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第4話〔ゆめみたせつな〕④
倒れ伏す彼女に、程なくして車体が突っ込んできた。
痛みを感じさせないでと言った彼女の願いは叶ったのである。
そうして彼女の多隔だった私の身は残ってしまった。
願いを受けた身分。果たすまでとどまり続けなければならない。
だがら叶え続けなければ、誰の為でもない自分自身が望んだ。
〝痛みを消してくれ〟と、痛みというものを世から取り払えと。
彼女の死に沿って殺れば好い。人の意など脆い、簡単だ。
しかし、半身だけでは動けない。口元が勝手に笑う。
構わないわ。だって半身である私自身。
――多隔人格者なのだから――。