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幻の島  作者: トト
3/5

~久遠の楽園~

「ねぇ、前に言ってたよね? この島は島が許した人じゃないと入れないって! 私はどうして此処に来れたの?」

「声が聞こえたんだ。ぼくを呼んだでしょう? だから跳んで行ったんだよ」

「とんで……行った?」

「うん! 跳んで(・・・)行ったんだ」


 そう言って少年は微笑んだ。

 何時もの、あの輝くような笑顔で。



  ☆     ☆     ☆     ☆     ☆



 少年の周りには何時も鳥や動物たちが集まって来る。

 彼が傍に居ると風もないのに草や花が揺れる。

 彼はこの世の全てのものと友達になれるのだと私は思った。

 私には見えない、生きとし生けるものに宿る精霊たちでさえも。


 けれど、彼の力はそれだけではなかった。

 私は彼の言葉の意味をその別れ際に知る事になる。

 彼は文字通り“跳んだ”のだ。

 私を連れて――



  挿絵(By みてみん)



 気がつくと私は少年と共に船の甲板に立っていた。

 初めて体験した瞬間移動(テレポート)だった。


 呆然としている私に……


「それじゃあ~元気でね。さよなら、お姉ちゃん!」


 そう言うや否や、少年の身体が宙に浮いた。


「お姉ちゃんが島に居てくれたこの一週間、ほんとに楽しかった」



    挿絵(By みてみん)



 そう告げて、少年の姿は掻き消すように見えなくなった。

 それは一瞬の出来事で……

 私は別れの言葉も、感謝の言葉さえも彼に伝える事は出来なかった。



  ☆     ☆     ☆     ☆     ☆



 そうして月日は流れた。


 私は少女から大人の女性へと変わっていった。


 忙しい仕事の合間をぬって、私は“あの島”を探した。

 もう一度あの少年に逢いたかった。

 命の恩人に逢って、きちんとお礼が言いたかったのだ。


 否、多分違う。

 私は疲れ果てた心を……少年の笑顔と、あの美しい楽園で癒したかったのかもしれない。


 けれど島はどんな地図にも載っていない。


 私は二度と島を訪れる事は出来なかった。


 純真な子供の心を忘れてしまった私を、あの島が受け入れてくれる事はないのかもしれないと思った。

 あの出来事自体が“夢”だったのかもしれないとも思う。


 しかし、あの“楽園”で過ごした(とき)は……


 碧い髪の輝くような少年の笑顔は……


 私の心の一番大切な場所に今も静かに眠っている――


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