔を見合わせ思わず大笑いしてしまったのである。


 * * *


「モー! 何か納得いかへんねんけど!」

「悪い悪い。ついな・・・・・・」

「ついって何やねん・・・ホンマに・・・・・・」

「結城はん、その辺にしておかんと駄々こねてたら『アレ』やられますえ?」

「天蓮華も一回やられたらええねん」

先程の大笑いでそれまでの重い空気が一新されたようだ。正直、あの空気のままで話を続けるのはこっちも気が重い。

今までは経緯を聞いてきた。今度は対策を練らなくてはならない。

「とりあえず、俺はこれからどうしたらいいんだ?」

 何しろ対策が全くわからない。わからない事は全て確認しておかないと、昨日のような目に合うのはもうゴメンだ。

「はい。まず先程申し上げた通り、経束扇の効果が切れてからでないと三倉はんに幽体離脱しなくなる処置が出来ません」

「じゃあ、最低でも・・・・・・」

「殴ってもうたんが一昨日やから・・・あと二日やね」

 みらがのほほんとした口調で答える。さっき鳴いてたカラスがなんとやらとはこのことだ。。

「とにかく、あと二日は幽体離脱してもすぐに体に戻ってください。そうすれば寝たのと同じ状態になります・・・そして経束扇の効果が切れてから、改めて幽体離脱しなくなる処置を行い、その後、記憶を消させていただきます」

「記憶を消す?」

「はい・・・妖の存在は隠匿するべきものでして・・・こればかりはどうしようもないのです」

「そうなんだ・・・・・・なんか、怖いな」

 記憶を消すなんて頭開いて脳改造とかのイメージしかない。

「いえ、記憶を消すこと自体はそう難しくないので大丈夫です」

「お札使うだけやから五分もかからへんわ」

 いや、大丈夫と言われても、こちらとしては不安しかないんですが。

「色々と時間がかかりますが、その間の霊的、妖的な対処はウチ等も含め、対魔師が責任を持って行いますので・・・三倉はんはいつも通り過ごしてくれれば問題ありません」

「・・・・・・了解。とりあえず大人しくしとけばいいのね?」

 天蓮華さんの説明をかいつまんで言えばそういうことになる。

「そうやけど、その間、妖の事を他の人に話したらアカンで? 話してもたら、さすがにウチ等では庇えへんし」

「・・・わかってる・・・言う気は無いよ」

「それならええけど」

みらの釘指しに苦笑しながら答える。そもそも話したところで誰も信じないだろう。

「でもさ、昨日みたいなヤツが俺の居場所を嗅ぎつけて、家に進入したりとかしないか?空飛んだり壁すり抜けたりする力を持ったやつとかさ」

「その辺はこっちも想定しています・・・ただ、内容は上司が決めてるんで三倉はんに詳しい説明が出来ませんが・・・・・・」

「その辺はお任せしますのでよろしくお願いします」

「わかりました。上にも伝えておきます」

 そう言って天蓮華さんはにっこりと笑った。

「でも・・・今回の件って、上の人に結構怒られたんじゃない?」

 世間話の感じで聞いてみたら、みらがしょんぼりとして小声で答えた

「メッチャ怒られた・・・ウチが・・・・・・」

 結城さん、それが当たり前なんですよ?

とりあえず、対処とやらは向こうが上手くやってくれると信じて次の疑問を確認することにした。

「そういえば・・・記憶を消すって言ったけど具体的にどの辺まで消すの?」

「妖と対魔師に関する内容は全てですね・・・あと、幽体離脱していたときの記憶も消すことになると思いますが・・・それが何か?」

 怪訝そうな顔で聞いてくる天蓮華さん。

「いや、コイツと会った記憶を消すのは問題あるかなと思って」

 と、みらの方を見る。俺の視線に気づいたみらがやけにそわそわし始めた。

「え、何? つかちゃん??」

「結城はんと最初に会った時、ですか・・・・・・? 一般人として出会ったのなら問題ありませんが・・・・・・」

 天蓮華さんも不思議そうな表情をしている。

「ハリセンで殴られたのは事実だけどさ。コイツが対魔師だって知る前の記憶は消さないほうが色々都合いいと思うんだ・・・あ、後みんなでスイーツ食べに行ったときのこととかもさ」

 みらと最初に会ったのは対魔師ではなく普通の人としてだった。そしてコイツにはその時コイツには色々と世話になった。

 二回目の時は色々と悩んでいた俺を心配し励ましてくれた。

 三回目はスイーツバイキングに誘ってくれた

それは対魔師としての結城みらではなく、一般人としての結城みらがしてくれたことだ。

だから、そこまでの記憶を消されてしまうのは、なんだかとても寂しく感じたのだからそう聞いたのだが・・・・・・

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 何で二人とも黙ってるんだ?

