表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/15

第十二話 怒る

「彼女をこれ以上傷つけるな!」

第二王子オーギュットがイセリ嬢を庇うように立ち位置を動く。

ユフィエルはますます眉根をしかめた。

オーギュットの後ろで、イセリ嬢が怯えている。

サァっとユフィエルの心が冷めきった。


「・・・オーギュット。それから、イセリ嬢。私は、あなたたちを許さない」

そう言ったのは、第一王子ルドルフだった。

感情をコントロールしようと努めながらも、怒気が漏れていた。

「よくも二人で、この場に現れたものだ」

ユフィエルが聞いたことのない低い凄みのある声だった。


対抗したのはイセリ嬢の方だった。

「あ、あなたこそ! 王子様なら、暴力なんて!」

フっと、ルドルフがその言葉を鼻で笑った。

あまりに嫌な笑い方で、ユフィエルは本当にルドルフ様かと目を疑ったほどだ。


「では聞くが。勝手な振る舞いと言葉の刃でさんざん傷つけた自覚は? よくも二人で出てきたものだ。オーギュット、お前はすっかり昔の事を忘れたのか? あれだけの暴言を吐いておいて、お前は言葉による制止に耳を貸さない。あぁ、確かにカッとなったのは認めよう。ではイセリ嬢、教えてもらいたいが、あの時、オーギュットを殴る以外に、オーギュットの暴言をどうしたら止められたのだろう。私には分からない。次のために是非教えておいてもらいたい」

イセリ嬢は勢いよく何かを言おうとしたが、すぐ言葉が出てこなかったらしい。開いた口をすぐ閉じて、少し考える様子をみせた。

第二王子オーギュットの方は顔を真っ赤にした。怒りによるものだ。

「兄上。彼女への暴言の撤回を」

「どの口がそれを言う、オーギュット」


「もう良い。止めろ」

制止したのは、頭痛を抑えるような面持ちの国王陛下だった。

憮然とした表情で、皇后陛下が、そんな国王陛下の様子を見やる。


国王陛下はため息を静かに吐き、肩を落とした。

どこかうんざりしたように、命じた。

「オーギュット。お前には謹慎を命じよう」

「えっ!? なぜです、父上!?」

「頭を冷やし、謹慎の理由を考えるが良い」

傍で皇后陛下も諦めたようにため息をついた。


「マグニセル、良いだろう?」

と国王陛下が王妃の名を呼び確認する。

王妃はやるせない表情でオーギュットを見やった。

「・・・えぇ。可愛い息子ですけれど・・・仕方ありませんね」

王妃は、それからオーギュットの傍のイセリ嬢を嫌なものを見るような目で見た。そして深くため息をついた。


国王陛下がその様子に、少し憐みの入った眼差しをイセリ嬢に向けた。

「・・・あなたは、親と周囲が認めた、将来を約束した恋人の間を引き裂いたのだよ」

イセリ嬢は勇敢にも答えた。

「でもっ、それは、勝手に決められた結婚です! 結婚は、本人同士が好きあってするものだわ!」


国王陛下は頷いて、続けた。

「それは一理ある。あなたはきっと善良で疑う事を知らないのだ。けれど、私たちは、オーギュットとあなたとの結婚は認めない。・・・理由を教えてあげよう。あなたは、人を深く傷つけた。それを私たちが大変怒っているからだ」

イセリ嬢は目を丸くして驚いた。

それから、身を震わせて、キッとユフィエルを睨んだ。

「酷い! あなただけずるいわ!」


ユフィエルはイライラとした。

まさかこんな人に、婚約者を奪われたとは。オーギュット様も見る目がない。私も、見る目が無かった。

「私が、何かをしましたか?」

ユフィエルの冷たい態度にイセリ嬢が飲まれている。それでも向かう勇気は目を瞠るほどでもある。

「・・・どうして、そんなにオーギュット様を苦しめるのですっ!」

「苦しめる・・・?」

こんな人、話しても仕方がない、と思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