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転生したが、チートは秘密?  作者: ヤマオヤジ
第1章 プロローグと少年期
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第一話:一度死んだ少年

 僕の名前は吉永翔太よしながしょうた


 今は小学校四年生だけど、どうしても忘れられない思い出話・・・大人たちはそれは「事件だ」っていうが、僕にとっては思い出話としかいいようがない。


 そう、それは僕が五歳で幼稚園の時だった。


 そのころの僕は高いところが大好きで、良く木登りをした。


 高いところが好きだなんてお前は煙かとよく言われたが、好きな物は大好きなんで、木を登るのは止められない。


 今は切られてしまったけど、僕の家の近くの公園には、とても高い木があった。


 この木は前から僕が絶対にてっぺんまで登ってやろうと思っていた木で、その木だけは登っちゃダメとは言われていたけれど、その木に登ると街中を見渡せるくらいその木は高かった。


 

 ある日、お父さんとお母さんは遠くの親せきの家に行くことになり、僕は留守番の役目だった。


 あの木に登るチャンスだ。誰が留守番なんかするもんか。


 僕はお父さんとお母さんが出かけるとすぐに、公園に走って行き、その木に登り始めた。


 その木は最初のうちは登りづらいけど、上の方にはたくさんの枝があって、途中からは登りやすいんだ。


 そして、上の方まで登ると、周囲の街全体が見渡せた。

 

 「うわあ、街のずうっと遠くまでが見渡せるよ。」


 見たことのないような景色に僕はすっかり興奮して、大興奮してしまって・・・・

 

 気がついた僕は病院の集中治療室と呼ばれるところに寝かされていた。


 結局、僕は木から落ちて、頭をひどくぶって、後になって聞いたんだけど、お父さんとお母さんが、僕が一度死んだことを聞かされ、葬式の準備までしたそうだ。

 

 ところが、お医者さんが、途中で息を吹き返したので、びっくりし、調べて見ると、奇蹟的に生き延びられる可能性が何とかあるってことで、大手術が始まったらしい。


 お母さんはもう自分も死ぬ思いだったといい、なにも怒らなかったお父さんがかえって怖かった。


 しばらく、病院で入院している時間が長かったが、ずっとこん睡状態ってやつで、意識がなく、ずっと寝てばかりいる日が続いたらしい。こういうのを植物人間と言うのだろうか。


 僕は当然、幼稚園の卒園式にも行けなかった。


 小学校に入学する日になっても、それでも僕は意識がなく、寝てばかりいた。


 お父さんとお母さんは、もうこの子はこのまま僕は小学校にも行けず、ずっと寝た切りの人生を過ごすのかななあ・・・と思っていたそうだ。


 そんな日が続いていた時のことだった。



 僕はと言うと相変わらず、こん睡状態なんだけど、不思議な夢を見ていた。


 天使みたいな羽根をはやしたお兄さんが現れて、僕にこんなことを言うんだ。


 「翔太君。君は本当は死ぬはずだったんだ。でももう少しの間、この世界で生きることができることになった。


 君を生かすためには、君の脳みそを治さなければならなかったんだけどね。人間のお医者さんたちにはちょっと無理だったんだ。

 

 君の脳みそと体の大部分は木から落ちたために大事な部分が壊れてしまったんだよ。僕たち天使が治そうとがんばっていたんだが、やっと治ったよ。でも、治すって言うより、完全に入れ替えたって言った方がいいかなって部分もかなりあった。


 それと、もうひとつ。この天使の大手術で、大人の人と同じぐらいの知恵とか知識とかが君に身についてしまったことがある。

 そのためか、君は他の子供より、頭が良くなったし、力も強くなった。ところが、他の子供たちより長生きはできないことになってしまったけどね。


 あ、そうそう。それと君には別のお兄さんの魂が、君の体に住み着くことにもなってしまった。このお兄さんは君の知恵や知識として現れたりする時がある。


 でも、このことが他のみんなに知られると、ぼくたち天使も君も困ってしまうことになるなあ。これを内緒にして欲しいんだけどなあ。


 そんなこんなで、色々あるけど、それでよければ、君はもうすぐ、学校に行けるような体に向けて調整していこうと思う。いいかい?」


 なんだかよくわからないけど、うんと言わないとこのまま病院に入れられっぱなしみたいな気がしてしまって思わず言った。


「うん」


 そう大きくうなずいた瞬間、僕は眼が覚め、すっかり治っていた。

 

 かなり遅れちゃったけど、僕は小学校に入れることになるまで体が回復した。いや、本当はそれだけじゃないんだけど・・・・


 僕が小学校に入学したのは、五月に入ってから。

 授業はもう始まっていたので、かなりがんばってみんなに追い付かなければならないよ。と廻りの大人たちは言う。


 けれど、渡された教科書をぱらぱらと見た時、不思議なことにそれは、どこかで勉強した本とそっくりだったような気がした。もちろん、まだ勉強していないことばかりだからそんな気がしただけだったのかもしれない。

 

 その時はそう思っていたんだけど、実は違っていた。


 僕はきっと、その教科書の中身を昔に一度勉強したはずだったんだ。そう言う思いが胸中に伝わった。どうしてなのかは分からない。


 はずだったなんだっておかしな言い方だけど、そうとしか言いようがない。

 なぜかって言うと、渡されたドリルは渡された日に全部できてしまったし、習っていないところも勉強した記憶がきちんとあった。


 ある夜のことだった。昔病院に入院していた時に出てきた天使が夢の中であらわれてこう言ったんだ。


「翔太君。病院にいた時に、約束したことを覚えているかい?翔太君がすごく勉強ができたりスポーツができることが有名になると、僕たちは困ってしまうことになるんだ。そして君も困ることになる。」


そうだ。これは確かに約束したことだ。天使は続けた。


 「だから、授業やテストの時には、普通の子に合わせるようにしなければならないだよね。こういうのをセーブっていうんだ。

君はこれから自分の力をセーブするようにしなければいけないよ。もちろん、だれにも見つからないようにするんだったら、その時はいいけどね。」


 ゆめから覚めたら、天使が言うことなんか聞くもんかと思った。

 

 僕は勉強もできて、スポーツ万能!クラス一の人気者だ。そうなってやる!


 でも、そう思っていたら、心の中からこんな考えが浮かんできた。


 それが何だって言うんだ。そう言うのを虚栄心きょえいしんっていうんだよ。そんなものを満たそうとしてどうする?

 能力があるのに、目立たないようにしている方がずっと難しい。な


 なんだろう。この大人の様な考えは。僕はこんなことを考えるなんて信じられない。信じられないけど、納得してしまった。


 でも、僕は難しい方を取ることにした。それに天使のいう通りにしないと、この能力がなくなってしまうかもしれないし。  

 

 それから僕は、授業の時に当てられても、適当にわからないふりをしたり、テストは満点を取らないように、体育は適当に失敗したりしなければならなかった。

 

つまり、ぼくは普通の目立たない男の子でいなければならなかった

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