「いや~参ったな~~~???」

 しばしの沈黙の後、妙にクネクネしながら寄りかかってくる結城みら。

「あ、あ~そういうことですか・・・・・・・・・」

 天蓮華さんは何か思い当たったらしいが、顔を赤らめて両手を自分の頬に当てている。

「いや、どういうことよ!?」

 何か二人とも妙な勘違いをしているようだ。

「もしかして、さっきのアイアンクローは『手ぇ付けた』って意味なんかなー?」

「あ、そう考えると・・・深いですなぁ・・・・・・」

「あの・・・もしもし?」

 さっきまでの真剣な雰囲気はドコへ行ったのか。キャイキャイとガールズトーク? に夢中になっている。

「せやけど、あのアイアンクローって、手を開いてから、こう・・・グッと握るやん?」

「はいはい!」

「おーい、話聞いてるか!?」

「なんかさ・・・『手ぇ付けた』って言うより『捕まえた。もう離さない』って意味なんかも!?」

「・・・え? でも、それって・・・・・・気が早すぎません?」

「だから、ちょっと!」

何度、声かけても気づかない。ホント今までの流れは一体なんだったのだろうか? 

今、唯一わかるのは何か俺を話の種に妙に盛り上がっているということだけである。

 ・・・・・・アイアンクロー・・・ね・・・・・・

「・・・・・・」


 とりあえず音を立てずに2人に近づく・・・・・・そして。

 利き手である右手を開いて結城みらの頭に。

 握力の弱い左手も開いて天蓮華さんの頭に。

 それぞれ、そっと乗せる・・・・・・


「・・・・・・あ!」

「・・・・・・え?」


 俺の手が頭に乗った瞬間、全てを察した二人が俺を見た。

―――・・・・・・ゴメンナサイ

二人の視線がそう言っている。

うん。でも、もう遅い。

 やさしく微笑んだまま両方の手に力を込めて・・・二人の頭を握り締めた!

直後、二人の悲鳴が神社に響いたのだった。


 * * *


「何をやっているんだ、あいつ等は・・・・・・」

 有料パーキングに止めた車の中、無線機のイヤホンから聞こえてきた会話を確認していたが・・・なんか妙な方向に話が進んでいたようだ。

一応、必要な事は全て彼に説明したようだし、そろそろこちらも動いたほうがいいだろう。

 ―――トントン

 車のドアを軽く叩く音にドアロックを解除する。

 小柄な少女・・・部下の1人が車に乗り込みドアを閉める。それを確認してから声をかける。

「首尾は?」

「あちこち聞き込みしてきたッスけど、この近辺にいるのはほぼ間違いないみたいっス」

「そうか・・・ご苦労だった」

 車内に置いてあったスポーツドリンクを差し出す。

「ありがとございまス。・・・ところであっちはどうっスか?」

 スポーツドリンクを受け取り開封、一口含んでから部下はもう一つの状況を尋ねてきた。

「話は結構脱線したようだが、必要な事は全て伝えたようだ。そろそろ迎えに行くつもりだが・・・・・・どうした?」

 部下の視線が車内の下のほうに向いていたので声をかける。

「いや、いっつも思うんスけど・・・何かもやっとするんスよね。ソレ」

 と、私がさっきまでつけていたイヤホンの先・・・無線機を指差す。

「・・・まぁ、確かにな」

 科学が発達している現代において呪符やヒトガタといった昔ながら道具では対応しきれない場合もある。結果、機械に霊的な処置や改良を施して使用するのが当たり前になってきているのだ。

