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リアルの幼馴染みがこんなに萌えないものだなんて  作者: 石原レノ
再開の果ての切なさを超えて
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エピローグは語れない

「さて!ただ今始まりました!我が高校体育系のエピローグを飾るメインイベント!名称改め『棒倒し!』」

改めてないから。それ本物の名前だから!

観客全員の熱のこもった歓声と共に、出場選手が一気にグラウンドを駆け回る。

それぞれ五箇所に置かれた各色の棒は、防御選手達によって固く守られ、多色の選手達が一気に押し寄せる。掴み合いながらも殴り合うことはなく、ここらは順調だろう。そして瀧も順調、、に

「よし。周りに敵なし。これで俺はサボりながらも参加しているように見えるわけだ!いやぁー敵が来ないから暇だよなぁ。でも敵が攻めてこないんじゃあなー」

と、言い訳を言いつつサボりではないことを強調した発言をしていた。

そしてそれがフラグ建設だった事を、俺はすぐに思い知らされる。

「おーーっと!ここで青組攻める色を変えた!」

結局最後まで過激に盛り上げてくれたアナウンサーに言われて初めて気がつく。なんと青組が俺の属している組、つまりうちの棒を狙って総攻撃を仕掛けてきていた。

「ど、どうしよう(´・ω・`;)」

「出た、瀧の顔文字フェイス」

「出たって何が?」

観客席に座る晃が唐突にそう呟いた。華恋は首をかしげながら問いかける。

「瀧って昔から何か困ったことがあったら顔文字みたいな顔するんだよなぁ。初めて見た時は何の顔か分かんなかったけど、携帯使い始めてからやっと分かって俺が命名してやった」

「へ、へぇ、、、顔文字、、、ね」

この時、俺は試合に集中していて俺の話題で華恋が引いていることなど知る由もなかった。

「ど、どうすんだよこれ(´・ω・`;)」

「そこの君!ボーッと突っ立ってないで応戦してくれ!」

焦り戸惑っていると、守備陣の1人から声がかかる。応戦しろと言われても、、、

「クッソがぁぁぁあああ!」

「ぶっ〇してやるぞゴルァぁぁぁあ!」

「覚悟しやがれえぇえぇぇえ!」

無理無理無理無理絶対無理!

「え、そんな事言われても、、、」

「はやくっ!このままじゃ攻め込まれてしまう!少しでも戦力を削ってくれ!」

不幸な事に、前衛で陣地の近くをうろついているのは俺しかいない。他の前衛組は皆攻め込んでいないという訳だ。

「、、、くそっ」

意を決して俺は1歩1歩徐々にスピードをあげながら突っ込んでいった。

俺だってやる時はやる男だ。

「うぉぉぉぉぉおおぉぉお!」

あと数メートルで敵戦力とぶつかりそうになったその時―

「あれ?」

ずっこけた。盛大に、公衆の面々で、ド派手に、華恋の目の前で←ここ大事

ここで普通にこけただけなら痛いで済むところなのだが、皆様お気づきだろうか?

只今青組が我陣に攻め込んできているのである。俺の背後には守らなければいけない棒がある訳で、青組はそれを倒すために攻めてきている。と、言うことは、、、

「ぐぇぇぇぇえええ!」

総勢2桁越えの人数に踏み越され、その痛みが俺を襲う。

一難さって、残ったものは傷と砂だらけの俺であった。後ろではやはり守備陣と青組が戦いあっているようで、怒涛の叫びやら怒号やらが聞こえていた。

「、、、、、」

俺はさっと起き上がると、なんの迷いもなく一点に集中して走り出した。

誰に気づかれることもなく走り抜け、近づいてくる【青】の棒。守備陣は3人なのに誰も攻めてこないのは周りがそれだけ今の状況で手一杯だという事を証明していた。

「敵発見!戦闘を開始する!」

ここに俺と同じメ〇ルギ〇ファンが居ます。

「立ち去れ!ここはお前1人が来ていい場所ではない。怪我をしないうちに―」

「なぁ、運命って信じるか?( •̅_•̅ )」

俺の唐突な問いかけに、青組の守備陣は首を傾げる。俺はにやけ顔を浮かべながら話を続けた。

「もし俺がここに来たことが運命だとしたら、お前達はどう思う?( -_- )」

「そんなこと、どーも思わん!なんせ貴様は赤の他人だからな!」

「へー、、、そうかい、、、( - _ - )☝︎」

そして俺はゆっくりと人差し指を突き出した手をあげる。守備陣の目線は俺の指に釘付けになり、、、俺の手は頭の高さまで挙げられると、素早く左にスライドされた。

「あっ!あんな所にUFOが!(°Д°)」

「「「えっ?」」」

一瞬、、、一瞬の隙をついて俺は素早く駆け抜けた。呆気に取られた守備陣がハットしてももう遅い。俺は既に棒を蹴り飛ばした後だった。

「なっ、、、汚いぞ!」

守備陣の1人が悔しげに言ったのをタイミング良く俺はにやけ顔を浮かべながらこう答えた。

「騙されるやつが悪い( ´罒` )」


「、、、はっ。ここは?」

「やっと目を覚ましたね。瀧」

何故か意識を失っていた俺は、華恋の膝枕、、、

「何で膝枕じゃないの?」

「何か言った?」

「いや、寝ぼけてた、、、それより何で俺ここに居るの?」

横たわっていた選手待機席には俺と華恋しか残っておらず、俺はどうしてこうなったか覚えていなかった、、、。

華恋は苦笑しながら口を開く。

「実はね、、、」

あの後、2回戦目になり、俺はいきなり青組の総攻撃にあったらしい。ありとあらゆる攻撃を一斉に受けた俺は、そのまま帰らぬ人に、、、いやいるから。

とにかく俺は青組からの逆恨みを受けて気を失ったらしい。

既に俺と華恋以外の選手は皆閉会式に出ているとのこと。辺りは夜。スポットライトの光が漏れ、薄く俺と華恋の場所を照らしていた。

「その、、、楽しかったな。色々あったけどさ」

そう言って俺は華恋の方へ顔を向けると、華恋は涙を滴らせていた。

「え、、?」

「あ、ごめん。なんか終わっちゃったら急に切なくなってきちゃって」

慌てて袖で涙を拭き取り、恥ずかしそうに顔を隠す華恋の一言で俺はすべてが終わったことに切なさを感じた。ろくでもない1日だとばかり思っていたこの日が、終わりとなれば切なく思える。人間とはそういうものだ。俺がそう決めつけているのかもしれないが、それも今までの経験があってからこそそう言える。

嫌よ嫌よも好きのうち。始まったものはいつかは終わってしまう。永遠だとか、そういうをのを心から望む人なんてそうはいない。永遠は孤独なものだし、いつかは見向きもされなくなってしまうから。本当に怖いのはそれ何だと。だから今回の体育祭は、、、

「もうこんな体育祭はやりたくねぇなぁ、、、」

そう呟いた一言も、ただ俺の妄想の中でしか言えなかった、、、。楽しいと一瞬でも思ってしまったから、、、本心は語れないのだ。


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