私自身も十年程前に同じ感情を抱いたが、今はどうとも思わない。

「これも時代の流れだな・・・そう思って割り切れ・・・・・・あ、昨日のスイーツバイキング経費で落ちないと連絡があったぞ」

 先ほどメールで連絡が来た内容を伝えておく。

「あ~やっぱりっスか・・・・・・」

「ま、目標の顔を確認するなら他にも方法はあったはずだからな。それにお前ら、仕事以上に楽しんでいただろ?」

「それは否定出来ないッスけど・・・・・・」

部下はまだ納得出来ないようだが、これ以上この話を掘り下げる気も無い。

「そろそろ行くぞ? シートベルトつけておけ」

「りょ、了解ッス」

 部下がシートベルトをつけたのを確認して私は車のエンジンをかけた。


 * * *


「申し訳ありません。つい、盛り上がってしまいまして・・・・・・」

 ようやく落ち着いた天蓮華さんが頭をさすりながら謝ってきた。

「いや、こっちもやりすぎとは思ったけど・・・声かけても気づかなかったからさ。流石にちょっとひどいと思うよ?」

「反省しています・・・・・・」

 俺を忘れたことに対して心底申し訳ないという感じで天蓮華さんが再び頭を下げる。

まぁ、天蓮華さんは握力が弱い左手だったので、そんなに痛くはなかったと思うが、問題は・・・・・・

「う~~~・・・・・・」

 俺の利き手でもある右手で本日2回目のアイアンクローを食らったみらだった。ダメージが深かったのか、少々放心気味である。

「・・・・・・大丈夫か?」

 少々やりすぎたかと一応声をかける。

「んなわけあらへんやろ・・・頭の骨、イガんだかと思ったわ・・・・・・」

 と、不服そうな顔をして答える結城みら。その表情は不機嫌な猫のようだ。そんな事を思ったとき。

 

ピピッ! ピピッ!

ピーッ! ピーッ!


二人のカバンから電子音が響く。どうやらメールが来たらしい。


「天蓮華・・・コレって・・・・・・?」

「そのようですなぁ・・・・・・」

 携帯を確認しながら二人がそんな事を口にした。そしてみらが俺のほうに向き直る。

「ごめんなつかちゃん・・・ウチ等そろそろ戻らんとあかんみたいやねん」

「あ、そうなんだ」

 上司とやらの呼び出しでも会ったのだろうか?

「説明するべき事は一通りお話したつもりです・・・他に気になることでもありませんか?」

天蓮華さんが荷物を纏めながら俺に聞いてくる。

「いや、大丈夫だと思う。俺がやる事は幽体離脱したら大人しく体に戻って、処置が出来る日を待つってことだよな? あと妖や対魔師の事は絶対秘密」

・・・・・・脱線の方が多かったような気もするけど、一通り必要な事は聞いたつもりだ。

「はい、それで構いません。あとの事はこちらで対応していきます。」

「で、何かあったらウチにメール頂戴。あ、でも対魔師とか妖のことをそのまま書いたらアカンで? メールってサーバーに記録残るから」

 そういえばそんな話を聞いたことがある。

「じゃあ妖とか対魔師とかをいう単語を使わないでメール送ればいいか?」

「おっけ。それでええわ。まぁ書いた所で鵜呑みにするのもおらんと思うけど、な・・・・・・」

 そこまで言うと二人は荷物を纏め終えたようだ。みらにいたっては経束扇もカバンに入れたようだ。

 そして二人は俺に向き直る。

「では、三倉はん。急ですが今日はこれで失礼します」

そういってゆっくりとおじぎする天蓮華さん。そして・・・・・・

「つかちゃんバイバーイ。」

対照的になんとも軽いノリのみら。まぁこれはコイツのいいところでもあるが・・・・・・。

「いや、なんかよくわからないけど気をつけてね」

 それに対して俺はこんなことしか言えなかった。まぁ状況がつかめないので仕方ないと言えば仕方ないのかもしれないが。

 しかし、天蓮華さんはそんな俺の発言もゆっくりと頷いて・・・・・・

「ありがとうございます。じゃあ、結城はん行きましょか?」

 と、感謝の意を表し優雅に神社を去った。

「りょーかい! つかちゃんも大人しくしときや~」

そして結城みらは最後まで騒がしいまま神社をあとにしたのである。

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